【サッカーを仕事にするということ】日本のW杯優勝を信じ若きサムライを全力支援
この国にはサッカーを生業にしている人たちが大勢いる。そこだけを目指し人生を捧げてきた人たち、別の道から辿り着いた人たち、それぞれ道程は異なるが、彼らに共通するのは、サッカーに対する純粋な愛だ。
業界最前線で働く6人の方々を取材。“選手”としてではない、各々のサッカー人生をここに紹介する。
CASE スポンサー
樋口 智一 TOMOKAZU HIGUCHI
ヤマダイ食品株式会社 代表取締役会長
Q1 会社の概要は?
食品メーカーとして世界に展開
「ヤマダイ食品は業務用惣菜の冷凍食品を主に扱う食品メーカーです。関連会社のモカ・フード・ジャパンは食材の輸出入を行う商社、茨城もぎたてファクトリーはJA(農業協同組合)との合弁会社で、畑から製造まで行い、その販売会社である茨城ハッピー食品があります。この食品の加工・流通を総合的に行う6次産業を九州、大分で展開し、海外ではアメリカ、フランス、タイの11カ所、国内外で事業を展開しています」
Q2 サッカーとの関わりは?
レジェンドとの偶然の出会いから
「サッカー界とのご縁は2008年、きっかけは通っていた美容室でのことです。僕は昔から三浦知良選手の大ファンで、ある日シャンプーしてもらっている時に、『樋口さん、サッカー好きですよね。スポンサーはやらないんですか?』と聞かれ、『カズさんがいる横浜FCなら興味がある』って答えたんです。そうしたら隣で『そうなんだ』という声が聞こえて…。シャンプーが終わって顔を上げたら、声の主は隣でシャンプーされていたカズさんご本人だったんですよ! 嘘みたいなエピソードですよね(笑)? それがきっかけで横浜FCさんのスポンサー契約をさせていただきました。それから11年、今も現役を続けているカズさんは本当にすごいです」
Q3 どうして欧州クラブに広告?
世界に挑戦する若者を応援したい
「昨年、新工場建設のプレスリリースを発表した際に、友人からポルトガルリーグ1部のポルティモネンセの話を受けました。目的は世界へ挑戦する若手選手を応援するというもので、それならぜひ貢献したいと。その友人というのが、かつて横浜FCの運営部長を務め、今は中島翔哉選手(現FCポルト)のマネージメント会社コネクトの会長を務める百瀬俊介さんです。その後トントン拍子で話が進み、オーナーのコンスタンチン・テオさんらが来日し、スポンサー契約の締結を行いました」
Q4 スポンサードによる反響は?
1つのゴールから連鎖的に案件が舞い込む
「昨年12月のポルティモネンセのホームゲームをマッチデーとして提供したのですが、その日に中島選手がスーパーゴールを決めたんです。これが朝から晩までニュースで取り上げられ、ユニフォーム背面の『ヤマダイ食品』のロゴが日本中で放送されました。このゴールは欧州でもピックアップされ、これがきっかけで、堂安律選手(現PSV)のいるFCフローニンゲンさんからもお話しをいただくことになりました(※後に関連会社の茨城ハッピー食品がスポンサー契約)。さらにアメリカからもオファーをいただき、来年には大きな発表ができると思います。だから、今も中島選手はヤマダイ食品が食べ放題ですよ(笑)。1つのゴールでここまで世界が広がる。改めてサッカー、スポーツの持つ力を実感した次第です」
Q5 なぜ世界で戦う若者を応援?
会社の利益は社会へ還元
「前述の通り、欧州サッカークラブとのスポンサー契約はマーケティングという意味で有効かもしれません。しかし、それは目的ではないんです。僕は28歳から会社を継ぎ、今でこそ右肩上がりで業績は伸びていますが、それは僕の力ではありません。実は08年に一度会社が傾き、諦めたことがあるんです。会社を手放す覚悟すらしましたが、リーマンショックによる緊急保証制度で、運よく会社を立て直すことができました。でも、それは運が良かっただけ。その時分かったのは、自分は社会から生かされているということです。それから、会社の利益は社会還元すると決めています。それに僕は日本のW杯優勝を本気で信じていますからね。だから世界に挑戦する若者を全力で応援したいんです」
Q7 どんな社会還元を?
基金を設立し奨学金を給付
「公益財団法人モカ育志奨学基金といって、経済的な理由により修学が困難な学生に奨学金の給付を行っています。僕はサッカーの盛んな四日市市出身ですが、地元のサッカー少年団に入ることを躊躇するくらい、経済的に恵まれた家ではありませんでした。だから、少しでも多くの若者にチャンスを与えたい。今の目標は奨学金の対象を1万人にすること。そのためにはもっともっと会社を大きくしないといけないのですが、それがモチベーションとなっています」
Q8 高校生に伝えたいことは?
学生時代の友だちは人生の財産
「社会に出てから利害関係のない友だちをつくるのは難しいことです。学生時代に汗を流したり、何でも笑い話にできる友だちって、人生の財産なんです。だからこそ、今を全力で楽しんでほしいですね。人生は長いです。健康、安全を第一にして過ごしましょう!」
思い出の1ページ
オランダからサプライズメッセージ
「ヤマダイ食品の入社式で、新入社員へのサプライズとしてフローニンゲンの堂安律選手(当時)、板倉滉選手がビデオメッセージを送ってくれました。20秒ほどの映像ですが、そこはプロ魂を発揮して13回も撮り直してくれたそうです(笑)。嬉しかったですね」
サッカを仕事にするということ
- 関口和義さん(横浜ゴム株式会社)
「チェルシー」とのタッグで世界のマーケットに挑む! - 石田 敬さん(アイリスオーヤマ株式会社)
施設面から日本サッカーの基盤を支える - 菊地優斗さん(株式会社アカツキ)
クラブの鍵を握るIT界のホープ - 梶山由珠さん(いわてグルージャ盛岡)
好きなことを仕事に!単身東北の地で奮闘中 - 前波裕一さん(横浜F・マリノス スクールコーチ)
毎年100人以上の夢を育む スクールコーチの誇り - 樋口智一さん(ヤマダイ食品株式会社)
日本のW杯優勝を信じ若きサムライを全力支援