知っておきたい!サッカーで求められる走力とは?
サッカーにとって欠かせない「走る」という運動。実は、サッカーと一般的な走りには違いがあるって、知っていますか? サッカー選手に必要な走力について、アビスパ福岡でフィジカルコーチを務める野田直司さんにうかがいました。
サッカーで必要なのは「速く走る力」だけではない!「止まる力」も欠かせない
走力というと、速く走ることがフォーカスされがちですが、サッカーでは「速く走ること」に加え「止まる力」も重要です。例えば、攻撃で裏に抜けようとスピードを上げて走っているとき急に止まることができると、スペースが生まれてパスを受けやすくなったり、最大限の速度で走っていながら相手の目の前で止まれば、圧力を与えることになるのです。いつでも速く走り出せて、止まれる力を身につけることで、守備でも攻撃においてもプレーの選択肢が増えていくのです。
サッカーは80%以上が曲線の走り
サッカーと陸上競技の走り方には、共通点はあるものの少し違いがあります。陸上競技の走りは基本的に「真っ直ぐ」なのに対し、サッカーで直線の走りは2割程度、多くは「曲線」の走りです。曲線や斜め、ときには後退して走る中で、目線や身体はボールに向けながらスピードを上げて走り、止まり、再び走り出さなければいけないのです。さらに、ゴールを目指しながら状況の判断や認知なども行わなければいけないサッカーの走りは、そもそも簡単ではないと言えるでしょう。
走力を身につけるために!「サッカーの走り」4つのPOINT
サッカーの走りの中で、意識したいのは下記の4つ。
サッカーで速いスピードで走る距離のほとんどは30m以内。短い距離だからこそ、素早く出て、できるだけ早く最高速度に到達することが重要です。すぐに加速して素早く止まり、止めた瞬間に少ない歩幅で向きを変えてまた走り出す、それを何度も繰り返すことができる走力が身につくと、プレーも変わっていくのです。
走るときに「太ももを上げて!」の声かけはNG!
走るトレーニングをしているとき、子どもに「足を上げて」「腕を振って」など動作の動きを指摘すると、どうしてもそれに意識が引っ張られてしまいます。とくに「太ももを上げて!」と声をかけると、腰も一緒に曲がってしまい、重心が後ろにかかってしまうことに。ジュニア期は、自然と走る動作につながるようなトレーニングを行うことが大事。短い距離をリズムよく走る「直線マーカー走」や「後ろ回しの縄跳び」などは、太ももが自然と上がるトレーニングです。また、「足をよく踏み込んで」「ぐっと力を押して」といった声かけもNG。走るときは、足を押すのではなく、前から力を捉える動作が重要になるからです。
曲線で加速して走るために「曲線マーカー走」を取り入れよう
20~30mの距離を加速して走るには、すぐに足を速く動かす(回転させる)ことが大切。けれど、サッカーで多い曲線や目線だけをボールに向けて走るときは、どうしても片方の足の動きが遅くなりがちに。たとえば右回りや右を向いた状態で走る際、右足には自然と力が入るため、地面をしっかり捉え足は上がりやすくなります。一方、左足は右足に比べて力が入らない分、足が前に出にくくなってしまうのです。地面に対する力を捉えて前へと走る「曲線マーカー走」などのトレーニングを繰り返し行うと、右回り・左回りの状況で足をすぐ前に出す感覚が身についていき、曲線でも加速して走れるようになっていくでしょう。
うかがいRUNのとき時速がアップ!サッカーの走りはスピードが変化する
うかがいRUN※とは、試合中「あのスペース空いてるな」など、周囲をうかがいながら走ること。このとき、スピードは徐々に上がっていきます。さらに「いける!」と思ったらより速くなり、「違った…」と思えば遅くなるものです。サッカーでは、いつでもスピードを変化させる走りも大事。リズムに合わせて跳ぶ縄跳びなどのトレーニングを続けると、いつでもスピードを上げたり、下げたりできる走りが身についていくでしょう。
※野田氏による造語
走力はトレーニングで伸びていく!プロ選手も走り方を改善して走力が向上
「親が足が遅いから…」「足の速さは生まれ持ったもの」などと思っていませんか? 足の速さは技術的なことが要因するため、走るトレーニングを行い、走り方を変えていくことで後天的に伸びていきます。また、走り方に骨格は影響するものの、たとえX 脚やO脚であっても、その骨格をいかした効率のよい走り方の感覚をつかめば走力はアップしていくのです。サッカー日本代表の三笘薫選手や久保建英選手、浅野拓磨選手などは、トレーニングにより走り方が改善したことで、走力が伸びたことがわかっています。
column
01.トップチームでは走力のある選手のほうが起用されやすい!
現代のトップチームのサッカーでは、技術とフィジカル能力※を兼ね備えていることが基本です。足が速い選手から順に起用されるわけではありませんが、走力のある選手のほうがプレーの選択肢が増えるので、優位性は高いと言えるでしょう。
※持久力、筋力、スピード、柔軟性などの身体的な能力全般
02.サッカーは加速と減速を繰り返すから筋肉への負担が大きい
サッカーの走りでは、加速と減速を繰り返します。そのため、足の筋肉への負担が大きく、太ももの前側が張って痛いというサッカージュニアも多いのではないでしょうか。今後、強度が上がるサッカーをするようになると、より止まる動作が求められ、筋肉負担も増すように。今から、ストレッチを習慣にしておくことが大事です。