【サッカーを仕事にするということ】「チェルシー」とのタッグで世界のマーケットに挑む!
この国にはサッカーを生業にしている人たちが大勢いる。そこだけを目指し人生を捧げてきた人たち、別の道から辿り着いた人たち、それぞれ道程は異なるが、彼らに共通するのは、サッカーに対する純粋な愛だ。
業界最前線で働く6人の方々を取材。“選手”としてではない、各々のサッカー人生をここに紹介する。
CASE スポンサー
関口 和義 KAZUYOSHI SEKIGUCHI
横浜ゴム株式会社 タイヤ海外営業本部
チェルシータスク リーダー
Q1 現在の業務内容は?
チェルシーのアクティベーション
「2015年にチェルシーとのパートナーシップ契約を締結し、胸スポンサーとなって5年目になります。我々はタイヤメーカーですから、『YOKOHAMA TYRES』というブランドが世界中で認知され、タイヤの販売につながるように活動しています。アクティベーション(スポンサーの権利を活用したマーケティング活動)の主な例としては、販売店などのお客様をチェルシーの試合にご招待することがあります。本拠地スタンフォードブリッジには主要なスポンサーに用意された“ミレニアムスイート”という部屋があり、食事を取った後で試合観戦をするのですが、時には商談も行います。年間でプレミアリーグ19戦、さらにチャンピオンズリーグ、カップ戦を含めると30戦程ホームゲームがありますから、月に最低1回はロンドンに行っています。『タダで試合が見れていいですね』と聞かれますが、もちろんお仕事ですから、楽しいことばかりではありません(笑)」
Q2 なぜサッカーを選んだ?
世界で一番ファンが多いスポーツ
「ビジネスの開拓には“認知度”が必要になります。聞いたことのないブランドはお店に置いてもらうことすらできません。それまで私は欧州に計7年間駐在し、フランスのル・マン24時間レースやFIA 世界ツーリングカー選手権などにも関わってきましたが、海外での弊社の認知度の低さを肌で感じていました。サッカーは世界で一番ファンが多いスポーツです。各国の販売会社の社長たちとの会話でも、モータースポーツだけで響かない層にアピールするには、サッカーというメジャースポーツが有効であると。そこでテレビ放映地域、視聴者が一番多いプレミアリーグのビッグクラブの胸スポンサーは非常に魅力的でした。私は(チェルシーとの)契約に直接関わってはいないのですが、予算会議などで常に提案をしていたので、地道な意見の吸い上げが契約成立につながったのだと…信じています(笑)」
Q3 サッカーの魅力とは?
万人が楽しめるから愛される
「あまりルールを知らない人でもわかる、楽しめるのがサッカーの魅力であり、世界中で愛される所以なのではないでしょうか。ただ、モータースポーツであればレーシングタイヤのサプライヤーとして我々もレースにも関われますが、サッカーでは関与しないところで勝敗が決まってしまいます。契約初年度の2015-2016シーズンでは、前年優勝したにも関わらず10位に転落。ジョゼ・モウリーニョ監督は更迭され、『ヨコハマタイヤの祟り』とも揶揄されました(苦笑)。今となっては思い出話ですが、当時は胃がキリキリする思いでしたよ(笑)。しかし、翌年には再びチェルシーがリーグ優勝し、我々のブランドロゴが世界中のあらゆるメディアに露出しました。それは想定していたマーケティング規模を遥かに上回るもので、その広告効果は計り知れません。調査結果でも認知度は契約から年々伸びていて、改めてチェルシーというクラブの影響力を実感しています」
Q4 日本での施策は?
レジェンドとイベント開催
「まずは海外でブランドを知ってもらうことが目的でしたが、その認知をタイヤの販売につなげる施策として、チェルシーのレジェンド選手をアンバサダーとしても招聘、各国でセールスキャンペーンを行いました。日本でも2017年に汐留のコンコースでフランク・ランパード氏(現監督)、2018年に六本木ヒルズでディディエ・ドログバ氏を招いたファン向けのイベントを行ったのですが、平日の昼間にも関わらず1,000人以上が集まったんです。チェルシーとの契約当初は海外がメインでしたが、『これは日本でもいけるぞ』という風潮が社内で流れ始めました。比較的若い層の将来のポテンシャルカスタマーに『カッコいい』、『クール』といった良い影響を与えられたかと思います」
Q5 チーム来日について?
長年の想いが実り、誇らしかった
「これまで何度も試みた日本での試合が、契約最終年の今年ついに実現しました。7月19日に川崎フロンターレ(0-1)、23日にFCバルセロナ(2-1)と注目度の高いチームとの対戦で、BtoBの1,000人以上のお客様をご招待し、みなさんに喜んでいただきました。ツイッター、フェイスブックといったSNSでも今回の試合からポジティブな成果を得られましたし、消費者のみなさまにも良い影響を与えられたかと思います。誇らしい思いでしたね」
Q6 高校生に伝えたいことは?
日本語以外の言語をマスターしよう
「私は日本の高校を卒業した後、アメリカの大学、大学院で学び、そこで培った英語でのコミュニケーション能力が現在の仕事に役立っています。何も英語だけにこだわる必要はなく、『日本語以外の言語をマスターすると色んな可能性が広がりますよ』とお伝えしたいですね。相手の文化を“理解”してコミュニケーションすることは、すごく重要なことです。サッカーが好きであれば、なおさら海外にも目を向けて頑張ってほしいと思います」
思い出の1ページ
英国に飛び、コンテ監督に直談判!
「2年前、弊社の100周年記念にチェルシーが来日する話が上層部を通して進んでいました。しかし当時のアントニオ・コンテ監督がトレーニング施設にこだわりがあり『行けない』と。どうしても来日を実現したく、コブハムの練習場まで直談判しに行ったんです。熱く交渉をした結果、実現…とはならなかったですが、今年のチェルシー来日につながるエピソードとして、今はいい思い出になっています」
サッカを仕事にするということ
- 関口和義さん(横浜ゴム株式会社)
「チェルシー」とのタッグで世界のマーケットに挑む! - 石田 敬さん(アイリスオーヤマ株式会社)
施設面から日本サッカーの基盤を支える - 菊地優斗さん(株式会社アカツキ)
クラブの鍵を握るIT界のホープ - 梶山由珠さん(いわてグルージャ盛岡)
好きなことを仕事に!単身東北の地で奮闘中 - 前波裕一さん(横浜F・マリノス)
毎年100人以上の夢を育む スクールコーチの誇り - 樋口智一さん(ヤマダイ食品株式会社)
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