【サッカーを仕事にするということ】クラブの鍵を握るIT界のホープ
この国にはサッカーを生業にしている人たちが大勢いる。そこだけを目指し人生を捧げてきた人たち、別の道から辿り着いた人たち、それぞれ道程は異なるが、彼らに共通するのは、サッカーに対する純粋な愛だ。
業界最前線で働く6人の方々を取材。“選手”としてではない、各々のサッカー人生をここに紹介する。
CASE スポンサー/クラブスタッフ
菊地 優斗 YUTO KIKUCHI
株式会社アカツキ
東京ヴェルディ株式会社(出向)ファンデベロップメント部
Q1 サッカーとの関わりは?
ヴェルディを見て育った
「日韓W杯が開催された前年に東京ヴェルディが地元の稲城市に移転してきました。当時小4だった僕はエスコートキッズとしてホームゲームに参加し、そこから大ファンになりました。06年のドイツW杯は父親に現地に連れて行ってもらい、君が代を聞いた時は鳥肌が立ったのを覚えています。日本人であることに誇りを感じ、将来何らかの形でサッカーに関わる仕事がしたいと思っていました。神奈川の進学校・聖光学院で高2までサッカーを続け、漠然と将来サッカーに関わるには、どういった進路を選択すべきかを考えていましたが、至った結論は『学力は邪魔にならない』ということでした。Jリーグチェアマン村井満さんもビジネス畑の出身ですし、社会を経験してからでもサッカーに関われる道はある。ならば大学受験に真剣に向き合おうと思い、大学に進学しました」
Q2 現職への経緯は?
新卒でIT大手に就職しアカツキに転職
「東京大学を卒業後、どんな形でサッカーに関わるとしても、最大の成長産業の一つであるインターネット関連事業の領域は、経験しておいて損がないと思い、IT大手のDeNAという会社に就職しました。横浜DeNAベイスターズなどスポーツにも関わる企業ですが、新卒では社内スタートアップのような部署に配属され、2年目には本社のスポーツマーケティングの部署に異動となり、念願のスポーツビジネスに触れることができました。そこで、スポーツ関連の新規事業を企画している際に、自分にはイチからビジネスを創り上げる力がないことを痛感しました。そんな折にゲーム事業部への異動があり、サッカーに関わる道を逆算すると、どんどん離れていってしまう気がしたんです。そこで現職のアカツキという会社に出会い、そのカルチャーと将来のビジョンに共感し、転職することになりました」
Q3 どうやってヴェルディに?
役員に企画書を提出し猛アピール
「転職当時、アカツキはリアルな感動体験を提供するサービス『ライブエクスペリエンス』事業の立ち上げ時期で、僕はアウトドア・レジャーの予約サービスアプリ「SOTOASOBI(そとあそび)」のWEBディレクターやPMなど責任のある役割を任せてもらっていました。そして2018年、梅本大介さん(執行役員・スポーツ事業担当)がヴェルディへの経営参画の交渉を進めていることを知り、直接『自分に手伝えることがあったら!』と想いをぶつけました。その場では『ファン感覚だとヴェルディに失礼になる』と断られましたが、僕を奮起させる意味合いもあったと思います。ずっとため込んでいたアイデアを洗いざらい整理して、ヴェルディでやりたいことを企画書としてまとめ上げました。梅本さんに想いが通じたのか、結果ヴェルディへの出向が認められるのですが、それはSOTOASOBIを離れることになります。ありがたくも責任ある立場でやらせてもらっていたので、引継ぎの期間、平日はアカツキでの業務に終始し、ヴェルディに関することはすべて週末に行うようにしました。一番自分を成長させてくれたプロジェクトだし、思い入れもあったので、中途半端にしたくなかったですからね」
Q4 ヴェルディ参画の内容は?
経営も含めたコーポレートパートナー
「アカツキは昨年12月よりヴェルディのコーポレートパートナーとして、スポンサーとしてだけでなく、クラブの経営、運営、事業に参画させていただいてます。その中の『人材支援』の一環として、僕がファンデベロップメント部に出向させてもらっています。ヴェルディは30歳前後の方が多く、一人ひとりの裁量もあり、組織としてチャレンジできる領域がたくさんある。それはポジティブな意味での驚きでした」
Q5 クラブでのビジョンは?
UX向上とリピーター獲得に注力
「スタジアムに『また来たい』思わせるUX(ユーザーエクスペリエンス)を構築すること、そしてリピートするきっかけを与えること、この二軸に注力してやっています。サッカーにおける感動体験とは、感情移入に大きく左右されますから、試合前にヴェルディを知ってもらうことが大事です。サポーターの心に響くムービーを流し、応援ハリセンを提供し、応援歌をビジョンに表示する。5月25日、ホームゲームの『アカツキDAY』ではこれらの施策を実施し、大きな反響を得ることができました。少しずつでもサポーター、関係者の方々と寄り添えている実感があるし、大きな使命感を持って臨んでいます」
Q6 高校生に伝えたいことは?
ぜひスタジアムに足を運んで!
「部活生にはもっとスタジアムに足を運んでもらいたいです。実はDOスポーツとSEEスポーツは分断されていて、高校生は意外にも試合を観に行かないんです。スタジアムで見ることの魅力は若いうちに経験してほしいですね。部活の友だちを誘って、ぜひヴェルディの試合を観に来てください!」
思い出の1ページ
5.25アカツキDAYで予想を超える反響!
「5月のアカツキDAYでは、『ヴェルディがある日常』というコンセプトムービーを試合前にお披露目し、座席に用意された緑色のゴミ袋で、味スタをヴェルディカラーで染め上げることができました。その景色は壮観で、みなさんにも没入感を感じてもらえたと思います。僕のツイッターにも、サポーターの方がたくさんいいねをしてくれて、すごく嬉しかったですね」
サッカを仕事にするということ
- 関口和義さん(横浜ゴム株式会社)
「チェルシー」とのタッグで世界のマーケットに挑む! - 石田 敬さん(アイリスオーヤマ株式会社)
施設面から日本サッカーの基盤を支える - 菊地優斗さん(株式会社アカツキ)
クラブの鍵を握るIT界のホープ - 梶山由珠さん(いわてグルージャ盛岡)
好きなことを仕事に!単身東北の地で奮闘中 - 前波裕一さん(横浜F・マリノス)
毎年100人以上の夢を育む スクールコーチの誇り - 樋口智一さん(ヤマダイ食品株式会社)
日本のW杯優勝を信じ若きサムライを全力支援