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【「J」に迫る強豪街クラブの中学育成論】FC多摩ジュニアユース・平林清志監督(第4回)

セレクションで“光る選手”は、〇〇が強い選手!?
中学、そして高校進路ですべきこと

中学年代は成長過程において、非常に繊細で多感な時期と言われています。長年、この世代の成長を見守ってきた指導者たちは、どのように選手にアプローチし、どのような育成論を持って接してきたのでしょうか?

今回お話しを伺ったのは、東京都を代表する街クラブの強豪「FC多摩ジュニアユース」の平林清志監督です。昨年度の高校サッカー選手権で準優勝した流通経済大柏高校で注目を集め、鹿島アントラーズに入団したDF関川郁万選手、今年4月の第57回デュッセルドルフ国際ユース大会で、日本高校選抜としてストライカー賞に選出されたFW宮崎純真選手(山梨学院大学高校卒)など、有望選手を次々と高校サッカー界に輩出してきた中学年代の育成スペシャリストです。今年は関東リーグに名を連ね、街クラブにして、Jリーグクラブのアカデミーに匹敵する強さにまでクラブを育て上げました。

最終回となる今回は、秋から本格化するセレクションや、その後の高校サッカー進路、中学サッカーにおける親のサポートについてお聞きしました。

進路は小学校5年の終わりから取り組むのが理想

夏から秋にかけてクラブチームのセレクションが行われるなど「中学サッカー進路」のシーズンがやってきます。平林監督はいつ頃から中学サッカー進路について意識すべきだと思いますか?

理想は小学5年生の終わりくらいから意識した方がいいのではないでしょうか。ただ、6年生にもなると、少年団でも大会が沢山あり、それどころではないのが実情だと思います。現実的には大会が落ち着いて、小6の夏前くらいから考えるのではないでしょうか?」

監督が考える中学年代のサッカーの部活動とクラブチームの違いは?

「一般的にクラブチームの方がレベルが高いように言われていますが、今は中体連の部活動のレベルも非常に上がってきています。中学年代を全体で見ると、部活動もクラブチームも正直なところレベルの差はないんだと思います。例えば神奈川県の中体連選抜チームと試合をする機会がありますが、『この子はすごい!』っていう選手がかなりいますよ。熱心な指導者がいらっしゃる部活動には、やっぱりいい選手が集まります。ジュニアユースのクラブチームに行かなくてもいいや、と思える部活動のチームは沢山あるんですよ」

クラブチームの特徴を強いて挙げるとすれば?

指導者がずっと固定されていることだと思います。チームによっては各学年にそれぞれコーチがいて、選手全員に目の行き届くような中で指導していけるという点では、中学校の部活よりは少しはプラスなのかと思いますけどね」

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セレクションで見るのは「速い、上手い」ではない?

FC多摩のセレクションには、毎年多数の選手が集まると思います。そのなかで平林監督が特に見ているところは?

「通常、セレクションでは『上手い、速い』といった点が指導者の判断基準としてわかりやすい要素かと思います。ただ、僕が小学生から中学生になるうえで大事になってくると思う要素は、『ボール際』のところです。この年代で、体をぶつけられる選手、避けない選手って意外と少ないんですよ。ですから、球際のところで自分からボールを奪いに行ける選手、あるいは(ボールを)奪われないようにするために、身体が小さくても自らぶつけに行ける子には目が行きますね。そういったことができる選手は、行く行くは球際で自分のものにできる、セカンドボールが拾える選手になるケースが多いんです。セレクションでたくさんボールを触っている子は、何かを持っているんですよ」

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平林監督がセレクションで重要視するのが「球際での攻防」。身体をぶつけてボールを奪う、奪われない“強い気持ち”を持っている選手は、後にセカンドボールを拾える選手になるという。

技術の基礎から学年を追って身に着けさせる

テクニックありきじゃないということでしょうか?

「技術というものは、正直、いつになっても、何歳になっても学ぼうと思った時点からできるようになるんです。小学校高学年の段階では、上手い子、速い子は特に目立ちますが、それよりも、“ぶつかり合いを怖がらない”とか、根本的な部分を重要視するようにしています。『そんなにサッカーは上手くないんだけど、意外にもこの子はボールを触れているな』っていう子は、ボール際で自ら行ける選手なんです。そういう子はセレクションでも光るし、やっぱり惹かれますよね」

セレクション前には練習会も行っているようですね。

「練習会でも見るようにしていますよ。『この子はアピールしてるな、この子はボールに触る回数が多いな』っていうのは分かりますし。今のサッカーは中学年代でもどんどんコンパクトになってきていますから、そういう賢い子は、チームにとっても貴重ですから」

技術的な部分は入ってからでも間に合うと?

「ウチでは上手い子もそうでない子も、中1では基礎的なこと全部やるようにしています。パス、トラップ、ドリブルの『蹴って、止めて、運ぶ』は全部やり直すようにしています。中2になってから『グループ単位』でボールを回すように、順序を追ってやることを増やしていき、中3で『守備』を見直し、クラブユース選手権の全国大会へ行くためにどうやっていくのかを詰めていきます」

強豪クラブでありながら、全員の基礎を徹底させると?

「低学年で細かいところをたくさんやっておかないと、中3のときにはもっとスピードが上がってきます。そうなった時に、一定の基礎技術がない子は結局バタついて終わってしまいます。1、2年の時は嫌でもそこは我慢してやらないとだめかな」

学年の飛び級はありますか?

「中1(U-13)から中3(U-15)への飛び級はまずないですけど、中2(U-14)でできる子は、なるべく上のチームに上げるようにしています。過去、関東大会で優勝した代は2年生の10人以上が上がりました。例え個人技が優れていても、グループ単位でのプレーができていない子は2年のチームでやった方がいいですね。うちは学年ごとに担当コーチを置いているので、そこはコミュニケーションを重ねながらやっています」

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ご両親は食事面でのサポートを第一に

中学年代の親のサポートで一番大事なのは何だと思いますか?

一番は食事でしょうか。食事が疎かになると、骨格など体格面の成長の問題もありますし、いろんな意味でバランス悪くなり、ケガもしやすくなります」

生活態度などの面はいかがでしょうか?

「この年代は反抗期になってくるので親御さんも大変だと思います。ウチのチームであれば、家での態度がどうだとか、学校での態度がどうだっていうの僕から何でも言いますよ。学校の成績表も、コメント欄で担任の先生が書いていることも、ちゃんと目を通すようにしています。例えサッカーが上手くいっていても、1とかを取っているようであれば、生活面で問題あるんじゃないかと相談します」

定期的に面談を行っている?

「合宿がいいタイミングですね。中1、中2のときは、学校の生活態度がどうなっているかが一番大事ですから」

クラブチームは長期の強化合宿を多く行う印象があります。

「ウチでは練習合宿のみですね。試合を行うために遠征合宿をするようなことはまずありません。練習試合はうちに来てもらっています。お金がかからないようにね(笑)」

高校年代の進学に関してはいかがでしょうか?

「各々と面談をして何校かを選んで練習参加するように薦めています。やはり市外から来ている子たちは意識が高いですよ。中には2年生の段階から声がかかる子もいますが、そのことは子どもには一切言いません。練習をちゃんとやっていない子は推薦を出しませんし、変な勘違いをされては困りますからね。総合的に判断した上で、3年生に上がるタイミングで個々に面談をしていくようにしています。わざわざウチを選んで遠方から来てくれている子もいるわけですから、彼らが入団時から思い描いているような強豪校を選択できるよう、僕らは最大限のサポートをできるよう指導にあたっています」

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『中学サッカー進路ナビ』

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定価:本体1,200円+税
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中学クラブチームの皆さまへご連絡お待ちしています!

『中学サッカー進路ナビ』は、2018年春に実施したアンケート、および各チームへの取材をもとに、2018年8月を締切とし作成されたものです。そのため制作期間中に取材・アンケートが適わず、本書にて紹介しきれなかったクラブチームもあります。サカママ編集部では、シリーズでの刊行を目指し、継続的にクラブチームの皆さまの情報を受け付けております。同書をご覧いただき、掲載を希望されるチームの方々は、お気軽に当編集部までお問い合わせください。

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