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指導者の言霊「中務雅之 東海大学付属大阪仰星高等学校サッカー部監督」

指導者の言霊「中務雅之 東海大学付属大阪仰星高等学校サッカー部監督」

プレイヤーズファーストをベースに規律を大切にしながら個を成長させる

サッカーを指導するうえでのベースは「プレイヤーズファースト」。判断はすべて生徒に委ねています。自由と判断が委ねられている中で、生徒が正しい判断を選択できるようにするためには、チャレンジできる環境を作ってあげることが大事だと思っています。なぜなら、行動することによって失敗し、失敗が後に成功へと近づいていくからです。

日々指導する中でのこと。生徒たちが自ら課題を発見し、解決できた時に大きなものを得たと実感したことがありました。その取り組み方は、これまでとは全く違いましたし、成功した喜びも他から助けてもらった時よりも間違いなく大きかったのだと思います。それ以降、私はファシリテーター的な立場にいながら、生徒らが何かに気づいていける環境を提供し、自分たちで確たるものにしていくといった指導の流れをとるようになったと思います。

指導コンセプトの一つでもあるのが「世界基準」。海外サッカーやワールドクラスの基準を色々な情報から取捨選択し、トレーニングなどで指導しています。また、身だしなみや立ち居振る舞いについて話すことも。例えばバイエルン・ミュンヘン(ドイツのサッカーチーム)では、長髪の選手は獲得していないといったことを伝えながら、世界のトップクラスのチームでも組織を守るためのベースがしっかりしているということを話しています。

個を伸ばすために、サッカーの技術以外で重要だと思っているのが規律です。規律を組織として徹底していないと、高校年代だけでなく、その先でも周囲に適用できなくなってしまうことがあるからです。海外では90分の試合の中で、個が強調されながらも、プレーモデルの中に細かな規律が数多く見受けられます。ですので、フィールド内での規律も生徒たちには伝えています。

道徳面でのコンディションを調整してあげることが重要

ジュニア年代のベースは、サッカーを楽しむこと。楽しむという感覚と、ストリートサッカーのようにボール1つあればサッカーの楽しみ方は作り出せるということも指導者が伝えるべきだと思います。サッカーは8人ないし11人が力を合わせて、困難がある中でいかに安定したものを生み出し、最終的には最高の結果を生み出していかなければいけません。そのために指導者は子どもたちを1人の人間として「関心を持つ・気遣う・信頼して愛する」ことが重要だと思います。私自身、学生時代に指導者から関心を持たれ、すごくやる気に満ちたのを今でも覚えています。1つ1つの積み重ねが確たる信用を築いていくと思いますので、日頃から子どもたちの変化に注視し、アンテナを張ることが大事なのではないでしょうか。

子どもたちにサッカーを通して学んでほしいのは、「人と時間を共にすることの大切さ」です。それによって頭と心が動き、人間的な成長にもつながるからです。サッカーはチームスポーツなので、自分だけでなく、組織として上手くいく時、そうでない場合があります。そういう変化の中で、柔軟に適用できる人間力も身に付けてほしいと思います。

親御さんは、食事や早寝早起きなど子どものライフサイクルを構築してあげることが大切です。また今の時代、とくに大事なのは、道徳面でのコンディションを調整してあげること。SNS も含め情報が溢れている世の中だからこそ、その取捨選択が上手くできない子は人間形成をしていく上で、不安定になる可能性があるからです。他者とより良く生きていくためにも、道徳における判断基準を子どもたちに伝えてあげてほしいと思います。

「無知の知」――私が信条としているソクラテスの言葉です。生徒には「『無知の知』の強さ」と伝えています。自分が無知だと知っていることが学びにつながり、吸収の仕方、1歩の踏み出し方や人との接し方も変わってくるからです。人生をより良くしていくためにも、無知の知であることを自覚していることが大事だと思います。