今さら聞けない!?サッカールール「審判員のシグナル(主審編)」
1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は「審判員のシグナル」について。試合中に審判員は手や笛・旗を用いて様々な合図を送っています。今回は、後編として主審のシグナルについてまとめました。
笛とジェスチャーで試合をコントロール
審判員のシグナルについて、前回は、副審の旗を主に取り上げました。今回は、主審のシグナルについて触れたいと思います。
ファウルがあった時やプレーを再開する時、主審は笛や手、腕を使って選手や審判員にシグナルを送り、ゲームをコントロールしています。それぞれどんな場面で、どんな風にシグナルが示されているのかを見ていきましょう。
主審が笛を吹くのはどんな時?
まずは、笛によるシグナルが示される場面をまとめてみます。次の4つの場面では、主審は笛を吹くことになっています。
❶試合の前半、後半(延長戦含む)の開始時、得点後のキックオフ。
❷次の理由でプレーを停止するとき。
- フリーキックまたはペナルティーキックによるファウルが起きたとき
- ボールがゴールの中に完全に入って得点になっているが、依然インプレーに見えるとき
- 飲水タイムや激しい雷雨などで、試合の一時的な中断または中止をするとき
- 前半、後半(延長戦含む)の終了時
❸次の場合でプレーを再開するとき。
- 規定の距離を下げたときのフリーキック
※フリーキックの際、壁の選手はボールから9.15m離れなければいけません。この距離が守られていない場合、笛を吹いて下がるように促します。 - ペナルティーキック
❹次の理由で停止されたプレーを再開するとき。
- 警告または退場
- 負傷者の発生
- 交代
上記の4つの場面で主審は笛を吹いてシグナルを送ります。その一方で、ゴールキックやコーナーキック、スローイン、得点(❷の2つ目のような際どいものは除く)によりプレーを停止する時は笛を吹きません。また、フリーキック(❸の1つ目のようなものを除いたほぼ全て)、ゴールキック、コーナーキック、スローイン、ドロップボールでプレーを再開するときも同様に笛を吹くことはありません。
手や腕によるシグナルを示すのはどんな時?
笛に加えて、主審は手や腕も用いてシグナルを示しています。それぞれの場面で、どんな動作を行っているかを見ていきましょう。
❶ゴールイン:センターマークの方向を示す。
❷スローイン:スローインを行うチームの攻撃方向を示す。
ボールが他の選手に触れた後、タッチラインを割ったというような分かりにくいときには、ワンタッチがあったというジェスチャーを加えます。
❸ゴールキック:ゴールエリアの方を腕をやや下に向けて示す。
最後に触れた選手が攻撃側か守備側か分かりにくいときには、ジェスチャーを加えます。
❹コーナーキック:キックが行われるコーナーアークの方を少し斜め上に向けて示す。
ゴールキックと同様、分かりにくいときにはジェスチャーを加えます。
❺ペナルティーキック:笛を吹きながらペナルティーマークの方を示す。尚、ペナルティーマークまでいく必要はありません。
❻直接フリーキック:笛を吹いて攻撃側が攻める方を少し斜め上に向けて示す。
先にもあげましたが、規定の距離(9.15m)を離して再開する場合には、笛を吹いて競技を停止し、再開の笛を吹いてプレーを始めます。早く再開することを認める場合には手でゴーのジェスチャーをします。
❼間接フリーキック:笛を吹いて腕を真上に上げて示す。
再開されたボールがその他の選手に触れるか、ボールがアウトオブプレーになるまで腕は上げたままにしておきます。但し、オフサイドなど守備側サイドからの間接フリーキックで、直接ゴールに入らないと判断できれば、腕を上げ続けなくてもよくなりました。
❽アドバンテージ:プレーの継続をさせるために、両腕をハの字のように広げるか、片腕を攻撃方向に伸ばして示す。この時、シグナルと同時に「プレーオン」と声を発します。
上記の8つ以外にも、ドクターやトレーナーの入場や、選手の復帰を許可するとき、また担架を要請するときもシグナルを示します。担架が必要な場面では、腰のあたりで、両手で担架を下から上に持ち上げるようなシグナルを行います。また、負傷者の対応やその他の理由で時間がかかりそうな場面では、時計を止めているジェスチャーを示します。
これらに加えて、VARが導入されている試合では、「チェック」や、「TVシグナル」などのシグナルが用いられます。
シグナルはショート・シンプル・クリアに行う
笛と腕・手で示される主審によるシグナルを見てきましたが、これらはシンプルで、クリアで、簡潔(ショート)でなければなりません。
笛はその状況に応じて長短・強弱を使い分けることで、主審のメッセージを選手に伝えるコミュニケーションにもなります。例えば、スローインの位置をリードするために短く「ピッ」と吹いて選手をリードすることもできますし、相手への無茶なファウルに対しては「ビー」と強く大きく吹いて危険なプレーであることを気づかせることもできます。一方で、常に同じ強さで「ビー、ビー」と吹いていると、選手の感情を害することにも繋がりますから、注意が必要です。
さらに、シグナルに加えて、簡単なジェスチャーや言葉による説明があると、意思の疎通や理解を深めることにも繋がります。例えば、ファウルのとき、強く長い笛を吹いた後、相手に向かって足を上げたジェスチャーや言葉を付け加えると、なぜファウルになったのか、相手にケガがなかったか、次のプレーはどうしたらよいかなどを伝えることができます。
ただし、ファウルを大げさに真似したり、繰り返し行うことは、主審の品位を落としたり、混乱を招くことになるので行うべきではありません。自分にしか分からないジェスチャーや、オーバーアクション、長い説明などをせずに、あくまでも選手とのコミュニケーションを円滑に進めるために、ジェスチャーもショート、シンプル、クリアに行うことが求められます。
試合中、主審のシグナルがどんなときに、何を意図して、どのように示されているかを見てみると、副審のシグナルと同様に新たな発見があると思います。試してみてください。
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