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今さら聞けない!?サッカールール「ゴールキーパーに関わるチャージ」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は「ゴールキーパーに関わるチャージ」について。ゴール前の競り合いはサッカーの魅力的な場面の一つ。そんな場面でよく見られる、ゴールキーパーに関わるチャージについて取り上げます。

そもそも「チャージ」とは?

今回はゴールキーパーに関わるチャージを取り上げますが、本題に入る前に、そもそも「チャージ」とは何かについて説明します。

ボールを奪い合う過程において、身体で相手の身体に強く当たっていくことを「チャージ」と言います。「身体で」とは言っても、腕や肘は用いず、肩で相手の肩あたりに当たっていくプレーが正当なチャージとして認められています。
また、プレーイングディスタンス(ボールにプレーできる距離)にないときのチャージや、ボールにプレーする意志のないチャージ必要以上に強くぶつかるチャージは、肩と肩であってもファウルになります。(もちろん、肩と肩以外のチャージもファウルです)

後方からのチャージは、相手がスクリーン(競技者とボールの間に身体を入れること)しているときのみ許されますが、これも肩で相手の肩のあたりに行うものだけが正当であり、相手の背中に当たったり、腹や胸で当たったりするようなプレーは許されません。
肩で当たっていった後に肘で押すようなプレーもファウルです。肘が身体に付けていれば、肩から肘までの腕の部分でチャージすることになるので許されますが、肘で当たることは危険なチャージになるので気を付けたいものです。
また、ボールを競り合う時、ボールを触れる前に上体、腰、大腿で相手に当たり、相手の体勢を崩してボールを奪うのはファウルチャージ、あるいは相手を身体で押すファウル(プッシング)のいずれかで罰せられます。

97年以降はゴールキーパーへの正当な競り合いが保障されるように

さて、テレビの実況や解説を聞いていると、「キーパーチャージ」という言葉を耳にするかもしれません。実は、キーパーチャージという言葉自体は現在の競技規則には記載されていません。

キーパーチャージの言葉が競技規則に記述されていたのは、1997年以前になります。現在は変更になっているので細かな説明は省略しますが、大きく異なる点として、正当なチャージであっても、ゴールエリア内でボールを持っていないゴールキーパーに対するものは、「キーパーチャージ」として間接フリーキックとなっていました。

この競技規則は1997年の規則改正で変更となり、「キーパーチャージ」ではなく、「キーパーへのチャージ」という解釈になりました。
これによって、フィールドプレーヤー同士ならヘディングの競り合いでヘディングしようとしながら相手にチャージできることと同様に、ゴールキーパーに対しても正当な競り合いを保障することになりました。簡単に言うと、以前はゴールエリア内ではゴールキーパーは守れていましたが、現在はフィールドプレーヤーと同じ扱いになったということです。従って、ゴールエリアの存在理由も変わり、ゴールキックを再開するエリアになっています。

 
※ペナルティーエリアとゴールエリア

ただし、保障されるようになったのは「正当な」競り合いです。自陣のペナルティーエリア内でボールをキャッチしようとするゴールキーパーに当たっていく際、たとえ肩と肩に当たっていくものであっても、「不用意に」行ったものは直接フリーキックとなる反則「無謀に」いけば警告「過剰な力で」いけば退場となります。

審判員は、相手選手がゴールキーパーとボールを競り合う時は、「不用意に、無謀に、過剰な力で」行っていないかを見極めなければなりません。特にゴールキーパーが高いボールをキャッチしようとして腕を伸ばしている状態は、身体の側面が無防備です。このような状態でタイミングや方向などが悪いファウルチャージを受けると、バランスを崩して頭から地面に落ちることがあり非常に危険です。
また、ボールにプレーするふりをして、ゴールキーパーのプレーをじゃまする目的で背中や腰でチャージする選手を見逃さないようにしなければなりません。それらは「ゴールキーパーへのファウルチャージ」となります。

もちろん、ゴールキーパーがチャージする時も同様に「不用意に、無謀に、過剰な力で」を見極める必要があります。近年、ゴールキーパーの守備範囲の広さと守備の技術がチームにとって重要なポイントになっています。フィールドプレーヤーと同様、正当なチャージをしてボールを奪うことが求められていますが、プレーイングディスタンスにないボールに無理やりチャレンジしたり、必要以上の力でチャージしたりして相手選手に接触すれば、ファウルチャージ、PKを与えることとなります。

正しいチャージによるボールの奪い合いはサッカーの魅力の一つ

 

サッカーは激しい闘争的なスポーツです。危険な、悪質な、ずるいプレーは禁じられていますが、お互いがフェアにボールを競り合った結果、身体と身体がぶつかる「チャージ」は「フットボール・コンタクト」として認められています。
ゴールキーパーに限らず、選手同士の正しいチャージによるゴール前でのボールの奪い合いがサッカーの魅力につながっています。競技規則の細かな用語を理解する必要はありませんが、現代のサッカーが求めていることを知っておいてもらいたいです。
審判員は、その競り合いが、どのようなアプローチ(タイミング、スピード、強さ、距離、危険度)で、どの部位(肩なのか、腰なのか)で、その結果(プレーできたか・できなかったか、影響があったか・なかったのか)を判断し、フェアでアグレッシブなプレーを保障していきたいものです。

WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。

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