今さら聞けない!?サッカールール「オフサイド」(後編)
1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
前回に引き続き、「オフサイド」について解説していだきます。今回は一歩踏み込んだ内容になるので、前編の内容をおさらいしてから読んでみてくださいね。
★前編コチラ…今さら聞けない!?サッカールール「オフサイド」(前編)
オフサイドのポイントをおさえよう!「プレーにかかわる」行動って?
前回に続いて、オフサイドの説明をします。オフサイドには「いつ」「どこで」「何をしたか」という3つの条件があることを前回解説しました。今回は、3つの条件の「何をしたか」が焦点となります。
図をご覧ください。A・B・Cが攻撃側、D・Eが守備側の選手です。Aは矢印の方向にパスを出し、Cが走りこんできてそれを受けようとしています。
この時、オフサイドポジションにいるBがプレーにかかわるとオフサイドの反則となります。Cはオフサイドポジションではないので、Bが立っているだけであれば反則にはなりません。Bが「相手競技者を妨害する」と反則になってしまいます。
例えば、EがBとぶつかった、あるいは、ぶつかりそうになってスピードを緩めたならば、「妨害した」ので反則となります(図1)。また、Dがボールに追いついてボールをキックしようとしたとき、BがDに近づいて邪魔をしたならば、「プレーする可能性に影響を与えるような明らかな行動をとった」ので反則となります(図2)。
この明らかな行動かどうかは主審が判断します。例えば、Bが近づいてきたので、Dが慌ててキックしたならば明らかな行動と判断して、反則となります。距離だけではなく、状況も判断基準となります。
こんなプレーはオフサイド!
それでは、オフサイドになる「明らかな行動」とはどんなものがあるのか、具体的な例を何パターンかみていきましょう。また、審判がそれぞれの場面で何を見て判断を下しているのかも解説していきます。
●パターン1
オフサイドポジションにいるBが、ボールをキックしようとするDを妨害すればオフサイドの反則となります。何事もなくDがプレーできれば反則とはなりません。
このとき、副審は状況を見て、少し遅れて旗をあげます。判断を遅らせる副審の技術を「ウェイト・アンド・シー」と言い、よく使われる用語です。
●パターン2
Aがシュートしたとき、オフサイドポジションにいるBが「相手競技者を妨害する」と反則になります。例えば、BがGKの視線をさえぎったことでGKがプレーできなかった場合などが考えられます。これを「明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレーする、または、プレーする可能性を妨げる」と言います。この状況で大切なことは、Aがシュートした瞬間のBの位置と行動ですので、副審にとっては両方見る必要があり大変難しいことを求められます。主審も、Dのハンドの反則がないかどうかを見ながら、Bを見なければなりません。
●パターン3
Aがシュートしたとき、オフサイドポジションにいるBがボールに向かって近寄ることによってGKを妨害したならば、「ボールに向かうことで相手競技者に挑む」と判断し、オフサイドの反則となります。Bの位置と行動も大切ですが、シュートの速さ、コースなども加味して判断しなくてはならないので難しくなります。
●パターン4
Aがシュートしたとき、オフサイドポジションにいるBはGKの後方におり、妨害していないならば、オフサイドの反則とはなりません。もちろん、ボールに触れたならば反則となります。
●パターン5
Aがシュートしたとき、オフサイドポジションにいるBがGKから跳ね返ってきたボールをプレーしたならば、オフサイドの反則となります。これは、「その位置にいることで利益を得る」と判断されるから。ボールがゴールポスト、クロスバー、審判または相手競技者から「跳ね返った」、あるいはそれらに当たって「方向が変わってきた」状況も同様です。
※ボールが守備側選手よりも後方にある場合は、オフサイドラインはボールの位置になります(前編パターン6参照)
ただし、似たようなかたちでボールがわたっても、オフサイドにならないこともあります。次の図を使ってみていきましょう。
Aのシュートを防ぐためにDが向かってきたボールをキックした結果、オフサイドポジションにいるBにボールがわたったとしましょう。「方向が変わった」という点では先にあげた例と同じですから、オフサイドでは?と思いますよね。ですが、この場合、Bはオフサイドの反則とはならないのです。
これは、Aのボールに対してDのとった行動(キック)が「明らかにプレーした」と判断されるため。「明らかにプレーした」とは、キック、ヘディング、トラッピングなど余裕をもってプレーできるような状況を言います。その場で動かずにシュートブロック(足や体を使ってシュートやパスを防ぐなど)した場合は、「明らかにプレーした」とはなりません。例えば、Aの蹴ったボールが速いスピードで、Dは足を出すのが精いっぱいだったとすれば、プレーできる余裕はないとなります。この場合は、「跳ね返り」「方向が変わってきた」と考え、Bはオフサイドの反則となります(「その位置にいることで利益を得た」ということですね)。
このような状況では、主審はボールとDの動きを見て判断します。
オフサイドにならない場合は?
オフサイドになる例を多数みてきましたが、一見オフサイドになりそうで、実はオフサイドではない例もあります。
上の図でオフサイドポジションにいるBが、Aからスローインで直接ボールを受けます。この場合、Bはオフサイドの反則にはなりません。同様に、コーナーキック、ゴールキックから、直接ボールを受けてもオフサイドの反則とはなりません。
オフサイドになった後、プレー再開の位置は?
質問が寄せられていたプレーの再開位置についてもふれておきましょう。主審がオフサイドと判定し笛を吹いたら、守備側の間接フリーキックでプレーが再開されます。フリーキックを行う場所は、オフサイドの反則となった選手(図の場合はB)がプレーにかかわった位置です。
「オフサイド」まとめ
前後編にわたって解説してきましたが、みなさんオフサイドについて理解できたでしょうか?「ちょっとまだ難しい!」という人も、解説したポイントを頭に入れて試合をみていくと何となく分かってくるかと思います。基本的なルールをおさえておくと、お子さんの試合観戦をより楽しむことができるはずですよ。
- 守備側の後ろから2人目の選手がオフサイドライン
- 攻撃側の選手がオフサイドラインより前にいると「オフサイドポジションにいる」状態
- 「オフサイドポジションにいる」選手が「プレーに関わる」とオフサイド