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今さら聞けない!? サッカールール「ゴールエリアとゴールキック」

今さら聞けない!? サッカールール「ゴールエリアとゴールキック」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は、2019年の競技規則改正以降、チームの戦術や審判員の動きに大きな変化をもたらした、「ゴールエリアとゴールキック」について解説します。

呼び方や役割が変わっていくサッカールール

皆さんは「ゴールプレーヤー」という呼び方をご存じでしょうか? 最近ではゴールを守るだけの「ゴールキーパー」ではなく、ゴール前にはいますが攻撃の起点・つなぎを果たす役割を表す意味で「ゴールプレーヤー」と呼ぶ技術の指導者もいます。

また、サッカーのグラウンドを「フィールド」ではなく、土や天然芝・人工芝、さらに室内のフットサルであっても最近は「ピッチ」と呼んでいます。未だに「コート」という呼び方を耳にすることがありますが、30年ほど前の言い方のように思います。

このように時代の変遷によって呼び方や役割が変わっているものが多々あります。今回は、最近、役割と進め方が大きく変わった「ゴールエリアとゴールキック」を取り上げます。

ゴールエリア

現在のようなペナルティーエリア、ペナルティーアーク、ゴールエリアが設定されたのは1937年です。【図1】のようにゴール前の色付けされた部分を「ゴールエリア」と呼びます。

 
図1

①形

左右のゴールポストの内側より5.5mの距離に、ゴールラインに対して直角となる5.5mのラインを2本引きます。そして、2本のラインの先端を結んでできる長方形のエリアが「ゴールエリア」となります。

②役割

ゴールキックをする際にボールを置くことができる範囲であり、このゴールエリアの中であれば、どこからでもゴールキックを始めることができます。歴史的には、1937年にゴールキックを行うエリアとしてゴールエリアが設定され、1938年にもう一つの役割として、ゴールキーパーを保護するエリアとして設定されました。

ゴールエリア内にいるゴールキーパーをチャージ(身体で身体にぶつかる)すると間接フリーキックで罰せられるという、いわゆる「キーパーチャージ」という反則ができました。そして、1997年に、ゴールキーパーもピッチ上どの場所に居ても、自陣のペナルティーエリア内で手が使える以外、他の選手と同じ扱いをされることとなりました。

つまり、攻撃側の選手がゴールキーパーにチャージした場合、それが不用意に、無謀に、過剰な力でなければ反則ではなくなったことで、「キーパーチャージ」という反則は廃止となりました。そのため現在は昔に比べ、ゴールエリアの重要性は薄れてしまっているかもしれません。

ゴールキック

①自分のゴールキックになるのは?

自陣のゴールラインをボールが完全に越えた時、得点を除き、最後にボールに触れたのが相手チームの選手の場合です。

②再開場所は?

ゴールキックはゴールエリア内であればどこから始めてもよく、ゴールエリアライン上にボールを置かなくてもよいです。ゴールエリアラインにボールがかかっていれば再開できます。

③ボールがインプレーになるのは?

静止されたボールがキックされて明らかに動いた時にインプレーとなります。2018年まではボールがペナルティーエリアを出るまでインプレーとはなりませんでした。これは、自陣ペナルティーエリア内のフリーキックについても同様です。また、インプレーになったボールを再び同じ選手がボールに触れると、やり直しではなく、いわゆる二度触りと判断され、相手チームの間接フリーキックで再開されます。

④味方選手の位置は?

ゴールエリア内を含めたピッチ内のどこでもボールを受けることができます。この結果、ゴールキーパーやフィールドプレーヤーが大きくキックすることが少なくなり、非常にスピーディになり、チーム戦術も変わりました。特に、ゴールキーパーを含めた守備側の選手の個人技術や戦術が求められるようになってきたように思います。

 
図2

⑤相手選手の位置は?

ボールがインプレーになるまでは相手の選手はペナルティーエリア外にいなければなりません。インプレーになる前に中にいた場合はゴールキックのやり直しとなります。

 
図3

しかし、キックが素早く行われ、本当にペナルティーエリアから出る時間がない場合、キックを行うことを妨害したり、阻止したりすることはできませんが、ボールがインプレーになった後であれば、プレーに参加し、ボールをインターセプトすることができます。ただし、意図的にペナルティーエリア内に留まったり、進入したりしてはいけません。最近では、相手の選手の守備の意識が高まり、ゴール近くでボールを奪うことが増えたように感じます。速い(高い位置からの)守備から攻撃に結びつけてゴールを奪うという意識が生まれているように思います。

 
図4

終わりに

現代のサッカー選手は走るスピードだけではなく、見る、気づく、伝える(情報収集、処理、伝達)などのスピードも要求され、ひと時も休むことが許されないように感じます。審判員もゴールキックだからといってゆっくりハーフウェーラインに戻ることは少なく、ボールから目を離さないことはもちろん、両チームの戦術を察知し、常にリスク管理(リスクマネジメント)をしておかなければなりません。

その意味でも、「ゴールエリアとゴールキック」に関する競技規則の改正は、サッカーの魅力を倍増したものだと思います。皆さんもゴールキックから目を離さないでもらいたいです。

アンケート

小幡さんに解説して欲しいサッカールールがありましたら、以下のアンケートからご応募ください。今回の解説したサッカールールについての感想もお待ちしております。
以下のアンケートは回答したい質問だけでもご応募が可能です。

WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。

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