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今さら聞けない!? サッカールール「フリーキックと壁」

今さら聞けない!? サッカールール「フリーキックと壁」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ! 今回は、反則が起きた後に行われるフリーキックと、それに伴うルールについて解説します。

そもそもフリーキックって?

反則が行われた後、再開する方法に直接フリーキック間接フリーキックがあるのはご存じでしょうか。直接得点できるのが直接フリーキック。味方、あるいは相手がボールに触れなければ得点とならないのが間接フリーキックです。

間接フリーキックでは、主審は片手を伸ばして上げるシグナルを示すことになっています。もし、手を上げることを忘れて得点になった場合は、フリーキックのやり直しとなります。

このフリーキックのフリーとは、どんな意味があると思われますか?
①反則されたチームが、自由にいつでもキックできる。
②自由に相手に邪魔されずにキックできる。
③自由にどこへでもキックできる。
④自由に誰でもキックできる。

答えは②。「相手に邪魔されずに自由にキックできる」という意味のフリーです。
反則をしたチームの罰として、相手チームに自由に蹴るチャンスを与えます。従って、自由に蹴らせなければならないので、キッカーの近くにいて、蹴りにくいように妨害することは許されません。

具体的には、反則をした側の選手全員は9.15m(10ヤード)、8人制では7m以上ボールから離れて、ボールが明らかに動く(ボールインプレー)まで妨害してはいけません。
Jリーグなどでは、主審が腰辺りに着けたバニシング・スプレー(時間が経てば消えるスプレー)を使って線をフィールドに描いています。

「壁」に関するルール

フリーキックのとき、ゴールを守るために、あるいはシュートコースを限定するために、守備側の選手が立っているのを見たことがあると思います。立っている選手、あるいは選手たちを「壁」と呼んでいます。
筆者が選手時代、フリーキックからシュートされたボールから逃げたものなら、「壁になりきれ」と叱られた記憶があります。

ゴール前では、ゴールキーパーがDFの選手に「3枚」、あるいは「5枚」と指示することが多いです。「壁」の選手は、相手のフリーキックを妨害しないようにボールから9.15m以上離れなくてはなりません。「壁」になった選手は、その場で跳び上がったり、横たわったりすることは許されていますが、ボールがインプレーになる前に前方に動くことは認められていません

ペナルティーエリア前の攻撃側フリーキック

このような場面では、攻撃側と守備側の駆け引きに面白さがあります。例えば、ボールの前に右利きと左利きの二人の攻撃側の選手が立ってカーブを描くボールをキックしたり、キックするフェイントをしたり、ボールを横にちょこんと蹴って「壁」を外してシュートしたり、いろいろなアイデアを使ってゴールを狙っています。審判員は、「壁」に入った選手が手・腕を広げていないかなど、ハンドの反則に気をつけて見ています

また、キッカー側の選手は、ゴールキーパーの視界を隠すため、「壁」付近に並ぶことがありますが、「壁」が3人以上の場合、キッカー側の選手はその「壁」から1m以上離れなければなりません。「壁」の横だけではなく、「壁」の前に立つ、あるいは膝つきになる、もしくは横に寝る場合も同様です。ただ、「壁」に向かって立ったり、膝をついたりすると、ボールを見ることができず避けられないので、頭に当たると非常に危険であり、しっかりボールを見ていてほしいです。

フリーキックでプレーを再開する際のルール

反則されたチームが早く再開したいときは、主審が反則の笛の後、再度笛を吹いて競技を停止していなければ、反則のあったところから即座に蹴って再開してもかまいません。相手の選手が近くにいてもすぐに蹴ったほうが得だと判断すれば、相手選手が離れていなくても、フリーキックを蹴ることができます。これをいわゆる「クイックフリーキック」あるいは「クイック」と呼んでいます。

選手は反則の起きたところにボールを置き、静止してから再開しなければなりません。フリーキックの再開は、反則の起きた地点ではなく、「ところ」となっているのは、負傷した選手が倒れていれば少し後ろ、横からプレーしても良いからです。

ボールが動いていたらやり直しとなるので、せっかくのチャンスを逃してしまわないように手や足で明らかにボールを止めて蹴りたいです。蹴ったボールを相手にカットされたり、当たったりしてもやり直しをせずにプレーを続けるので、蹴る選手は周囲の状況をよく見て再開しなければなりません。

また、クイックフリーキックしたボールが相手に当たったり、カットされた場合は、プレーを止めたり、やり直しをしません。相手に緩く当ててドリブルする、あるいはシュートすることも可能です。一方で、近くの相手に向かって強く蹴ると反則となり、相手チームの直接フリーキックで再開、当たった部位(頭・腹など)と強さによっては警告・退場となることもあります。

主審に「止めないで」「笛を吹かないで」と言って「クイックフリーキック」を狙ってなかなか再開しない選手がいますが、主審はその状況を判断し、笛を吹いてプレーを止めて、笛で再開することがあります。特に、ペナルティーエリア付近では、クイックで始まることを警戒して守備側の選手は「プレーは止まっていますか」と主審に尋ねます。

間接フリーキックと直接フリーキック

もし、ペナルティーエリア内で間接フリーキックとなる反則(例えば、ゴールキーパーへのバックパス)が起こり、ボールからゴールまで9.15mに満たない場合は、最大距離になるゴールライン上に「壁」を作ることができます。味方あるいは相手選手を問わず、誰かに触れてゴールになれば得点です。

間接フリーキックのボールが誰にも触れずに直接ゴールに入った場合、相手のゴールキックで再開されます。または、誰にも触れずに味方のゴールに入った場合は、相手にコーナーキックが与えられます。フリーキックはペナルティーキックを除いて、前後左右に蹴ることができますが、直接フリーキックの一つであるペナルティーキックは前方に蹴らなくてはいけません。

まとめ

フリーキックは相手の邪魔を受けずに自由に蹴ることができる大きなチャンスであり、守備側も攻撃側のいろいろな状況を予測して工夫し合う面白い場面です。審判員はそれぞれの選手・チームの意図や状況を想定し備えています。そして、選手の安全と安心を保証し、反則された側が損をしないように公平にプレーが保たれるように気をつけています。

反則をしたチームの選手を半径9.15m以上の円の外に離し、ボールのインプレーまで近寄らないように大きな声をかけたり、はっきりしたジェスチャーで示したりしています。また、選手が「クイックリスタート」をするかどうか、早く正しく状況判断をしています。せっかくの攻撃のチャンスをつぶさないように気をつけなければなりません。審判員にとっても、技術の見せどころです。ぜひ、フリーキック時の審判員の行動にも興味を持って見ていただくとうれしいです。

WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。

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