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今さら聞けない!?サッカールール「PK戦」

今さら聞けない!?サッカールール「PK戦」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は、昨年のワールドカップで日本代表が敗れてからこれまで以上に関心が高くなって「PK戦」について解説します。

PK戦の流れやルールを解説

サッカーでは、延長戦を行わない場合、あるいは延長戦でも引き分けた場合、PK戦によって勝者を決めます。私が中学校時代では、引き分けた場合には抽選方式で、じゃんけんに勝ったキャプテンが2枚の封筒のうちどちらかを引いて〇印のある方が勝ちという残酷な決定方法がありました。幸運にも〇を引き重責を果たした記憶がありますが、この緊張感はプロ野球のドラフト会議を見ていて思い出す事があります。

俗に「PK合戦」、あるいは「PK方式」と呼ばれていたものが、2023/24の競技規則の改正により「PK戦」と変わりました。PK戦はキッカーだけではなく、他の選手・ベンチ、さらには保護者の皆さんも非常にどきどきする場面です。そして、ゴールキーパーが脚光を浴び、一躍ヒーローになることもあります。

今回はこの「PK戦」について、開始前からの流れやルールなどを改めて解説していきたいと思います。

PK戦の始前の流れ

両チームのキャプテンを呼んでコイントス

1どちらのゴールを使うか、主審がコイントスで決めます。ピッチの状態や風・光線、安全など考慮すべきことがあれば、主審が決めます。選手に選択権はありません。一度決めたゴールは基本的に変更されませんが、安全上の理由、またはゴール等が使用できなくなった場合、あるいはピッチの状態が悪くなった場合などによって変更されることもあります。

2もう一度コイントスを行い、勝ったチームが先に蹴るか、後に蹴るかを選びます。選手が決めることができます。相手にプレッシャーをかけるために先行を選ぶチームが多いようです。

主審による人数の調整

3PK戦開始前に負傷者や退場者によって両チームの人数が異なる場合、多い方のチームの人数を減らし、両チームが等しい人数に合わせます。

4除外された選手はキックに参加する資格がなくなるので、主審に伝えベンチに留めます。

5PK戦開始後に同じ人数にならなくなった場合(負傷・退場など)も、多い方の人数を減らして、公平を期するために、その都度同じ人数にします。一方のチームが7人未満になった場合でも、主審はPK戦を中止しません。

6PK戦の前または進行中にゴールキーパーがプレーを続けられなくなった時、選手数を等しくするために除外された選手とゴールキーパーと入れ替わることができます。また、そのチームが競技会規定(大会要項など)に定められた最大数の交代を完了していなければ、氏名を届けられている交代要員と交代できます。しかし、一旦退いたゴールキーパーはそれ以降のPK戦に参加できず、キッカーとなることもできません。

選手・審判員の立ち位置

7ピッチ上にはPK戦に参加資格のある選手と審判員のみとなります。それ以外の選手・関係者はピッチ内に入ることができません。キッカーと両ゴールキーパー以外の参加資格のある選手は、センターサークルの中で待機しなければいけません。立っていても、座っていてもかまいませんが、横一列に並んでいることが多いです。

8キッカー側のゴールキーパーは図のように、ピッチの中で、ペナルティーエリアの外で、ゴールラインとペナルティーエリアの境界線との交点のゴールライン上にいます。副審の後ろ側に位置します。

9主審はGKの飛び出しとキッカーのフェイントなどが見える位置に立ちます。

10副審の一人はキックの行われるゴールエリアの交点、もう一人の副審はセンタサークル内に立ちます。

11監督・コーチ・参加資格のない選手はベンチから応援します。

12第4の審判員はピッチの外で、監督コーチや、参加資格がない選手が見られるところにいます。

ゴールキーパーのユニフォーム

13参加資格のある選手はいつでもゴールキーパーと入れ替わることができます。戦術的な理由(フィールドプレーヤがゴールキーパーよりPKに強いなど)が目的であれば、その選手の番号が表示されたユニフォームを着用つけなければなりませんが、ゴールキーパーの負傷退場などにより緊急避難的に代わる場合は、他の選手と区別された色であれば、その選手の番号等の表示を義務付けられていません。競技会規定(大会要項)によって明示されていますので確認が必要ですが、ある中学校大会のチームはPK戦のために背番号なしのゴールキーパーのユニフォームを準備しているところもあります。

PK戦開始後の流れ

 
【参考01】PK戦の立ち位置

14試合終了時点でフィールドに残っていた選手(負傷等で一時的にフィールドから離れた選手を含める)にPKを蹴る参加資格があります。したがって、試合終了間際にPKを得意にしているゴールキーパーに交代するチームもあります。

15両チームから5人ずつ(8人制サッカーは3人)の選手が交互にPKを蹴って、多くゴールが入ったチームが勝ちになります。両チーム5人けらずに3人目(3対0)4人目(4対1)で決まることもあります。3人目のキッカーがキーパーソンになるように思います。

 
【参考02】「おぼえよう サッカーのルール」小幡著 P130~P131 参照

16両チームの得点が同じ場合、「サドンデス」と呼ばれ、6人目からは一人ずつ交互に順番を変えることなく蹴ります。ハラハラドキドキ手に汗握る場面です。一方のチームがゴールに成功し、もう一方のチームがゴールを失敗すれば、そこで勝負は決定します。

1711人目でも勝負が決しない場合は、2巡目に入ります。2巡目の順番は1巡目と変えてもよいです。順番は主審に告げなくてよいです。あらかじめチームで決めておくか、キッカーとなる選手間で決めることになります。

18主審の合図でキックを行い、ボールの動きが止まった時、ボールがアウトオブプレーになった時、または何かの反則があって主審がプレーを停止した時、キックは完了します。ボールがクロスバーやゴールポスト、あるいはゴールキーパーに当たって跳ね返っても、ボールの動きが止まるまではボールを見届けないといけません。特に、雨の日、ゴール前に水たまりがあるときはボールが流されてゴールラインを超えることがありますから、要注意です。

19プレーを継続できなくなったゴールキーパー以外の選手は、他の選手と交代することはできません。PK戦開始前または進行中にゴールキーパーがプレーを続けられなくなった時、選手数を等しくするために除外された選手とゴールキーパーと入れ替わることができます。また、そのチームが競技会規定(大会要項など)に定められた最大数の交代を完了していなければ、氏名を届けられている交代要員と交代できます。しかし、一旦退いたゴールキーパーはそれ以降のPK戦に参加できず、キッカーとなることもできません。

20ゴールキーパーが退場を命じられた場合、他の資格のある選手と入れ替わらなければなりません。

21入れ替わって参加したゴールキーパーは、入れ替わる前のゴールキーパーがすでにキックしていた場合、次の一巡目までキックすることはできません。

反則と罰則について

22試合中のPKと同様、ゴールキーパーは、ボールがキックされる時、少なくとも片足の一部をゴールラインにふれさせているか、ゴールライン上方、または後方に足を置かなければなりません。

23ゴールキーパーによる試合や相手にリスペクトが欠ける行動(例えば、ゴールポスト・クロスバー・ゴールネットに触れる、ボールの前に立ってキッカーを威嚇する、キッカーを惑わせる行動をとる、など)に対しては、一度目が注意で、繰り返して行えば警告されます。

24選手だけではなく、試合中にチーム役員に示された注意や警告は、PK戦に繰り越されません。後半終了の笛の後、選手全員がベンチに戻る前までに与えられた注意・警告は選手、役員ともにPK戦には含まれません。もし、試合中、PK戦 の両方で警告となった場合、2つの警告が示されたと記録され、2枚目の警告ですが、退場にはなりません。

25PK戦でも、基本的には試合中のPKと同じルールが適用されます。ゴールキーパーが反則(早い飛び出しなど)を行った結果、キッカーが明らかに影響を受けて失敗した場合、1回目はゴールキーパーに注意が与えられ「PKのやり直し」となり、2回目のゴールキーパーの反則には警告が与えられます。一方、キッカーが反則(不正なフェイント)した場合(ゴールキーパーとキッカーが同時に反則した場合を含む)はキッカーのPKの「失敗」として記録されます。

終わりに

PK戦は次のステージに進むか、優勝できるかどうかを決めるチームにとって重要な場面であり、過去にも多くのドラマを生んできました。11mの距離で攻撃側選手とゴールキーパーとのいろいろな駆け引き、スキル、集中力などのメンタリティーが凝縮されています。

この緊張感あふれるPK戦を選手以上に冷静に、かつ正しく行われるように審判チームはマネジメントしなければなりません。あくまで主役は選手たちであり、審判チームがクローズアップされないように競技規則通りに確認しながら行うのがPK戦でもあります。

先日の2023年天皇杯決勝 川崎フロンターレ対柏レイソルの試合はPK戦となり、柏の一人の選手が負傷しており川崎は選手を一人減らして10対10で行い、10人目のゴールキーパー対決で決着がつき、川崎が優勝しました。

アンケート

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WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。

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