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今さら聞けない!?サッカールール「競技のフィールド」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は「競技のフィールド」について。テレビで見ているとフィールドの大きさっていまいち分かりづらいですよね。各エリア、ラインの名称と一緒にフィールドがどれくらいの大きさなのか見てみましょう。

今の競技のフィールドになったのはいつから?

サッカーの起源となるゲーム、あるいは遊びがいつ始まったのかについては、これだという決め手になるような定説はない、と言われています。ヨーロッパでは、村と村とが対抗し、各チームが300名以上の選手により、1個のボールを追い、相手の村の門に入れたら勝ちというゲームもあったそうです。現在のゴールポストは当時の村の入り口(門)の名残りだそうです。

現在のフィールドのようになったのは1937年で、日本へ初めてサッカーが紹介された1873年から50年以上たってからということになります。当時、石灰は貴重な資源であり、ラインは旗で区切られ、1897年からようやくラインによって区切られ、下図のようにゴールライン、タッチライン、ハーフウェーライン、ペナルティーエリア、センターサークル、ペナルティーアークなどが規定されるようになりました。

 

競技のフィールドを詳しく見ていこう

現在、サッカーの競技規則では、コート(court)と呼ばず、「競技のフィールド」という名称を使っています。「ピッチ」という言葉も聞くと思いますが、そちらは天然芝や人工芝の場合に言います。そして、ラインで描くことを「フィールドのマーキング」としています。

フィールドのマーキング

フットボールとして統一ルールを決めたイングランドがヤード表記をしていることもあり、現在の競技規則もヤードとメートルが併記されています。国際単位系によると1ヤードは91.44cmですが、サッカーの競技規則では、10ヤードは9.15mと示されています。それでは、11人制のフィールドの各ライン、エリアの大きさを見てみましょう。

 

図だけでは分かりづらいですが、エリアの境界線を示すラインもそのエリアの一部で、長さはラインの外側から計測されます。フィールドのマーキングでは、この点を理解しておく必要があります。

競技のフィールドの大きさ

まず、タッチラインは、ゴールラインより長くなければなりません。

  最小 最大
タッチライン 90m
(100ヤード)
120m
(130ヤード)
ゴールライン 45m
(50ヤード)
90m
(100ヤード)

FIFAはワールドカップ、オリンピック等の競技のフィールドの大きさを105m×68mと定めているため、Jリーグで使用するスタジアムではほとんど105m×68mになっていますが、プレミアリーグのイングランドでは、長さが101mや幅が67mのスタジアムもあります。どのスタジアムでも同じ大きさ、という訳ではないんですね。日本では、陸上競技場のフィールドを使う場合が多く、トラック競技のカーブの角度が鋭くなることから、長さを105mにできないところがあるようです。

センターサークル・センターマーク

 

ハーフウェーラインの中央に直径22cmのセンターマークをしるし、これを中心に半径9.15m(10ヤード)のサークルを描く。(※直径22cmは日本サッカー協会の規定)

ゴールエリア

 

ゴールポストの内側から、5.5m6ヤード)のところに、ゴールラインと直角に2本のラインを描く。このラインを競技のフィールド内に5.5m6ヤード)まで延ばし、その先端をゴールラインと平行なラインで結ぶ(18.32m20ヤード)。これらのラインとゴールラインで囲まれたエリアがゴールエリアです。

ゴール

ゴールラインの中央に設置します。両ポストの間隔(内測)は7.32m8ヤード)で、クロスバーの下端からグラウンドまでの距離は2.44m8フィート)です。クロスバーおよびゴールポストの幅と厚さは同じで12cmのものが最も適当としています。

ペナルティーエリア

 

ゴールポストの内側から、16.5m18ヤード)のところに、ゴールラインと直角に2本のラインを描く。このラインを競技のフィールド内に16.5m18ヤード)まで延ばし、その先端をゴールラインと平行なラインで結ぶ(40.32m44ヤード)。これらのラインとゴールラインで囲まれたエリアがペナルティーエリアです。

ペナルティーマーク

 

ゴールポストの中央、ゴールライン外側端から11m12ヤード)の位置に直径22cmの円でしるす。(※直径22cmは日本サッカー協会の規定)

ペナルティーアーク

 

ペナルティーマークの中央から半径9.15m10ヤード)のアークをペナルティーエリアの外側に描く。

コーナーフラッグポスト

 

コーナーフラッグポストの外周が、タッチライン及びゴールラインの外周の境界線に接するように、競技のフィールド内に設置します。

コーナーエリアと任意のマーク

 

コーナーエリアは半径1m、また、コーナーエリアから9.15mの位置に任意のマークをしるします。こちらは、コーナーキックのさいに相手チームの選手が離れなければいけない距離を示したものです。日本では、ゴールライン、タッチラインから5cm離して直角に30cmの長さで描くと決められています。

試合前には審判がフィールドのマーキングを点検

すでに気づいているかもしれませんが、ゴールの幅(7.32m)は高さ(2.44m)の3倍、ペナルティーエリア(18ヤード)もゴールエリア(6ヤード)の3倍になっています。また、センターサークル(半径9.15m)の端はゴールエリアの端(ゴール7.32m÷2+5.5m=9.16m)を結んだ線とほぼ同じになります。一見細かい数字が並び難しく感じたかもしれませんが、図のように正しくマーキングされているかを目で確かめることもできるのです。

 

ゲーム前に点検(フィールドチェック)を審判チームで行うと、不備が見つかることもあります。フィールドが長方形ではなく平行四辺形になっていたり、ゴールエリアやペナルティエリアが狭くなっていると感じ、実際に再度計測してみると、ゴールポストの外側から測定されていたことがありました。
このように点検をして不備があった場合には、会場の責任者や運営サイドにお願いして、審判チームと一緒に修正し、ゲーム前に再度確認することを心がけています。マーキングだけではなく、ゴールネットやフラッグポストなどの付帯用具も同様に審判チームの責任で点検しています。

テレビ画面で見ていると、フィールドの大きさや奥行は感じづらいものですが、数値に出してみるとその大きさが分かるかと思います。尚、日ごろお子さんの応援で見慣れているであろう8人制サッカーではフィールドの大きさはおよそ半分(68×50m)になっています。

細かい数値が出てきたフィールドのマーキングですが、意外な規則性をこぼれ話としてお子様にお話ししていただくと、さらにサッカーの面白さに気づいてもらえるのではないでしょうか。

WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。