【中学サッカー進路特集:第7回】強豪街クラブ FC多摩JY 平林清志監督インタビュー(前編)
特集「中学サッカー」第7回。今回は以前の記事でも好評いただいた強豪街クラブ、「FC多摩ジュニアユース」のセレクションをレポートします。第5回、第6回にて紹介したFC LAVIDAに並び、街クラブとして今年の「日本クラブユースサッカー選手権(U-15)」ベスト8進出の快挙。首都を代表する街クラブのセレクションでは、一体何が行われ、監督は何に注目しているのでしょうか? 平林清志監督のインタビューとともお届けします!
★前回のインタビューはこちら
【「J」に迫る強豪街クラブの中学育成論】FC多摩ジュニアユース・平林清志監督
個性ある選手を輩出し続けるFC多摩ジュニアユースのセレクションとは!?
FC多摩ジュニアユースは1994年に多摩市で創設された同地の街クラブの草分け的存在です。当初から「個」の育成に焦点を当てたクラブからは元日本代表・関口訓充や渡辺亮太、また昨年の高3年代で活躍した関川郁万(流経柏→鹿島)、宮崎純真(山梨学院→甲府)といった選手たちが巣立っています。
今年は初の関東リーグ挑戦となった中でDivision2Bを4位でフィニッシュ。さらに今夏行われたクラブユース選手権ではグループステージを10得点、無失点の3戦全勝で抜けると決勝トーナメントでも存在感を発揮しクラブベストの8強入りを果たしました。同大会ではGK谷合善祇が優秀選手に選出されたほか、1学年下ながら9ゴールを挙げた貴田遼河が得点ランキング2位に入っています。
そんな個性のある選手を育て続けるFC多摩ジュニアユース・平林清志監督にセレクションで見ている点、関川選手、宮崎選手のセレクションエピソード、中学校3年間で伸びていく選手などについてお聞きしました。
セレクションで見るのは技術よりも・・・
-今年のセレクションはどういった形で行われたのでしょうか。
「今回は一次、二次、三次でやったんですけど、その前にもうずっと練習会は1ヶ月に2回くらいずつやっていました。練習会は7月の下旬からやり始めているので7回くらいはやっていると思います。そこのところでも見られるし、そこでちょっとずつ慣れてもらえばセレクションでもやりやすいかなと思います。普段の力が出せるっていう状況がやっぱり一番良いですからね」
-セレクションは毎回何人くらい参加されるんですか?
「150人前後じゃないでしょうか」
-セレクションではどのような点を見られているのでしょうか。
「ポジション別でバランス良く取れれば一番良いのかなというところをまずベースに置いて、その中でボールを持つのがうまい子はたくさんいるんですけど、球際のところでどうしても相手が来るとパスを回して逃げてしまうだとか、或いは取られた後やめてしまうとか、ボ―ルを奪いにいくところでちょっと引いちゃう子なんかもいるとは思うんですけど、そういう子よりも積極的にボ―ルを奪いにいけるだとか、自分のプレ―をやって取られてもまた自分で取り返しにいくだとか、その球際のところの部分はひとつチェック項目のひとつになっています。
あとは自分のストロングポイントをちゃんと出せる子。そういう子が試合でもやっぱり良いプレーができると思うので、そういうところを2つあたり見て判断させてもらいました」
「やっぱり技術的にうまい子も当然目につくことは多いんですけど、それだけだと偏ってしまう。サッカーをやっていく上でやっぱり球際のところだったりとか、あとは特に『この子すごくいっぱいボールを触っているな』『そんなに技術的に高いわけではないんだけど、よくボールを触る子だな』っていう子をやっぱりちょっとチェックしたりはしますね。教えられてできることだけじゃなくて、本質的に負けず嫌いだったりとかっていう子たちはたとえセレクションであってもやっぱり球際のところで負けたくないとかっていうのが出てくると思うんですよね。
そういう負けず嫌いだったりとか、ボールによく関わる子、結局努力ができる子だったりというのはやっぱり中学に行っても伸びる。だから少なくともそういう子を取れば必ず良くなるとは言いませんが、徐々に上がってくるんじゃないかなっていうふうに思っています」
-そういったところはJに行った関川選手であったり、宮崎選手も持っていた部分?
「関川の場合は本当に負けず嫌いだったですよ。セレクションからもうそういう雰囲気は出ていて、負けず嫌いなんだなっていうのはもうすぐに見てわかりましたね。
逆に宮崎の場合はそういうハングリーさはなかったんですけど、自分のストロングポイントであるドリブルからシュートっていうのをもう毎回のようにやっていましたね。セレクションの時もそうだし、練習会に参加してもらった時からもうすでに1、2回ですぐに光るプレーをするし、『俺にはこれがあります』っていう出し方をちゃんとできていました」
全てにおいて当事者意識を持てる選手は伸びる
-中学3年間で伸びていく選手というのは?
「やっぱり賢い選手なのかなと思います。例えばこの子に話をしている時に違うポジションの子たちは聞かないとか、そういう子はやっぱり伸びていかないですよね。ここで話していることは自分にとってこういうふうに繋がってくるなという考えで話を聞いている子もいれば、ここの話されている子だけが聞いていて他の子はプレーだけの方に集中しちゃうっていうのは、やっぱり教えられているだけのことはできるけど、それ以外のプレーで得をしようとしていない。
例えばCBの子に言っていることに対してボランチの子とトップの子は聞かないとか。でも聞いておけばFWにとってもディフェンスがこうするんじゃないかっていう想像ができたり、中盤の選手だったらディフェンスの子からもらうにはどうしたらいいとかって応用ができると思うんですけど、そういう子はやっぱりうまくなりますよね」
「やっぱり今回メニコンカップの方でもコ―チをやらせてもらって感じたのは、Jの子たちはそういう話になった時にここの3人くらいの当事者たちだけじゃなくて、周りがどういうふうにしたらいいかってのもやっぱり自分たちで考えてますよね。そこは本当に賢いなと思いました。それがクセづけられているんであろうなとは思いましたね。
ポジションで当てはめられて、これをやりなさいというのは大前提であるんだけど、それ以外のことでじゃあ自分を出すためには、ここでこういうふうにボールを奪う、奪ったら自分がこういう位置にいけば多分もらえるだろうなっていうのを想像しながら聞けているんだなという、その次のプレー、次の何かを、一個先を読んでいるんだろうなというふうに感じましたね。
自分のストロングポイントからもう一個を出せるようにするためにも、アピールするためにも、この子に言っていることも、この子に言っていることもすべて自分に言われているものだと思って取り組む向上心は必要だと思います」
文・写真/石黒登
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