ジュニアアスリートの栄養に不適切!? 「白い米」と「白いパン」に頼らない主食のあり方を考える
小さなイタリア料理店を東京・渋谷にて営むサカママとして、「食トレ×イタリア料理」をテーマに日々実践していることを発信していきます。
夏休み明け、バタバタと学校が始まり、長男の後期リーグ戦や全日本選手権も遂にスタート。サッカー少年たちにとって最も気持ちの良い季節で嬉しくなりますね。ここから年末に向けて、油断していると瞬く間に過ぎていってしまいそうなので、あらためて一日一日を大切にしたいと思う10月です。
9月の初旬にサカママ主催、サーモスさんプレゼンツのイベントに参加させていただきました。ファジアーノ岡山での活躍から目が離せない佐藤龍之介選手のお母さまによるトークイベント&交流会だったのですが、現役プロサッカー選手の幼少期やご家庭でのお話を聞ける機会はとても貴重でした。
印象的だったのは、佐藤龍之介選手は小学校卒業時点で145cmしかなかったということ。長男の身長が気がかりな私としてはホッとしました。また、食事についても無理やり食べさせることを頑張ろうとは思っていなかった、食べられるものを楽しく食べるほうが大事というスタンスだったそうで、佐藤家の3兄弟はそれぞれが料理もよくお手伝いされていたといいます。今の一人暮らしにもその経験が生きていると教えてくださいました。
「食事は楽しいもの」というイメージが何より大事だと考え、その思いを食卓で家族みんなで分かち合っていたという言葉に、深く共感すると共に私の肩の力も少し抜けたように思います。先日のサカママ誌面でも掲載されていましたが、まだご覧になっていない方は佐藤龍之介選手のお母さまのインタビュー記事もぜひご覧くださいね。
玄米や5分づき米がなぜ体に良いか
ジュニアアスリートの家庭で最も重要なのは主食の確保。巷ではリーズナブルな白米が手に入りにくくなって久しいですが、我が家にはあまり影響がありません。というのも3年前くらいから我が家ではほぼ白米を炊いていないからです。
白く精製されているものは体に良くないということを学んでから、基本的にお米屋さんで「5分づき米」または「玄米」をお願いしています。以前このコラムでも紹介した、長友佑都選手の著書「長友佑都の食事革命」の中で、長友選手の栄養指導も行っていた栄養指導のプロフェッショナル石川三知さんも、主食の炭水化物を選ぶときに選択肢があるのなら、できるだけ精製したものに偏らないことが重要とおっしゃっています。
白米に多く含まれる炭水化物は、胚芽や胚乳に含まれるビタミンB群やマグネシウムによって発芽の際に栄養源として使われます。しかし、白米は精製することによって、胚芽や胚乳に含まれる栄養素を削がれてしまっているので、体内に摂取してもエネルギーとして使われにくくなってしまうそうです。
玄米を家で使う場合は、消化吸収があまり良くないので、浸水時間を十分に設ける必要があり、炊き終わってから数時間蒸らしたり、圧力鍋を使って柔らかく炊くといった工夫が必要になります。それでも人によっては食感が苦手な人もいるので、子どもたちにまずは食べさせて試してみることをおすすめします。
何がなんでも玄米が良いというわけでもなく、胚芽米や分づき米(玄米と白米の中間、3分づき、5分づき、7分づきなど)でも白米よりはよほど栄養価が高く、我が家もいろいろ試した末に、最も愛用しているのは5分づき米です。
お米だけでなく、パンならライ麦や全粒粉のパン、うどんよりも蕎麦、シリアルならオートミールというように、できるだけ精製された白いものではなく、茶色いものを選ぶことがポイントです。
とはいえ、遠征先や出先のパン屋さんで急遽補食としてパンを買うようなときは、なかなかライ麦や全粒粉パンが見当たらないことも多いので、白いパンも時と場合によっては良いと考え、うまく付き合っていきたいものです。
同時に注意しておきたい「白い砂糖」
長友選手の著書には、白い砂糖を一切断ち切ったことでパフォーマンスが向上したことにも言及されています。これは私たちもレストランを経営していく中で、白い小麦粉と白い砂糖を最小限に、“いかに体に良い料理をお客様に提供できるか、しかもそれを伝統的なレシピに則った形で実現するか”が試行錯誤を続けているテーマです。
とはいえ、頭ごなしに小麦粉は絶対ダメ! 砂糖も悪! と声高に振りかざしてお客様を怯えさせるのもいけないですし、イタリアンレストランを経営する身としてもすべてを否定することは非現実的です。また好奇心旺盛なジュニア期の子どもを持つ親としても、すべてを避けて生きることは不可能に近いとも思っています。
でも、なぜ白い砂糖が体に良くないのか、知っておいて損はありません。精製された砂糖(グラニュー糖など)はビタミンやミネラルなどの微量栄養素をほとんど含まない空っぽのカロリーだということ。カロリーだけ取り込んでも体に必要な栄養素が補えなければ意味がありません。
それ以上に怖いのは、砂糖に低血糖症を引き起こすリスクがあるということ。白い砂糖は化学構造がシンプルなだけに分解や吸収のスピードが異常に速く、血糖値の急上昇・急降下を招いてしまうのです。これは体に極度の負担をかけるので、できるかぎりジュニアアスリートの体には避けるべき状況なのです。
一方、同じ糖質でも「デンプン」のように化学構造が複雑だと分解に時間がかかるので、消化時間も長く、ゆっくりと吸収されます。これからの季節に旬を迎えるさつま芋を蒸したり茹でたりして、砂糖とは違う自然の恵の甘さを体が心地良いと感じられるような食習慣を身につけられると良いですよね。
胃腸の弱い王子のために作られた棒状のパン「グリッシーニ」はジュニアアスリートの味方
白く精製されたお米やパン、砂糖がジュニアアスリートにとっても不適切であることを知る以前から、我が家の子どもたちが昔から愛用しているパン、それが「グリッシーニ」です。
発祥は17世紀後半、ヴィットーリオ・アメデーオ2世が弱冠9歳でサヴォイア公国を継承したことにさかのぼります。ヴィットーリオはとても病弱でした。そこで食事療法のために、消化に良く、繊維質を含むパンを宮廷のお抱えパン職人アントニオ・ブルネロに依頼して作られたのが始まりです。フランス皇帝のナポレオン・ボナパルトは「小さいトリノの棒」とその新たに作られたパンを呼び、取り寄せて愛食していたと言われています。
カリカリとした食感がクセになるグリッシーニは、小分けされた袋入りのものも売っていますし、いろいろなレストランでもパンと一緒に出されることが多く、ご存じの方も多いと思います。我が家の子どもたちも、歯が生え始めた2歳頃から気に入ってよく食べています。ちょっとした合間に食べさせるのにぴったりで、消化が良いので胃腸に負担がかかりません。
ジュニアアスリートとなった今も事あるごとにグリッシーニを食べる我が子たち。イースト菌が極端に少ないのが特徴なので、不用意にお腹が膨れることがありません。試合前の小腹を満たす補食に、おやつに、夜食に、どんなシーンでも助かるグリッシーニは、我が家の食事の歴史を語るうえで欠かせない存在です。
グラナパダーノチーズ、オレガノ、バジルペースト、ピンクペッパー、オリーブ、ドライトマトなど味のバリエーションが豊富なところも魅力です。
私たちのレストランの「グリッシーニ」は、一度食べたらクセになること間違いなしですので、ぜひご賞味くださいね。
小学生最後のシーズンを親子でどこまで楽しめるか
小6長男にとって小学生の集大成となる最後のシーズンが始まりました。自分たちが日々積み重ねてきた練習の成果を本番で出せることを心から願うばかりです。
ここでも佐藤龍之介選手のお母さまの「練習を120%で挑めないと本番に100%は出せない」という言葉が思い返されます。練習を120%の力で挑むことで、本番に余白が生まれる。それが楽しむことへの余裕につながり、結果100%の力を出し切ることができると。
6年生ともなると、心身成長の局面を迎え、いろいろな問題が出てきます。コーチと考え方が合わなかったり、チームメイトと意見の食い違いが生まれたり、自分の思うようなプレイができなかったり。それでも在籍してきたチームで最大限の結果を出して歴史を刻み、次の代へつなげられるよう歯を食いしばって踏ん張る。そんな長男の背中を見ながら、私たち親には心からのエールを送ることしかできませんが、どうか心折れずに楽しんで最後まで走り切ってほしいと思うのです。
私自身が一喜一憂せず、子どものサッカーへの応援に力みすぎず、平常心を保った日々を送れるよう自戒を込めて努めていきたいです。