今さら聞けない!? サッカールール「スローイン」
1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ! 今回は「スローイン」について、その歴史や混乱しがちなルールをクイズ形式で学びましょう。
見ていて面白いサッカー
新しい競技規則2025/26が、今年7月下旬から日本の主要大会で実施されています。その一つに「ゴールキーパーによるボールの保持は8秒以内」があり、反則すると「相手チームにコーナーキックが与えられる」という競技規則の改正があります。
筆者が知る限り、コーナーキックとなったケースはほとんどなく、ゴールキーパーは早くボールを手から放してプレーしています。FIFA(国際サッカー連盟)はサッカーの魅力を向上させ、攻撃的で見ていて面白いサッカーをさせるために競技規則の改正を毎年行っていますが、これは効果的な改正といえるでしょう。

過去の「スローイン」の面白いルール
さて、見ていて面白い、流動的なサッカーにはいくつかの要素があるわけですが、その一つが「スローイン」です。これまでの競技規則改正でも、スローインに関する改正は度々行われてきました。
1993年、FIFAは日本で行われたU-17世界選手権でスローインの代わりにキックインを試験的に導入しました。タッチライン上にボールを置き、キックして再開するというものです。スローインと同様にオフサイドが適用されず、相手選手は9.15m離れなければならないので、ハーフウェイライン付近から、相手ゴール前に待ち構えるヘディングの強い選手に向かってキックすることができ、ゴール前のスリリングな攻防が増えることが期待されました。
しかし、実際には、キックするまでに時間がかかり、アクチュアルプレーイングタイム(実際のボールインプレー時間)は47分(90分ゲーム)と長くならず、かえって大味で、間延びしたサッカーになってしまい、試験的な施行は失敗に終わってしまいました。もちろん、キックインから味方選手に速くパスをつなぐ攻撃は大変有効でした。
最近のサッカーの戦術の一つにロングスローがあります。30mを超す距離を、足よりスピードは劣りますが、正確に手で投げ入れることができるので、相手ゴールを脅かす攻撃の武器になります。もちろん、キックインと同様、速く、正確にスローインすることによって効果的な攻撃になります。一方で、スローインがうまくいかないと攻撃のリズムが崩れるばかりか、相手の反撃を受けることになります。

そこで、今回は「スローイン」に関わる競技規則をクイズ形式で取り上げたいと思います。
次の文が正しければ〇、誤っていれば✖で、お答えください。
Q1 スローインから得点することができる。
Q2 アクロバットなハンドスプリング(前方倒立回転跳び)スローは禁じられている。
Q3 ボールを両手で持って投げないと反則となる。
Q4 タッチラインから何m離れてスローインしても良い。
Q5 タッチラインを踏んでスローインしないと反則となる。
Q6 スローインをする時は、両方の足裏すべてを地面につけて浮かせてはならない。
Q7 近くの味方選手に投げようとして、お辞儀をしたような形でボールが頭上を通らずにスローインしたならば反則となる。
Q8 スローイン時、スローワー(スローインをする選手)から相手チームの選手は9.15m以上離れなければならない。
Q9 スローインされたボールが、タッチラインの外にワンバウンドしてフィールドに入ったならば反則で相手ボールとなる。
Q10 スローインしたボールが空中でフィールドに入った後、風の影響でフィールドの外の地面に落ちたならばやり直しとなる。

Q1 スローインから得点することができる。
✖ スローインからのボールが誰にも触れずに相手ゴールに直接入ると得点にはならず、相手チームのゴールキックで再開されます。もし、自分のチームのゴールに入ったら、相手チームのコーナーキックによる再開です。
Q2 アクロバットなハンドスプリング(前方倒立回転跳び)スローは禁じられている。
✖ より遠く、速く、鋭角に投げることで効果的な攻撃になります。しかし、ボールを両手で持って、体を反らせてボールを頭の後方から頭上を通して前方に投げなければならず、体の強さ、肩のしなやかさ、ボールを放すタイミングなどを身につける必要があります。しばしばボールが頭上を通らず反則となります。
Q3 ボールを両手で持って投げないと反則となる。
〇 片手で投げると遠くまで投げられるので、両手にしていると推測します。
Q4 タッチラインから何m離れてスローインしても良い。
〇 競技規則には何m離れると反則となると記載していません。しかし、ボールがタッチラインから出た地点から投げなければならないので、大きく下がったり、急いで遠くから投げたりしないほうがよいでしょう。
Q5 タッチラインを踏んでスローインしないと反則となる。
✖ ボールが手から離れるまで、両足とも、あるいはその一部がタッチラン上、またはタッチラインの外のグラウンドにつけておかなければなりません。片足でもタッチラインを完全に踏み越えると反則となります。つま先が出ても構いません。また、フィールドの外であれば、ラインを踏んでいなくても反則になりません。
Q6 スローインをする時は、足裏すべてをグラウンドにつけて浮かせてはならない。
✖ ボールが手から離れるまで、両足の一部、例えばつま先や踵がグラウンドについていれば反則になりません。
Q7 近くの味方選手に投げようとして、お辞儀をしたような形でボールが頭上を通らずにスローインしたならば反則となる。
〇 スローインは膝をついたり、しゃがんだりせず立って行わないといけないので、ごく近くにいる味方の選手に投げる時は難しいです。ボールを頭の後方から頭上を通して前方に投げなければなりません。
Q8 スローイン時、スローワー(スローインをする選手)から相手チームの選手は9.15m以上離れなければならない。
✖ 2m以上、相手チームの選手は再開場所から離れていなければなりません。
Q9 スローインされたボールが、タッチラインの外にワンバウンドしてからフィールドに入ったならば反則で相手ボールとなる。
✖ ボールがインプレーになっていないので、もう一度同じチームがスローインします。違う選手に代わっても良いです。
Q10 スローインしたボールが空中でフィールドに入った後、誰にも触れずに風の影響でフィールドの外に落ちたならばやり直しとなる。
✖ 一旦、フィールドに入ったならば、ボールはインプレーとなります。例えば、タッチラインから出た地点、或いは、ゴール方向にロングスローされたボールがフィールドを通過して、ゴールラインの外に落ちたならば、相手チームのゴールキックで再開します。

普段何気なく見ているスローインにも、いろいろな細かな約束事があることに気づいていただけたでしょうか。Jリーグではロングスローをよく見かけますが、せっかくのマイボールを簡単に奪われないことが大切で、普段の練習から味方選手がプレーしやすいボールをスローインする練習をしてもらいたいです。
審判員は、反則を見つけるのではなく、選手が反則しないように声を掛け、反則をすれば、反則にならない方法をアドバイスしたいものです。取り締まる役ではなく、一緒に楽しみたいものです。
たかがスローイン、されどスローインです!