全欧州から集まる日本人少年少女サッカー大会「Euro J Jr.」密着レポート! Vol.2
こんにちは! ロンドン在住ライターのカリアゲしょうこです。
日本は猛烈な暑さだとのことですが、こちらロンドンは、8月に入るともう秋の気配を感じます。朝晩はひんやりとした空気で、長袖を着ないと肌寒いほど。イギリスの夏は、本当にあっという間に過ぎ去ってしまうのです…。
さて、先月のコラムでは、7月第1週目の週末に、ドイツ・フランクフルトで開催された「Euro J Jr.」の大会概要と主催者インタビューをお届けしましたが、今月は、大会当日の様子と、実際に出場した選手の声をお届けいたします。
大会の様子とは言っても、全体を俯瞰した内容というよりは、筆者がスタッフとして働くクラブ、Football Samurai Academy(フットボールサムライアカデミー、以下サムライ)、中でも息子の所属していたU12A(小学5・6年生チーム)中心の内容になること、どうかご容赦ください!
<先月のコラムはこちらから>
大会初日:中学生の部
中学生の部は7月5日(土)に実施されましたが、筆者は土曜日の夜に現地入りしたため、中学生の部の様子は残念ながら観ることができませんでした。この日のフランクフルトは非常に暑かったようですが、我らがサムライU14チームは準優勝! しっかり結果を残して、翌日の小学生の部への勢いをつけてくれました。
大会2日目:小学生の部
7月6日(日)朝、会場に到着すると、たくさんのチームおよび応援の保護者の方が集まっており(サムライは一番遅く到着してしまいました…)、既に大会の熱気が高まっているのを感じました。
開会式を終え、チームごとのウォーミングアップが始まると、いつも通り笑顔でボールを蹴る選手もいれば、普段とは異なる雰囲気に戸惑っていたのか、緊張した面持ちの選手も。それぞれの反応、それぞれの感じ方があるんだなぁと思って各チームの子どもたちの様子を眺めていましたが、かくいう筆者自身も、初めて参加したEuro J Jr.の雰囲気に胸を高鳴らせずにはいられませんでした。
動きが硬かった初戦
1試合目から普段通りのパフォーマンスを見せるチームもあれば、緊張から動きが硬くなっているチームも。筆者の息子が参加していたサムライU12Aチームは後者でした。このチームは小学5・6年生のチームですが、いつもリーグ戦を共に戦っているメンバーではなく、普段はイングランドサッカーの規定に則って、U12/11/10と3カテゴリにわかれている選手たちをミックスして結成したチームです。そのため、“いつも通りの連携プレー”というものがそもそもないチームではありました。しかし、個々の能力があるので、一人ひとりが持てる力を発揮すれば優勝を狙えるチームだろうと思っていました。
それにも関わらず、1試合目は0-0の引き分けという結果に。やはりどの選手にも緊張した様子が見られました。2試合目も同じく無得点で引き分けたものの、1試合目よりは動きが良くなっていたので、少しずつ緊張がほぐれてきたのでしょう。3試合目は5-0と快勝し、ついに本領発揮。個人プレーはもちろん、チームとして機能し始めているのが目に見えてわかり、試合を重ねるごとにパフォーマンスを高めていく選手たちの姿が、とてもたくましく見えました。
予選リーグ首位を決める勝負は…
4・5試合目も順調に勝ち星を挙げ、3勝2分けで予選リーグを終了。「これは予選1位通過では?!」と期待していたら、なんと2試合目で引き分けたFC Frankfurtと勝ち点も得失点差も全く同じということが判明。直接対決で勝敗がついていれば、そのときに勝ったチームが優先されるのですが引き分けていたため、予選リーグ1位と2位を決めるのは、まさかのジャンケン対決に。
両チームの選手がわっと集まる中、代表選手が進み出て、いざ勝負。試合中には真剣な表情を見せていた子どもたちですが、ジャンケンで大いに盛り上がる様子に、まだまだ小学生らしい可愛らしさを感じました。肝心の勝負の結果は、サムライの負け。ジャンケンをした選手は頭を抱えていましたが、「この借りは試合で返すからな!」とチームメンバーみんなで言い残してその場を後にしました。
準決勝は緊張のPK戦
準々決勝は危なげなく勝利。準決勝の相手は、Euro セレクションという、個人参加の選手で結成されたチーム。大会前日にメンバーが初めて顔を合わせたことを感じさせないほどの連携プレーと、それを可能にする個人技を持ったチームでした。試合はサムライが先制したもののすぐに同点に追いつかれ、1-1で終了。サドンデス形式のPK戦に突入しました。
先攻はサムライ。1人目のキッカーKくんと2人目のRくんが落ち着いて決めてくれました。迎えた相手チーム2人目の選手が放ったシュートにサムライのキーパーであるYくんが反応、ボールをはじき返しました。その瞬間にサムライの勝利、決勝進出が確定。
見事なセーブを見せたYくんにチームメイト全員が駆け寄って抱き合う姿に、筆者はじめ保護者やスタッフは感激。Yくんのご両親はこの会場には来られていなかったので、筆者が代わりにハグしたい気持ちになりましたが、Yくんにとってはただの迷惑だろうと、必死に思いとどまりました(笑)。なんだかもうクライマックスを迎えたような気分になってしまいましたが、まだ決勝戦が残っています。
U10の部は3大会連続優勝!
U12の部決勝戦の前にはU8、U10の部それぞれの決勝戦が行われ、U10の決勝戦には、同じくサムライからU10Aチームが出場。このチームは、昨年の同大会および今年1月にベルギー・ブリュッセルで行われた大会でも優勝しており、3大会連続優勝がかかっていました。ひとたびボールを保持すると、一気に相手陣内に攻め込んでシュートまで持っていく超攻撃型スタイルを遺憾なく発揮し3-0で快勝、見事に優勝しました。
優勝インタビューに答えていたキャプテンのYくんは、いつも小学生とは思えない大人びたコメントを連発するのですが、インタビューの場でもやはり彼は彼、という大人の回答でした(笑)。しかし、優勝の喜びに溢れた笑みには10歳の少年のあどけなさが感じられて、これまた会場にいらっしゃらなかったご両親の代わりに抱きしめたい気持ちになりました(もちろん、控えましたが)。
U10に続いて、U12の部も優勝!
いよいよ迎えたU12の部決勝戦、相手はFC Frankfurt。予選での直接対決は引き分けたものの、予選リーグ1位を決めるジャンケンで負けてしまったチームです。「この借りは試合で返すからな!」と宣言した相手に、本当に借りを返すチャンスがやってきたのです。勝負の神様が最高の舞台を用意してくれたのだ、と感じずにはいられませんでした。
決勝戦は15分一本勝負(前後半なし)。開始3分、自陣に攻め込まれかけたボールを、キャプテンで守備の要であるMくんが奪い、さらに3人の選手が繋いでシュートまで持ち込む。一度はキーパーに阻まれたものの、チーム得点王であるKくんがこぼれ球を押し込み先制。10分には、筆者の息子であるEがハーフウェイライン付近で奪ったボールをゴール前までドリブルで運び、そのままシュート。ボールはゴールに吸い込まれ、2点目を決めました。最後のホイッスルが鳴るまで、全員の集中力が途切れることなく、2-0で試合終了。U10の部に続いて、U12の部でもサムライは優勝を果たしました‼‼‼
試合後の優勝インタビューでは、キャプテンのMくんが「この優勝を世界中のみんなに伝えたい! 勝ったぞー!」と喜びを爆発させ、その様子を見守っていた他の選手たちも、達成感と高揚感に満ちた表情で、いつにも増して輝いていました。
悲喜こもごもの閉会式
閉会式では、優勝トロフィーやメダルの授与、カテゴリ別MVP発表の後、10月にバルセロナで実施される国際大会にEU-JAPAN選抜として出場する選手の発表がありました。名前を呼ばれた選手は誇らしげに堂々とした様子で、本当の“日本代表選手”のようでした。今大会に出場した全選手分の気持ちを背負って、秋の大会で活躍してほしいと思います。
一方で、もちろん選ばれなかった選手もいます。というか、選ばれなかった選手のほうがもちろん多いのです。自分の名前が呼ばれることなく選手発表が終わると、落胆してうつむいてしまう子も少なくありませんでした。そんな“選ばれなかった選手たち”の様子を見て、大会主催者である増嶋さんから、ご自身とご兄弟についてのお話がありました。増嶋さんが高校生の頃、弟さんが大きな大会に選手として出て活躍する一方、ご自身はその大会でボールボーイを務めていたそうです。そんなご自身の悔しい経験を通じて感じたこと、それでも諦めずにサッカーを続けたこと、そのおかげで今ここにいること、などを子どもたちに語ってくださいました。きっと、多くの選手たちの胸に響いただろうと思います。
サッカーは、勝ち負けがあるスポーツ。サムライの中でも、優勝したチームもあれば、勝てずに苦戦したチームもありました。勝たなければ味わえない喜び、負けなければ感じることのできない悔しさ、チームスポーツだからこそ生まれる達成感と一体感。そういう経験や感情を仲間と共有しながら、チームとして、選手として、ひとりの人間として成長できるのがサッカーの素晴らしさである、とあらためて感じさせてもらった大会でした。
出場選手の声
今大会に兄弟3人で出場した選手たちに、大会に参加して感じたことを伺いました。
小池凰太郎くん(U14の部 準優勝)
「普段のイングランドのリーグ戦では、自分よりも体の大きな相手と戦うことが多いけれど、この大会では日本人が相手でさほど体格差を感じなかったので、バチバチ戦えて自信がつきました。シーズンを通して行うリーグ戦とは違って、どのチームもこの大会にかける意気込みがとても強く、簡単に勝てる試合はありませんでした。決勝で負けてしまったことはもちろん悔しいけれど、なぜか弟の奏士朗(U8)が準決勝のPK戦で負けたときのほうが、もっと悔しかったです」
小池蓮之介くん(U12の部 優勝)
「僕たちのチームは、普段から一緒に戦っているメンバーではなかったので、1・2試合目は戸惑いがありましたが、3試合目からは段々とパスが回り始めて、連携できるようになりました。一番厳しかった試合は準決勝。普段はPK戦でも平常心で蹴れますが、相手チーム(Euro セレクション)のキーパーがすごく上手だったので、緊張しました。優勝できたことも、EU-JAPAN選抜に選ばれたことも、すごく嬉しいです。でも、動画を見て試合を振り返ると、『もっとシュートを打てたな』と思うシーンもありました」
小池奏士朗くん(U10の部 3位)
「ピッチやゴールの大きさ、プレイヤーの数、メンバーもいつもとは違ったので、少しやりにくさがありました。それでも優勝できる自信はあったので、準決勝のPK戦で負けてしまったときは、涙が出るほど悔しかったです。お兄ちゃんたちの試合は、観ていてすごくレベルが高いと感じました」
小池兄弟は、今夏で日本への本帰国が決まっていました。今大会から中学生の部が新設されたことで、帰国前最後の夏に、兄弟3人揃って大会に出場することができたことは、彼らにとってはもちろん、ドイツまで応援に来られたご両親にとっても、忘れられない思い出になることでしょう。
おわりに
実は、筆者の息子がEuro J Jr.に参加したのは、今年で4年連続4回目でしたが、これまで筆者は遠征に帯同したことはなく、大会を終えるたびに成長してロンドンに帰ってくる息子の姿を楽しみに待っていました。しかし今回は、クラブスタッフとして帯同する機会をもらえたので、ドイツまで一緒に行き、自分の息子だけでなく、選手一人ひとりが成長していく、まさにその「瞬間」を直接見ることができました。それは、筆者自身にとっても非常に貴重な経験となりましたし、ここで見た子どもたちの表情を忘れることはないと思います。
参加することで、子どもたちが心身ともに成長する機会を得ることができるのが、Euro J Jr.。この大会を運営してくださった主催者や関係者の方々、参加されたすべての選手、スタッフ、保護者の方々に、厚く感謝しています。どうもありがとうございました。
本当は、秋にスペインで行われる国際大会についてもレポートしたいのですが、息子はEU-JAPAN選抜のサブメンバーには選んでいただいたものの、本選抜メンバーではないため、スペインまで行くことは叶いませんでした。しかし、我らがサムライからは数名の選手が選ばれており、代表チームコーチを担うスタッフもいます。大会に参加するすべての選手たちおよびスタッフの方々の健闘を心から祈念し、ロンドンから応援しています!