「続ける」という才能を潰させない!
こんにちは、テキサスのサカパパ、japa-ricanです! 日本では学校の卒業式や所属チームの卒団式、その後の入学式など環境の変化が一気に押し寄せ、お子様たちはワクワクした気持ちとソワソワした気持ちが入り混じっているのではないでしょうか。それを見守るサカママ、サカパパの皆さんもまたどこか心落ち着かない心境でしょうか。私たちの役目は見守ること ― しかし、ただ見守るのも簡単ではないですよね (笑)。
アメリカの学校カレンダーは多くの地域で5月末が学年末になります。それにあわせてアメリカジュニアサッカーは春先から初夏の到来あたりまでが最も多忙な時期。9歳の息子も2月頃から5月末までほぼ毎週末、休みなくリーグ戦やカップ戦が組まれています。
そんな中、3月が始まってすぐ息子はインフルエンザにかかってしまい、その翌週に予定されていたカップ戦は病み上がりで挑むことに。高熱と頭痛がまるまる3日続き、嘔吐も伴ってしまったので体力も奪われてしまいました。不安を抱えたままでは自分らしいプレイができるはずもなく、楽しみにしていたカップ戦は3戦全敗であっけなく終了。
たとえ練習試合でも負ければ過呼吸になるほど泣きじゃくる負けず嫌いな息子も、今回ばかりは控えめにうっすら涙を流すだけ。私はこうなるだろうと予想していたので試合後の息子のメンタルケアを準備していたのですが、生粋の負けず嫌いの熱血コロンビア人コーチは黙っていませんでした。
今回のコラムでは、ジュニアユースを前に7割の少年少女たちが競技を辞めてしまうアメリカジュニアサッカーの現場において、「続ける」ことそのものが才能だということ、そしてその才能を潰されないように子どもたちをどう守っていくかについて考えてみたいと思います。
「僕だって一生懸命やってるんだ! 黙っててくれ!」と叫ぶ息子
カップ戦の話に戻ります。この日は2日目。初日に2連敗をしたものの、次の試合に3点差以上で勝利すればグループリーグを2位で突破できることもあり、息子もチームメイトも熱血コーチも気合は十分でした。ジュニアサッカーでは3点差での勝利はよくあることです。
対戦相手はダラスのU-9カテゴリーでは有名な強豪チーム。試合開始から10分ほどは一進一退の攻防。入りは悪くなかったのですが、相手に先制点を許す展開になりました。
ジュニアサッカーでは失点直後に気持ちを立て直せず一気に失点が続いてしまうことがよく見られますが、息子たちはその悪い流れにもっていかれることなく同点のチャンスを伺っていました。すると、この日1トップで起用され、ハーフウェーラインで待つ息子へ一本の縦パスが入り、キーパーと1対1の状況へ。
絶好の得点チャンス。失点直後だったこともあり、ここで同点になればチームの士気は爆上がりだったでしょう。しかし、一見簡単に得点できそうなキーパーとの1対1の状況は、サッカー経験者なら共感していただけると思いますが、意外に難しいものなんです。
お世辞にも速いとは言えない息子のスピードと病み上がりで体調が万全でないことで弱気になってしまったのか、はたまた後ろから猛追してくる相手への焦りからシュートを慌ててしまったのか。結局、遠藤選手のコロコロPK並みのシュートとなってしまい、絶好の得点チャンスは水の泡。同点ゴールを期待した全員のため息がピッチ上を覆う中、ベンチから熱血コーチの怒号が息子めがけて飛んできました。
「WHAT ARE YOU DOING !? (何しとんじゃぁぁーー!)」と怒号を飛ばすコーチ
アメリカジュニアサッカーではVeoという自動録画カメラが普及しており(Veoの説明は私のブログでご覧いただけます)、息子の試合もすべて自動的に動画撮影されているのですが、この息子の豪快なシュートミスの瞬間も、その後のコーチの息子に対する怒号も、ミス直後に息子が号泣しながら交代させられている場面もすべて記録されていました。
いつも娘たちと留守番をしながらVeoのライブ中継を通して息子の試合を観戦している妻も、今回ばかりはこのコーチの対応にご立腹。私も帰宅後見返しましたが、確かにU-9のジュニアサッカーでこの対応はいかがなものかと(笑)。
そしてもっと衝撃だったのは、このコーチの怒号と交代命令に対して、息子が鬼の形相で「I'm trying my best! Stop yelling at me! (僕だって一生懸命やってるんだ! 黙っててくれ!)」と言い返しながらベンチに下がっていたこと。9歳のジャパニーズアメリカンが元年代別アメリカ代表選手の熱血コロンビア人コーチに負けじと言い返せるのか、と感心するやらハラハラするやら。
コーチの苦言に対して言い返すことが良いかどうかは別として、私は息子の心の叫びには共感できました。高校生ならともかく、9歳の子どもが一生懸命やって結果的に上手くいかなかったプレイに対して、コーチが感情的に叱責し、ミスした罰として即時交代させることにどんな意味があるのでしょうか。コーチの意図が何であったにせよ、息子がこの経験を通して涙と共に痛感したのは「ミスをしたら怒られる」ということだったに違いありません。
残念ながらこの瞬間息子の心は折れてしまったのか、その後はフィールドに戻されてもプレイに関与することは少なくなり、後半も半分以上ベンチで過ごして、チームは0-2で敗戦。3戦全敗で今回のカップ戦は終了しました。
13~14歳頃までに7割近くの少年少女たちがサッカーを辞めてしまうアメリカ
初回のコラム投稿でアメリカのサッカー人気についてご紹介した時にもふれましたが、この国でサッカーは子どもたちが最初に始めるスポーツとしてアメフトやバスケットボールよりも人気があります。同時に、別の統計では13~14歳頃までに7割近くのサッカー少年少女たちが競技を辞めてしまうという現実があるようです。
原因はいろいろありますが、指導者や親からの過度の声かけによる精神的負担に耐えられない、あるいは燃え尽きてしまうというのが一番の理由のようです。
カップ戦前にインフルエンザにかかり、万全の体調で試合に臨めなかった上に、大好きで信頼しているコーチから自分でも理解しているミスを試合中も試合後も罵倒されたことは、息子の心に大きくのしかかったことでしょう。肩を落としてフィールドを後にし、帰りの1時間のドライブでは一言も発することなく家路につくこととなりました。
そんな中、私は以前に妻がこんなことを言ったのを思い出していました。
「メッシより上手い選手も才能を持った選手もきっといたんだろうけど、みんな途中で辞めちゃったんだろうね。メッシは続けたから世界一になったんじゃない?」
毎週末、広大なグラウンドを埋め尽くすほど集まるプレーヤーとそのご家族たちを見ていて、いつも考えさせられます。このうち何人がこれからもサッカーを大好きなままでいて、大きなケガもせずに、高いモチベーションを保ったまま競技を続けていくのだろうか、と。
身体能力の高い子は、注目される、モテる、将来が華々しいという理由でアメリカの花形スポーツに移行してしまう可能性が高いですし、そうでなくても挫折、プレッシャー、燃え尽き、コーチやチームメイトとの軋轢、あらゆる誘惑、興味の移り変わり、ケガなどなど、サッカーを途中で辞める理由は他にいくらでもあります。
そう考えると、競技を「続けていくこと」それだけでひとつの才能であり運なのではないでしょうか。さらにいえば、ただなんとなく続けるのではなく、サッカーが大好きなまま、サッカーに熱中したまま続けていくことがどれだけ難しいことかは、沢山の悔しさと挫折を味わった自分自身の経験から痛いほどわかります。
同時にこれは視点を変えれば、続けていくだけで競争相手は自然にどんどん減っていくということも意味します。サッカーで上を目指したい! と子どもが言い出した時、どうしてもスキルや体格、身体能力、サッカーIQなどの競争を真っ先に考えがちですが、それはサッカーを好きでい続ける競争でもあるんですね。
だからこそ、現在9歳の息子には「サッカー大好き!」「サッカー楽しい!」その気持ちさえあれば今は十分だと私は思っています。息子のその気持ちを最優先にしながら、それを軸に環境、チーム、コーチ、関わり方、声のかけ方を考えていく。。。それが今の私の方針です。
本気で上を目指そうとしたら、サッカー人生はまだまだ長い。まだたったの9歳。焦らない、せかさない、急ぎすぎない、「サッカー大好き!」の気持ちを一番大切にする。。。日々自分にそう言い聞かせています。息子の熱血コーチもそれくらい落ち着いて、長い目を持って子どもたちを指導してほしいものです。
ちなみにこの敗戦後、翌週のチーム練習では、息子は何事もなかったかのようにフィールドに向かって一目散にかけだし、いつものようにコーチの後ろを嬉しそうにくっついて回っていました。子どもっていいですね。彼らの心のおおらかさは、広大なテキサスの青空のようです。
私が10歳で地元の少年団を通じてサッカーに出会ってから30年以上経ちました。現役選手としてサッカーと本気で向き合っていた最後の数年間はケガや挫折、焦りなどでとても苦しい時間でした。でも長い時間を経て、今またこうして「サッカー面白い!」「サッカー大好き!」という小学生の時に感じていた原点に戻ってきていることに気付かされ、本当に幸せなことだと感じています。
息子にも、サッカーに魅了されているすべての少年少女たちにも、ずっとサッカーを好きでいてほしい、それをくじこうとするものから守られてピュアな情熱をもったまま成長していってほしい、そう願わずにいられません。