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アメリカで学ぶ、勝利への圧倒的な熱量

アメリカで学ぶ、勝利への圧倒的な熱量

テキサスのサカパパjapa-ricanです!
9歳の誕生日を迎えたばかりの息子は、1月中旬にテキサスの州都オースティンで開催されたU-9のカップ戦に出場しました。これまでは私たちが住むダラス周辺での大会参加が多かったのですが、今回は初めての遠征試合。2泊3日で片道300kmの大移動です。

テキサス州だけで日本国土の倍近くあるため、これくらいの移動はアメリカでサッカーをしていくためには避けて通れません。試合のあった週末は寒波の襲来で大変冷え込み、何試合かは氷点下の寒さのなか行われましたが、息子を含めチームメイトたちは気合い満々。結果は見事に優勝! 「絶対に勝つんだ」という気持ちが伝わってくる試合内容でした。

私のコラム回では、アメリカジュニアサッカーの魅力と、驚きや発見に満ちた日々の様子をサッカー大好きパパ目線でお伝えしたいと思っています。今回は「勝利への熱量」についてです。

ジュニア年代で重視すること

アメリカジュニアサッカーの世界に足を踏み入れて5年が経ちますが、ボールを扱う技術に関していうと、日本のサッカー少年少女たちのほうがこちらの子どもたちよりも圧倒的に優れていると感じます。

9歳になった息子のリフティング最高記録は77回。これで全米の中でもレベルが高いといわれている地域の、しかも強豪チームの最高記録ですから、日本にいる同じ年頃のお子さんたちが千回超のリフティングをしている動画に息子は度肝を抜かれています。

リフティングに限らず、SNSを通して見る、今の日本のジュニア年代のボールを扱う技術の高さには目を見張るものがあり、私の周りでも少しずつ認知され始めているようです。

今息子がお世話になっている指導者は、初対面で私たちが日本人とわかるやいなや、息子のプレーを見ずに「He must be technical.(この子はテクニックがあるだろ?)」と言いました。チームメイトにも、日本のサッカーYouTuberを見て自主練習をしている子がいます。

一方、日本人である私と息子は、「勝利への半端ない熱量」を日々アメリカジュニアサッカーから学んでいます。

3歳半で息子がサッカーを始めてから最近まで、私は息子の試合の勝敗をほとんど気に留めていませんでした。
勝っても内容的に良くないならその勝ちには大した意味はないし、負けても成長が確認できるプレーがたくさんあればいいという考えを貫いてきました。そしてジュニア年代では、同じような考え方をする指導者に息子を預けたいと思っていました。

しかし、最近その考えを修正し始めています。

「サッカーおもしろくない」と呟いたあの日

息子が6-7歳の時に所属していた前チームの指導者は、プレーの質と試合内容にしか興味がない人でした。U-7からポジショナルサッカー(選手が特定の場所でボールを保持し、相手の守備の隙間を狙ってパスや動きで攻撃を組み立てる戦い方)を体現しようとする人で、各ポジションでの適切な動き方を徹底的に教え込み、パスは絶対に浮かすな、というのが口癖でした。

試合内容だけを見て勝ち負けには見向きもせず、たとえ大敗しようとも、「対戦相手のようにキックボール(向かってくるボールをひたすら強く蹴り返すこと)をして勝つくらいなら、私の教えるサッカーで負けたほうが意味がある」と言い切る人でした。

この指導者の哲学、指導内容は、学ぶことは多かったのですが、このチームの最後のシーズン、息子は一勝もできず、一点も取れずに終了しました。ボールを浮かすと注意されるので、力いっぱいシュートを打つことさえできなくなっていました。

当時7歳の息子の口から初めて「サッカーおもしろくない」という言葉が出た時、これはすぐにでも環境を変えなくては!! と身につまされ、真剣に新チーム探しを始めた結果出会ったのが今の指導者です。

現チームの指導者はU-17, U-20のアメリカ代表に選出されたことがあり、ヨーロッパでのプロキャリアがある方です。しかし、このような経歴よりももっと圧倒的なのは、この人が生粋の負けず嫌いであること。もちろん子どもたちにプレーの質は求めますが、それ以上にこの一試合に、そして目の前の相手に、「なにがなんでも勝ちたい!」という気持ちをもってプレーしているかどうかを重視します。

練習でも試合でも、子どもたちを後押しするアツい声かけが止まることはありません。競り合う場面では「絶対に奪い取れ!」「絶対に取られるな!」「 ¡Eso!(スペイン語でそれだ!! いけ!! という意味)」と、まるで自分がプレーをしているかのような気持ちの入りよう。レフリーがあからさまなミスジャッジをしようものなら猛抗議、今までこのコーチに対する何枚のイエローカードを見てきたことか。

アメリカジュニアサッカーは勝ちへの熱量がすごい!

でもこのコーチ、決して勝利至上主義者ではありません。指導者としての自分の評判を上げたいから勝利に貪欲なのでもありません。ただただ純粋に勝ちたいのです、負けたくないのです。

ですからボールを扱う技術があろうとなかろうと、どの子どもに対しても「勝利に向けてどれだけ頑張っているか」を基準に声かけをしますし、気持ちのこもったプレーは手放しで褒めます。
逆にどんなに華麗なフェイントを披露しようとも、ボールを一生懸命追いかけなかったり、奪われたボールを必死で取り返そうとしないときにはすぐに交代させられます(アメリカジュニアサッカーでは何回でも交代できるので、ベンチで気持ちを切り替えてからもう一度フィールドに戻ることができます)。

この指導者の下、息子は見違えるようにイキイキとフィールドで自分を表現していくようになりました。フィジカルで劣る純アジア人の息子がアフリカ系やヒスパニック系の子どもたちを一心不乱に猛追し、体をぶつけ、何度フィールドに倒されても起き上がる。試合に勝てば大喜び、負ければ周りがあっけにとられるほど泣きじゃくる…そんな息子の変化を見ながら気付かされたのは、「勝ちたい - それこそが今の息子の本心なのだ」ということでした。

アメリカジュニアサッカー少年少女たちの多くは「上手くなりたい」より、まずは「目の前の相手に、チームに勝ちたい」という気持ちでプレーしているのかもしれません。「試合をする以上、絶対に勝ちにいこう」- 勝利にとことん貪欲なアメリカジュニアサッカーの現場は、私にサッカーという競技の本質を思い出させてくれました。

勝つことに一生懸命になれる文化

アメリカの人たちは、勝負事となると子どもでも大人でもとにかく真剣です。たわいのないゲームであっても、それこそホームパーティーのゲームであろうと真剣そのもの。そして勝ったときの喜びようといったらすごいです。

もちろんそれがジュニアスポーツに悪影響を及ぼす可能性は大いにありますし、大人げないと言ってしまえばそれまでなのですが、「勝利のために全力を尽くす」ことを褒めたたえる文化が根付いていることは確かです。

今の自分の実力がどうであれ、全身全霊で勝負に挑むチャレンジャーがアメリカ人は大好きなのです。ジャパニーズアメリカンの息子は、この地で、そしてこのパッションの塊であるコーチの下で、勝利への執念とは何なのかを学んでいるように思います。

ジュニア年代においては勝ち負けよりも大切にしなければいけないことがある、という指針は私の中で今でも変わりません。
変わったのは「だから勝敗はどうでもいい」という考え方から、サッカー選手であれば必ず持ち合わせていなければならない「なにがなんでも勝つ」という熱量を、このジュニア年代から育てていくこともものすごく重要なんだ、と考え始めた点です。

アメリカジュニアサッカーは「勝ちたい」という熱量を持った子どもたち、指導者、そして保護者たちが集まる熱い環境でもあります。

WRITER PROFILE

japa-rican
japa-rican

アメリカ テキサス州ダラス郊外在住。3人の小学生の父親。
日本で生まれ育ち、プロサッカー選手を目指して高校時代に2度全国大会に出場するも、膝の大怪我で夢は叶わずその後渡米。アメリカ生まれの長男は3歳でサッカーを始めて現在U-9クラブチームに在籍。ジャパニーズ アメリカンである息子を見守りながら、驚きや発見の連続であるアメリカ ジュニアサッカーについてブログで発信中
⚽日本人親子のアメリカ サッカー記⚽

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