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最高のプレイができる状態「フロー」は子どもでも起こりうるのか?

最高のプレイができる状態「フロー」は子どもでも起こりうるのか?

サカママコラムをご覧の皆さま、こんにちは。2025年もコラムを書かせていただくことになりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

みなさんは「ゾーン」「フロー」といった言葉はご存じですか? 今回は最高のパフォーマンスが生まれる心理状態「フロー」について、我が子の経験も踏まえながら書いてみました。簡単に生まれるものではありませんが、少しでも誰かのフローを生み出すヒントになれば嬉しいです!

フローとは結局何だろう?

プロスポーツ選手が試合後のインタビューで、「ボールが止まって見えた」とか「体が勝手に動いた」などと言うことがありますよね。自分の思い通り最高のパフォーマンスができる状態の時の感覚らしく、「フロー」や「ゾーン」と呼ばれています。今回はフローという言葉を使いますが、ゾーンも同じような意味だと思っていただいて大丈夫です。
スポーツにおけるフローとは簡単に言えば「目の前の活動に完全に夢中になり、ハイパフォーマンスを発揮している状態」です。周りから見たら、普段以上の素晴らしいプレイ、驚くようなハイパフォーマンスとして目に留まります。

ここで大事なのは、フローはプレイしている本人が主観的に感じるものだという点です。フローだったのかどうかは、プレイ後に本人に聞かなくては分からないということですね。

具体的にどんな状態がフローなのか?

ある論文によると、プレイ中のフロー状態には、6つの要素があるようです。(※1)

プレイ中のフロー状態の6要素

①動きの自動化
何も考えずに体が面白いように動く

②有能感
プラス思考で、たとえ何かが起きても対処できる自信があり、負ける気がしない

③コントロール感
自分の思考や行動をしっかりコントロールできている感覚がある

④明確なフィードバック
焦ることなく冷静に自分のパフォーマンスを分析することができている

⑤注意の集中
他のことに意識がそれず、やるべきこと以外は何も頭に浮かばない

⑥スピード感
スピードが今まで以上に出ている。または時間の進み方がスローモーションのように感じる

 

フロー状態になるための準備は?

プレイ中の状態は分かっても、「じゃあどうやったらそのフロー状態に入れるのか」、その方法が最も気になる点ですよね。できるものなら、毎回フロー状態になりたいでしょうから。でも6要素を見ただけでも、すべてそろうのは難しそうだなと思います。

加えて、そもそもフローはプレイ中に自分で入ろうと思って入れるものではなく、基本は“事前準備”のほうが大事だということもいわれています。たしかに、「試合前の準備がすべて」とか、「試合前のメンタルの整えが肝心」といった発言をしている有名選手は多いですよね。まさに、準備の段階で勝負は決まっているということなのでしょう。

フローを生み出すための準備の3要素

①良好な心理的コンディショニング
明確なプランを立て、何度も練習して自信をつけておく。良いイメージと適度な緊張感で集中力を高めておく

②リラックス
肩の力は抜け、自分らしく落ち着いて臨もうと感じている

③良好な身体コンディションの認知
体のコンディションがとても良い、体が軽いと感じている

子どもでもフローはあり得るのか?

ある時、次男が練習試合後にこんな発言をして驚いたことがありました。

「全部自分の思った通りにできる気がした」

たしかに、その日のプレイは外から見ても目を見張るものがあり、シュートを打てば入る、パスを出せば通る、そんな圧巻プレイの連続でした。本人の証言も合わせてまさしくフロー状態だったと思います。残念ながらその過去1回だけなのですが、だからこそ滅多に起こらない、ただ調子がよかったレベルではないハイパフォーマンスだったと断言できます。

いったいなぜこの日にフロー状態が生まれたのか、「準備の3要素」を参考に、その時のことを振り返ってみました。

①良好な心理的コンディショニング

実はその練習試合の前日、初めて「プライベートレッスン」を受けていました。体の動き一つひとつを見て細かくアドバイスをもらっており、こんなに丁寧にじっくり1対1で指導してもらうのは初めてだったと思います。何度も繰り返しシュート練習し、課題や改善点も明確になり、本人も手ごたえを感じていました。

これがまさに、次の日の「良いイメージ」につながっていたのだと思います。また当日も、初めて行く場所、初めて戦う有名強豪チームと、初めて尽くしだったことも適度な緊張感が生まれ良い心の準備につながっていたと思います。

②リラックス

本人は「楽しみ」「ワクワク」という気持ちで、普段通りリラックスしていました。ただ、チームの空気はピリッと引き締まっていて、リラックスと緊張のバランスが最適だったのかなと思います。

③良好な身体コンディションの認知

ケガや病気もなく、コンディション面に何も不安が無い時期でした。本人の体も軽そうでした。

試合中の「フロー状態の6要素」については、本人の感覚によるものなのではっきりとは分かりません。ただ、終わった後の「全部自分の思った通りにできる気がした」という発言には、➀動きの自動化➁有能感③コントロール感④明確なフィードバック⑤注意の集中⑥スピード感のすべてが詰まっていたような気がします。

本当に親もびっくりするようなハイパフォーマンスだったので、チームのコーチやプライベートレッスンをしてくれたコーチにも「いわゆるフローだったかも」と報告をさせていただきました。このモードがずっと続けばいいのですが…まぁそんなにうまくいくはずもなく。もう長いことフローにはお目にかかれていません(涙)。ただ、子どもでもフロー状態に入ることは十分あり得るということに気づかせてくれた貴重な経験でした。

親ができるサポートは事前準備

「フロー状態は事前準備の部分が大きい」という話であれば、親でもサポートしてあげられる面がありそうですよね。例えば、準備②リラックスに関しては、「普段通りで大丈夫!」と声をかけたり、笑顔で家を送り出したり、親の些細な気配りで子どもの気持ちをリラックスさせてあげられると思います。

準備③体のコンディションに関しては、特に親がサポートできる部分ですね。食事や睡眠など生活習慣のバックアップは、子どもが元気に体を動かすための基盤です。準備段階で親ができる範囲でサポートをしたら、残りのプレイ中の要素は本人やチームにお任せしましょう! いつかフローが生まれる瞬間があるかもしれませんよ。

私も、またいつかフローを見せてくれる日がくるといいなぁと願いつつ、限りあるサカママライフ、引き続き楽しみたいと思います! 最後までお読みいただきありがとうございました。

▽参考文献

(※1)杉山卓也(2019)「スポーツにおけるフロー状態とその直前の心理状態 の関連に関する研究 : 共分散構造分析を用いて」 

WRITER PROFILE

まりこ
まりこ

臨床心理士/公認心理師
オフィスkahunaカウンセラー
14歳と11歳のサッカー兄弟のママ。サカママ歴12年。
長男はおっとりマイペースに地域の街クラブでサッカーを楽しみ、次男は強烈な負けず嫌いを生かし強豪クラブで切磋琢磨。心理の専門知識が役立った経験を踏まえ、実体験や失敗も絡めながら情報を発信します。
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