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サッカーで起こり得る接触プレー「ノーマルフットボールコンタクト」

今回は皆さんが最近よく耳にする「ノーマルフットボールコンタクト」について解説したいと思います。

「ノーマルフットボールコンタクト」とは

簡単に言えば、サッカーで起こり得る接触プレーであり、ファウルとしない接触です。例えば、攻撃側の選手がゴール前のスペースでボールをもらおうと動いた時、マークしていた守備側の選手がボールを見ながら下がってきて、攻撃側の選手の足に引っかかって倒れ、結果的にその選手がシュートしゴールを許すような状況です。
攻撃側の選手は足を掛けようとしたり、体や手などで押したりしていなければ、その接触は不正なプレーで起こったわけではありません。ただ、守備側の選手が倒れてゴールを許したことが大きくクローズアップされて何かあったのではないかと思うシーンです。審判も、その接触で倒れたところだけを見ているとファウルかどうか迷ってしまうことになります。どうして倒れたのか、それには、その接触の前の動きを見ていることが大切になります。ボールだけではなく、競り合いの全体を見たり、予測するためには、視野を広げるポジションをとるか、視点をこまめに速く動かす意識が求められます。

サッカーは身体接触が許されています。フットボール(サッカー)が期待するプレーは何かということも言われますが、選手がアンフェアな方法でなくボールに正しくプレーしようとしているのかを審判は見極めようとしています。

接触があって倒れても、笛がなるまでプレーを

古い話しですが、1992年の競技規則には次のようなことが示されています。

「競技規則は競技ができるだけ停止されることなく行われることを意図している。この意味で、故意の違反に対してのみ罰則を適用するのが主審の任務である。些細なことや違反かどうか疑わしいプレーに対して絶えず笛を吹けば、競技者は感情を害し平静を失い、また観客の興味を損なうことになる。」

故意の違反という言葉は現在は使われていませんが、選手の動きから意図を読み取ることが重要であることに変わりありません。

さらに、1992年バルセロナオリンピック大会における「審判への指示およびチームの監督・選手に関わる決定の覚書」には、

「サッカーは激しい闘争的なスポーツである。ボールの奪い合いはフェアで紳士的に行われなければならないが、こうした態度で奪い合いが行われる限り、かなり強く激しいものであっても主審はそれを認めなければならない。しかしながら、著しく不正なプレーや乱暴な行為は厳しく禁じられており、主審はこれらに対しては競技規則を厳格に適用して対処しなければならない。」

と記されています。紳士的という表現も、反スポーツ的行為と変わってきていますが、基本的な考え方は同じです。

2019/20の競技規則では、競技者が相手競技者に対して、不用意に、無謀に、または過剰な力で犯したと主審が判断した場合、反則としています。不用意とは、競技者が相手に挑むとき注意や配慮が欠けていると判断される、または、慎重さを欠いてプレーを行うことであると示されています。注意、配慮を欠いているかを、動き全体で判断することになります。

選手は接触があって倒れても、笛がなるまでプレーを続けてほしいです。

WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。