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日本語と英語、だけじゃない。海外でサッカーをすることで感じる言葉の壁

日本語と英語、だけじゃない。海外でサッカーをすることで感じる言葉の壁

新年度、新シーズンのはじまり!

長かった夏休みが終わり、イギリスでは9月が新年度のスタート。現地校に通う筆者の息子はYear 6となり、Primary School(小学校)の最高学年となりました。イギリスに来た時にはYear 1だった息子がこんなに大きくなったのか、と新年度初日に登校する息子の後ろ姿を見て、なんだかジーンとしてしまいました。

学校の新年度と同じく、イギリスではサッカーのシーズンも9月から始まります。各年代のカテゴリーがひとつ上がり、コーチやメンバーが入れ替わることも少なくありません。
息子の所属チームであり、筆者もスタッフとして働いているチームには、我が家がそうであるように、日本人駐在員のお子さんが多く在籍しています。夏休みなどの長期休暇中に日本に本帰国、または日本から渡英されるご家庭も多く、いくつかのカテゴリーで選手の出入りがありました。

「夏休みに渡英したばかりでまだ学校も決まっていないけれど、子どもが『早くサッカーをしたい』というので、まずはサッカーチームを探しました」
と、お子さんを練習に連れてきてくださった親御さんがいらっしゃいました。そういったお声を聞くと、サッカーチームがそのお子さん、ひいてはご家族にとっての、ロンドン生活の拠りどころとなればいいな、と感じます。

言語の壁は選手同士で助け合う

新しい選手、特に日本から来たばかりの選手がチームに加入すると、選手自身もご両親も、言語(英語)の問題を不安に感じる方がいらっしゃいます。今は日本でも小学校から英語が必須科目になっているとはいえ、やはり英語圏で実際に生活するとなると、不安を感じるのは当然のこと。我が家も渡英したばかりの頃は不安だらけでした。

うちのチームは選手もコーチも約8割が日本人ですが、もちろんローカルの選手もコーチもいます。また、「ローカル」とひとことで言っても、ここは超多文化共生の街ロンドン。

さまざまな国籍や人種の選手がいるため、日英以外の言語を第一言語とする子もいます。
コーチから選手への指導は日英両言語で行いますが、コーチの中にはあまり英語が得意でない人もいます(筆者もその一人です…)。また、現地人コーチの場合は、そのカテゴリーの選手が全員日本人であっても、当然ながら英語での指導となります。

そうした場合には、日本人のコーチと二人体制で指導を行う場合もありますが、日英両言語を理解できる子が自主的に通訳してくれる場合が多いです。子ども同士でわからないところを補い合い、助け合うことは、チームワーク構築にも役立っているのではないかと思います。

反対に、両親ともに日本人の選手であっても、日本語がうまく伝わらないことがあります。というのも、イギリスで生まれ育っているなどの理由で、日本語よりも英語が優位になっている子がいるからです。つまり、日本語と英語、両言語への理解度が個々人によって大きく異なっているのです。

・日本語しか理解できない子
・ある程度の日本語は理解できるが英語が圧倒的に優位な子
・日本語と英語両方を理解できる子
・英語しか理解できない子
・英語も日本語も理解できない子

大きく分けてもこの5つがあり、それぞれの言語理解度はまさに千差万別。渡英したばかりの子と在英期間の長い子では、英語に対する理解度が違うのは当然のことですし、反対に、在英期間が長くなればなるほど、日本語を忘れていってしまう子もいます。
在英5年目となる筆者の息子も、日本語よりも英語が強いです。家庭内ではもちろん日本語で会話を交わしますが、彼はずっと現地校通いで、日常生活の半分以上の時間を英語環境の中で過ごしているので、仕方のないことではあります(ちなみに、‟ルー語“的会話もしょっちゅうです)。

それでも、息子はチームの中では割と日英両言語をよく理解しているほうなので、彼が通訳の役割を果たしている場面もよくありました。渡英したばかりの頃はチームメイトに助けてもらっていましたが、今は息子が仲間をサポートする側にまわっていることを嬉しく感じています。

もうひとつの言葉の壁

また、言語の問題だけでなく、サッカーで使われる表現に対する理解度も異なり、練習中や試合中のコーチからの指示、選手同士の声掛けにも、ときに混乱が生じることがあります。

以前、息子たちの練習を見ていた際に、コーチが「仕掛けろ!」と日本語で声を掛けたことがありました。声を掛けられた選手は日本人なので「仕掛ける」という言葉は知っていたようです。しかし、その場面での「仕掛ける」が、具体的に何をすることなのかがわからなかった様子でした。
また、「“クリア”の意味がわからない」という子もいました。彼らは昨シーズンからサッカーをはじめ、それまでサッカー経験がなかったため、練習や試合の中で使われる特有のサッカー用語をよく知らなかったようです。

親がサッカーをしていたり、試合観戦が好きな場合は、日頃から一緒に練習したり試合を観る中でそうした言葉や表現を学ぶことができますが、そういうご家庭ばかりではありませんよね。

息子自らサッカー用語集を作成

そのことに気がついたとき、息子が日英両言語でのサッカー用語集を作り、チームメイトに配りました。
英語での意味(Definition)を書いているときにはなんの迷いもありませんでした。しかし、日本語の意味を書く際には、「これって日本語でどうやって説明すればいいの?」と私に尋ねたり、Google翻訳を使ったりと、四苦八苦。また、カタカナで発音を書きながら「ちょっと違うんだけど、これ以外に書きようがないなぁ」なんて頭を抱えていました。

そのときに息子が作った用語集の一部がこちらです。

本当のところ、一緒にサッカーをしていれば、細かい言葉の齟齬があっても指示や意思が通じることのほうが多いです。けれど、こうした用語集があっても損はないですし、少しはみんなの役に立っていればいいなと思います。
親としては、チームメイトとのコミュニケーションに齟齬が起きていることに気づき、息子自ら考えて、調べて用語集を作った、ということに、彼の成長を感じました。

息子にとって、今シーズンがイギリスでサッカーをする最後のシーズンになりそうです。これまで以上に、チームメイトとともに楽しんでサッカーをしながら成長してほしいと願っています。

WRITER PROFILE

カリアゲしょうこ
カリアゲしょうこ

ガンバ大阪のホームタウン大阪府吹田市出身の元奈良県民。
ロンドン駐在5年目の一男一女の母。2024年The FA(イングランドサッカー協会) Level1ライセンス取得。
サッカースキルは初心者レベルながら「フットボールサムライアカデミー」で小学生女子チームのコーチを務める。息子やチームの子どもたちと一緒に成長していくロンドンでのフットボールライフの様子をお届け。インタビューライターとしても活動中。トレードマークはカリアゲヘア。

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