指導者目線で保護者にやってほしくないこと【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】
サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
今年度も残すところ、あと僅かとなってきました。卒業式を迎えた子ども達、またはこれから卒業式を迎える子ども達も多い時期でしょう。サカママの皆さまにとっても節目になる卒業式、これまでを振り返る良い時間になっているのではないでしょうか。
緊張と不安の面持ちで、自分よりも大きなランドセルを背負って学校に歩いていく子ども達。見えなくなるまでうしろ姿を見送り、その背中に不安とどこか逞しさを感じた小学1年生。自分の身長よりも大きなぶかぶかの制服を着て、新しい環境に飛び込んでいった中学1年生。
各ご家庭でたくさんの思い出があると思います。
私は目を閉じると、その時の光景、匂い、声、想い...懐かしい記憶が蘇ってきます。
節目となる卒業式、その時のその瞬間をぜひ、楽しんでください。
さて、今回はご質問をいただいた『指導者目線で保護者にやってほしいこと、やってほしくないこと』をテーマに、前編と後編の2回に分けて、サッカー指導を通じて感じたことをまとめていきたいと思います。
今回は後編『指導者目線で保護者にやってほしくないこと』についてです。後編も子ども達の成長を最大限に引き出すため、保護者の方々はぜひ参考にしてみてください。
大人の先回りは要注意!
前回の記事の中でもご紹介している内容とも重複していますが、親の立場になると、どうしても子どもの失敗を見たくないという想いになるものです。ですが大人の私達と同じように、子どもも自らが失敗をして身に付いていくことのほうが多いものです。
とはいえ、『自分で考えろ!』といっても考える基準がなければ考えることすら難しいものですから、年代に応じて段階的に自分で判断してできるように働き掛けていきたいところです。
子どもの荷物をすべて準備してしまったり、持ってあげてしまったり...大人の先回りは子どもの自立心を阻害してしまいます。例えば忘れ物があったときに、『忘れたのはあなたのせいでしょ?』と突き放せるくらいの余裕を持てると良いかもしれません。年代に応じて自己管理を促すほうが、長期的な視点で見ると子どもが成長していくものです。
「かわいい子には旅をさせよ」と言いますが、子どもが自分で生きる力を身に付けていくためにも、先回りをせずに方向を示してあげてほしいと思います。
チームへの過度な干渉
クラブやチームに子どもを預けている以上、サッカーの指導はコーチにお任せください。試合中の指導、選手起用や交代に対する不満もあるかもしれませんが、ここはぐっと堪えて子どもをサポートする側に回ってください。
試合、練習への介入は子ども達の自主性を奪い、指導者と保護者間の信頼関係を崩す原因ともなります。指導はコーチに任せて、保護者はサポート役に徹しましょう。
※それでもチームに問題があるケースがないとは言い切れませんから、それぞれの課題と状況を見極める必要もあるもしれません。
勝ち負けに一喜一憂する
勝敗のあるスポーツですから、指導するうえで勝ち負けに対しては強い意志を持って指導します。負けて良い試合は一つもありません。しかし、それと同時に結果だけを見て過程を無視してしまうと、良い習慣を身に付けさせることができないということも事実です。
勝ち負けだけですべてが決まってしまうと、〝適当な姿勢で臨んでいても勝てば良い〟〝一生懸命に取り組んでいるけど負けたら意味がない〟ということになってしまいます。勝利に対する強い想い、拘りは大切ですが、何が何でも勝てば良い、負けたら意味がないという姿勢、働き掛けばかりでは、まだまだ心も体も未熟な子どもにプレッシャーを与え、スポーツを楽しむ気持ちを失わせる可能性があるので注意が必要です。
他人の子と比較する
ご存じの通り、赤ちゃんが歩き始める時期に差があるように、子どもの成長にも個人差があります。頭では解っていても、親の立場になると同じ学年の子どもと比較をして見てしまいがちです。
お子さんに対して
『〇〇くんはもっとできるぞ!』
『〇〇くんはできているのに何でできないの?』
といった比較するようなことを口にしてしまっていませんか?
比較され続けてしまうことで、子どもは劣等感を抱き、自己肯定感を低下させてしまいます。チャレンジすることを恐れるようになり、モチベーションを下げてしまうこともあります。
心と体はアンバランスに成長していくので、個々の成長を見極めて一人ひとりに合わせたサポートを心掛けてください。
試合後の反省会
子ども達のサッカーの試合映像を家庭で振り返る機会があるかと思います。
子どものプレーに対してついつい熱くなってしまい、プレーについてあれこれと指摘をしてはいませんか? どうしてもミスをしてしまったこと、できないことに目がいってしまいがちですから注意が必要です。
映像を振り返ること自体は良いことだと思いますが、その時間をポジティブな時間にしてあげてください。家庭に帰ってまでミスや反省点についての指摘が続くようなことがあれば、サッカーに対して臆病になってしまうでしょう。最悪の場合は、サッカーを嫌いになってしまうこともあるかもしれません。
ぜひ、子ども達がポジティブになれるような時間にしてあげてください。
まとめ
『指導者目線で保護者にやってほしくないこと』についてまとめていきましたが、いかがでしたでしょうか?
私自身、我が子と関わるなかで、指導者としての目線と親としての目線が複雑に交差するようなことがあります。自分自身を振り返るようなことも少なくありません。
しかし、一番大切なことはサッカーを通して社会をより良く生きる力を身に付けさせてあげることだと思っています。そして、その先がサッカー選手としての未来につながっていれば幸せなことですし、たとえそうではなくても、そこに向かって努力して身に付けた力はきっと自分の生きる軸に育っていくはずです。
親になって、子ども達を通して学んできたことが多くあると思います。
その時々で思い通りにいかないこともあるかもしれませんが、、子ども達が与えてくれた幸せな時間をこれからも楽しんでください。