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おとなしい子は、サッカーに向かないの?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
今年も残すところ3カ月となりました。夏休みが終わり、子ども達の心と身体に成長が見られてきたところではないでしょうか。

さて、保護者の方から、「うちの子、声を出さなくて」「ボールを追いかけなくて……」といった相談を受けることがよくあります。サッカーは試合中に声を掛け合うことが多いスポーツですから、お子さんがおとなしいとアピールが足りないんじゃないか……と不安になられる方も多いのかと思います。そこで今回は、「おとなしい子は、サッカーに向かないの?」と題して、集団の中にいるとおとなしくなってしまったり、自分を表現できなくなってしまうお子さんの見守り方について考えていきたいと思います。

サッカー中におとなしくなるのには理由がある

 

幼少期は認められたい、自分を見て欲しいという思いが強い時期です。積極的に自己主張ができるお子さんは、やはりサッカーでも目立ちやすいです。保護者の方も、お子さんが積極的にドリブルを仕掛ける姿や、諦めずにボールを追いかける姿を見たい、という方が多いかもしれません。

一方で、積極的に仕掛けることもなく、あまりボールも追いかけることもない……そんな姿を見ると、「おとなしい」「消極的」と感じて心配になってしまう方もいるでしょう。しかし、私自身は、おとなしかったり消極的であることは成長過程の一つにすぎないと考えていますし、サッカー中におとなしくなってしまうのには、元の性格的なことだけではなく、他にも理由があると思っています。

「ミスしたらどうしよう」そんな不安で消極的になっているのかも

 

試合や練習中におとなしくなってしまう、そんな子はもしかすると『ミスしてしまったらどうしよう?』『上手くプレーできるかなぁ』といった不安を抱えているのかもしれません。その結果、自分を表現できずにおとなしくなってしまっているのだと思います。
家では陽気でうるさいのに、サッカーになると急におとなしくなってしまう子がいるのも、これが理由ではないかと思います。もともとおとなしいタイプの子もまた、こういった不安を感じてよりおとなしくなってしまうところがあるのでしょう。

おとなしくなってしまう理由にこういった不安があるならば、周囲の大人が「声出しができない」「積極的にいけていない」といった目に見えるプレーのことだけを指摘してしまうと、アドバイスをしているつもりでも、逆に子ども達はできていないことに対して劣等感を感じてしまいます。そうすると、自分を表現することをもっと恐れるようになってしまうかもしれません。

おとなしいとサッカーに不向きなのか?

そもそも、おとなしいことは悪いことなのでしょうか? 私自身は全くそう思いませんし、おとなしい子だからこそ、気が付けることもたくさんあると思うのです。例えば、おとなしい子は周囲の雰囲気を敏感に感じ取ったり、洞察力に優れていることが多いように感じます。この洞察力は、サッカーでも大切な力です。「どこにボールがくるかな?」「あの子はこんなことを考えていそうだな」などなど、今の状況を正確に把握する力は立派な武器になるのです。

また、おとなしい子は状況を見極めて慎重に行動する傾向があります。ですから、おとなしく見えても、実は頭の中でいろいろなことを考えているということも多いのです。こういった子達は、多少時間がかかっても必要なことはしっかりと身に付けていけるので、本人が行動に移すタイミングを待ってあげることも必要でしょう。

「うちの子は積極性がない……」なんて心配になるかもしれませんが、おとなしいからといってサッカーに向いていない、なんてことはないのです。むしろ、洞察力に優れていたり、よく考えて着実にステップを踏めるということはプラスの要素ですから、小さな自信を積み上げていけば、自分を表現することも自然とできるようになってくるはずです。

おとなしい子ども達にはどんな見守り方が必要?

 

それでは、おとなしい子ども達をどのように見守っていけば良いのでしょうか。ここでは、私が重要だと思うポイントを3つお伝えします。

まずは、子どもの声に耳を傾けてあげることです。子どもに積極性がないともどかしい気持ちになるのも分かります。ガンガン走って追いかければいいのに……と思ったり。でも、そんな時に「なんで走らないの!」「一人で前まで行けー!」と発破をかけても、子どもの自主性は育ちません。先にも述べたように、積極的にいかないのは自信がなかったり、色々と考えたうえでの判断かもしれません。少し冷静になって子どもに話を聞いてみると、本心が分かって新しい発見があるかもしれませんよ。

そして、次に大切なことは、ポジティブな働き掛けをすることです。「うちの子、○○君みたいに積極的ではないので……」といった感じで、友達や兄弟と比較した言葉を子どもが聞いていたら、どう感じるでしょうか? 『そう思われているんだ』『期待されていないな』と、自分を表現することをまた恐れてしまうかもしれません。おとなしい子が持っている洞察力や観察力など、ポジティブな部分を取り出して伝え、どうしたら行動に移せそうかを一緒に考えてみるといいかもしれません。

最後は、「サッカーが楽しい」という気持ちにさせてあげることです。「サッカーが楽しい」という気持ちがあれば、自然と「うまくなりたい」そして「負けたくない」といった気持ちも芽生えてくるはずです。そうすれば、積極性も次第に身につくのではないでしょうか。この、「楽しい→うまくなりたい→負けたくない」という段階を育ててあげられるといいですね。

大人は焦らず、子ども達のペースを見守ろう

 

“身体の成長”だけでなく、“心の成長”にも個人差があると思います。特に“心の成長”については目に見えることが少ないものですから、まずはその個人差を受け入れること、子ども達のペースを見守ってあげることでその後の成長も大きなものになってくるでしょう。

この連載を通して何度も書いていますが、「出来る・出来ない」といった結果に対する評価ではなく、「どのように取り組むべきなのか?」といった姿勢や立ち向かう勇気を育てていくことが大切だと思います。焦る気持ちも分かりますが、子ども達を信じて見守っていきましょう。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル