勝利を目指すこととフェアプレー【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】
サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
新年度がスタートしました。新しい環境にまだまだ慣れないことも多いかと思いますが、焦らずに日常を過ごしていくことから始めてみてください。目の前のことを1つずつクリアしていけば、きっと良い時間を過ごすことができると思います。
さて、新年度になり各カテゴリーでリーグ戦が開幕しているかと思います。育成年代のリーグ戦化に伴い、これまで以上に結果がクローズアップされるようになってきました。クラブとして上位リーグを目指すことは当たり前のことですが、同時に『フェアプレー』を目指すことも忘れてはいけないことです。そこで今回は『勝利を目指すこととフェアプレー』について考えていきたいと思います。
リーグ戦化の弊害
育成年代でもリーグ戦が定着してきました。トーナメントの一発勝負よりも、リーグ戦のほうが緊張感のある試合の中で、トライ&エラーを繰り返し経験できるという意味で非常に良い環境であると言えます。また各クラブが上位カテゴリーを目指して切磋琢磨するようになり、選手だけでなく指導者にとっても刺激の多い環境になってきたように思います。
一方でリーグ戦の定着は、上位カテゴリーに属することが1つの指標のようになってしまっているようなところもあります。上位カテゴリーにいること、勝ち続けることでクラブへの注目が集まり、入団希望者が増えるということもあるかもしれません。
リーグ戦の定着によって、どのリーグに属しているか? が1つの指標となり、良くも悪くもこれまで以上にクラブ間の競争が激しくなってきたように思います。
厳しくいくこととファウルは別物
実力が拮抗し、どちらが勝ってもおかしくないような試合が多くなってきたことで、球際の攻防、競り合いやコンタクトプレーも増えてくるものです。もちろんサッカーですから、球際の攻防や競り合いは当たり前のものですし、私自身も相手に対して厳しく立ち向かってほしいと思っています。
しかし、相手に対して〝厳しくいく〟というプレーは〝力任せに〟〝乱暴に〟相手に向かっていくというわけではありません。何をしても良いというわけではありませんよね。過剰な力を加えたり、ボールに関係のないところで接触したり、背後からのアタックなど、明らかに反則に該当するようなプレーは相手に怪我をさせることもあります。
また試合中、相手に対してリスペクトに欠ける〝発言〟や〝行動〟も見聞きすることがあります。これはサッカー以前の問題だと思います。相手を傷つけたり、相手を煽ったり…そういったアンフェアな振る舞いでマウントを取って優位に進めようとするやり方は、スポーツ選手である前に〝人〟として恥ずべき行為であると思います。
フェアプレー精神
フェアプレーの精神は、子どもたちだけでなく大人も大切にしなければなりません。概念的なところが多いので、私は3つのことを提示しています。
フェアプレーで大切な3つのこと
- ルールを守る、それを守ろうと努力する
- 相手に対するリスペクト
- 怪我がなく、安全に公平にプレーできること
それでも子どもたちは〝勝ちたい!〟〝負けたくない!〟という想いから、服を引っ張ってみたり、感情に任せて過剰な力で相手を押し倒してしまったりすることもあるかもしれません。もし、そういった場面に出会ったら、近くにいる大人が正してあげる必要があります。
間違っても大人がそのような行為を助長するような発言をしたり、振る舞いをしたりすれば、それは子どもたちにそのような行為を許していることになるので絶対にやめましょう。
拮抗した試合の中で相手に対して厳しくいくプレーが多くなってくるのは仕方がありません。しかし、厳しさをはき違えて、乱暴なプレーやそれを助長するように煽ったりするようなやり方は違うと思います。
まとめ
スマートフォンの普及に伴い、さまざまな情報が簡単に得られるようになってきました。インターネット媒体の増加によって試合結果についての情報も多くなり、より競争意識が高まってきたような気がしています。
勝負への拘りはとても大切なことですが、それが行き過ぎてしまうと、フェアプレーに反して試合が荒れてしまうことにもつながります。子どもたちは間違ってしまうこともありますが、大人がそれを許してしまうと、子どもたちは間違いに気付かずに成長していくことになります。
大人のサッカーでは、プロフェッショナルファウルという言葉もありますが、それで勝利したとしても倫理的なジレンマが残るでしょう。育成年代の子どもたちを預かる我々は、基準を示していかなければなりません。
皆さまはどのように考えますか? お子様と話をしてみてください。