子どもの気持ち、置いてけぼりになってない?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】 | サカママ メインコンテンツに移動

子どもの気持ち、置いてけぼりになってない?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは!大槻です。
3月は卒業シーズンですね。お子さんを近くでサポートし続けた全ての保護者の皆さま、卒業、卒団おめでとうございます! 学校生活だけでなくサッカークラブの活動も一区切りとなる方も多いのではないでしょうか。
親子で一緒にボールを追い掛けた日々、仲間と過ごした時間、嬉しかった試合、悔しかった試合、たくさんの思い出があるかと思います。いつか振り返った時にその時の思い出が支えてくれることがあるはずです。その思い出を胸に新しい一歩を踏み出してくださいね。

さて今回は、最近個人的に考えている「スポーツの早期専門化と低年齢化するセレクション」についてです。子どもが楽しくて始めたサッカーのはずが、時に周囲の大人が先走ってしまい、その気持ちが置いてけぼりになっているのではないかと思うのです。

低年齢化するスポーツの専門化

 

幼い頃から1つのスポーツに特化して練習を重ねていくことをスポーツの早期専門化と言います。スポーツの早期専門化は年々増えていると言われていますが、その背景にはいくつかの要因があるはずです。スポーツの商業化が進んだことや、社会の在り方の変化、メディアの影響が大きいのではないでしょうか。特にメディアは大きな影響力を持つようになってきたように感じています。SNSが普及して色々な情報が手に入りやすくなったことや、それにより幼いうちからメディアに取り上げられる選手が増えたことによって、子ども達だけでなく保護者の目線も変わってきているところがあるのかもしれません。

サッカーにおける早期専門化の問題

サッカーだけの話をすれば、幼い頃から同じ動作を繰り返すことは、ある一定の動作や技術の習得には優位に働く可能性があると思います。特に幼少期においては、技術面での優位性は非常に大きくなるでしょう。しかし、早期専門化によって子ども達を取り巻くサッカーの環境は多くの問題を抱えることになるのも事実です。

動作習得の偏り

あまりにもの早期に同じ動作を繰り返すだけになってしまうと、その動作には強くても他の動作には弱くなってしまうといった偏りが生じます。特にサッカーは全身運動です。ボールを足で扱うという特異性はありますが、複合的な身体操作がパフォーマンスの向上には必要不可欠です。
幼少期から様々な運動に触れていた子どもの方が、身体の成長が進むにつれて様々な身体操作ができるようになっていきます。技術的な要素を大切にしながらも、様々な運動や刺激に触れさせていくことが、サッカーのパフォーマンス向上にも繋がっていくのです。

★参考記事はこちら
サッカーやりすぎ!?上達のために必要なことって?
外遊びにサッカー上達のヒントあり!?

 

スポーツ障害のリスク

幼少期からの専門化は、その競技特有の同じ動作を繰り返すことになるので、負荷のかかる部位の怪我や慢性的な痛みが発生する可能性が高まります
また、幼少期からサッカーを専門的にトレーニングしているお子さんの保護者の方は、とても熱心な方の場合が多いです。「子どもがやりたがるので週7回の練習や試合をしています」をいう話も聞いたことがあります。練習とはまた違った友達同士の遊びながらのサッカーであればまだいいのですが、スクールの掛け持ちやチーム活動などで身体を休めることが出来ないお子さんもいるようです。発育発達段階に合わない練習方法や練習のやり過ぎは、怪我の危険性も高くなりますから注意しなければいけません。

燃え尽き症候群(バーンアウト)

そして最も注意していただきたいのが、子ども達の心の問題です。あまりにも早い段階から結果や競争を求められることで、心が疲れてしまう子ども達がいることも事実です。いわゆる「燃え尽き症候群」に陥ってしまう子ども達は、「上手くなりたい!」といった本人の自発的な感情よりも、外的な要因による圧力が掛かってしまっていることがほとんどだと思います。
勝ち負けや成果だけを常に求められて、結果が出なければ叱責され、映像を見て反省会…。そのような環境は大人にとっても負担ではありませんか? 子ども達が楽しくて始めたサッカーです。目先の結果や成功以上に、子ども達の気持ちを育てていくことの方がはるかに成長に繋がるものです。

低年齢化するセレクション

そして、近年は様々なクラブで低学年からセレクションを開催するようになってきました。各クラブも早いうちからタレントを獲得したいという意図があると思いますし、その是非について意見するつもりはありません。憧れのクラブ、目標とするクラブがあることは、子ども達のモチベーションに繋がりますし、チャレンジする気持ちはとても大切なことです。

しかし、そこを目指す子ども達や保護者の方には、どのような考え方でセレクションに臨むべきかを整理して欲しいとは思っています。まだまだ心も身体も未成熟な子どもですから、セレクションの意味すら理解していない子もいるかもしれません。だからこそ、「それは子どもが自ら臨んだチャレンジなのか? 大人の想いだけで物事が進んでしまっていないか?」ということを、しっかり考えて欲しいと思います。

そして、セレクションの結果がどうであれ、まずはチャレンジした姿勢を認めてあげて欲しいのです。試合もセレクションも結果が出るのは仕方がないことです。しかし、結果だけで物事を判断していては、最も大切な「一生懸命取り組む姿勢」は育ちません。サッカーを続けていれば、チャレンジしないといけない場面に何度も出会うはずです。そんな場面を乗り越えていくためにも、まずは取り組むことに意味があるんだということを教えてあげなければいけません。

「楽しくて始めたサッカー」を続けるために

 

保護者の方の中にはご自身もサッカー経験者だという方も少なくないと思います。自分にサッカーの経験があるからこそ、「自分はもっと練習していたよ!」とか、「自分の分も頑張ってほしい!」といった気持ちで、つい厳しく指導をしてしまうこともあるかもしれません。
でも、お子さんが楽しくて始めたサッカーです。赤ちゃんが歩き始めるのに差があるように、サッカーの上達にも個人差があって当たり前です。周囲の大人がそのことを理解してそれぞれの子ども達と向き合う必要があるのではないでしょうか。

結果に追われて、他人に比較され続けてサッカーをしても楽しくないですよね。子ども達が楽しくプレーを続けていくには、グラウンドの上だけに問題があるのではないかもしれません。

WRITER PROFILE

 大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー