SPECIAL INTERVIEW 長友佑都選手の専属シェフ 加藤超也さん
日本代表として、また現在はトルコの名門クラブ・ガラタサライで活躍する長友佑都選手。長友選手の専属シェフとなり、食事面をサポートしているのが加藤超也さんです。そんな加藤さんに、免疫力をつけるための食事のポイントなどあれこれ伺ってきました。今日から取り入れられることが満載です! 文/編集部 写真提供/株式会社Cuore
長友選手へ送ったダイレクトメッセージ 2ヶ月後にはサポートするように
――まずは、長友選手の専属シェフになったきっかけを教えてください。
「今から約3年前、僕が送った1通のダイレクトメッセージがきっかけです。当時、僕はイタリアンレストランに勤務しながら、食事でアスリートをサポートしたいと思い勉強をしている最中。普段、SNSを見る習慣はなかったのですが、たまたま終電で帰宅する途中、長友選手のSNSをみたんです。そこには、長友選手が食事にこだわっていることが書いてあって……。僕は、食に対して意識が高いアスリートをサポートしたいとずっと思っていたので、その気持ちを伝えたく、深夜だったのですがダイレクトメッセージを送りました。そしたら翌日、奇跡的に返信があったんです。
その後、長友選手と国際電話で話すことができて、僕の想いを一心に語りました。長友選手が帰国された時に料理試験を受けてOKをいただき、2ヶ月後にはイタリアに渡り、サポートをしてました」
――もともと、アスリートの食事に関心があったのですか?
「レストランのお客さんに横浜F・マリノスに所属していた中澤佑二さんがいらして、中澤さんの食事へのこだわりを目の当たりにし、僕はプロの料理人として、美味しく食べてもらうことは考えていたものの、食べたものが身体の中でどうなっていくのか、食事でどんなふうにコンディションが上がるかなど、何も理解していなかったことを恥ずかしく思ったんです。それからですね。身体のメカニズムや食材の知識を高めていくようになったのは。そんな中で、アスリートを専属シェフというかたちでサポートできれば、選手はもっとコンディションやパフォーマンスが上がるだろうし、僕自身も成長でき、それに食の力を世の中に発信できるんじゃないかと思うようになりました」
油脂は悪いものではなく良質な油脂はケガ予防にも
――長友選手の専属シェフとして、大切にしていることは何ですか?
「これまで長友選手は筋肉系のケガが多かったので、“ケガをしない身体づくり”をテーマにサポートしています。実際に、ケガが減りました。筋肉系のケガを予防するために食事でできることの一つは、良質な油あぶら脂を摂ることです。油脂は、スポーツ栄養学において、どうしても“悪”とされてしまうのですが、それは、酸化した油脂や古くなった油脂のこと。自転車のチェーンを想像してみてください。回転をよくしようとする時、真っ黒なオイルではなく、きれいなオイルを差しますよね。要はそれと同じで、子どもたちも日々サッカーをして、チェーンを回転させているような状態なので、良質な油脂を摂れば、身体のメンテナンスやケガ予防につながるということです。油脂=太ると思わず、良質な油脂を摂る習慣をつけてほしいですね」
――良質な油脂とは、具体的にどういったものですか?
「オリーブオイルやゴマ油、エゴマ油、アマニ油などです。サラダやソテーした魚・肉にオリーブオイルなどをかけるのでもいいですし、青魚やマグロ、サーモン、アボカドなどにも良質な油脂が含まれています。また、鶏肉なら、鶏むね肉よりも鶏もも肉をオススメします。できるだけ皮も食べてほしいですね。皮には、オリーブオイルと同じ脂肪酸が含まれているからです。唐揚げにして食べるなら、何度も使った油脂で揚げるのではなく、新しい油脂を使うこと。大切なのは酸化してない油脂を使うことなんです。例えばツナ缶も、水煮缶よりもオイル缶のほうがオイルでコーティングされている分、酸化してない状態が保てるので、僕はオススメしますね」
――良質な油脂を摂り入れる際、何か気をつけることはありますか?
「オリーブオイルは、180度ぐらいをキープしていると、どんどん酸化してしまうので、高温調理する時は、ゴマ油やバター、ラードを使うなど、使いわけするといいですね。エゴマ油やアマニ油は、ガス台の近くに置いておくと熱で酸化してしまうので、冷蔵庫で保存することが大切です」
――ちなみに、試合前や当日のお弁当などでも良質な油脂を摂るようにしたほうがいいですか?
「試合前や試合中は、とくに意識しなくてもいいと思います。それよりも良質な油脂を摂ってほしいのは試合の後です。試合後、身体は疲れていて、関節や筋肉、骨も含め通常よりマイナスの状態になっているので『リカバリーするために良質な油脂を身体に入れる』と考えて、素うどんにオリーブオイルをたらしたり、鶏もも肉や魚を食べるようにしてもらえればと。子どもたちは試合後にメンテナンスをしなくても翌日動けるのですが、良質な油脂を摂っておくことで、次の日より元気に試合に臨めると思います」
咀嚼回数や食事時間 基本的なことにも目をむけて
――免疫力を高めるために食事でできることってありますか?
「免疫力は腸と関係しているので、善玉菌を増やすことが大事だと思います。善玉菌を増やすにはオリゴ糖を摂るのがいいのですが、オリゴ糖は食材にも含まれているんです。代表的なものに、にんにく、玉ねぎ、ごぼう、アスパラガスなどがあるので、積極的にこれらの食材を使って調理してもらえれば。白砂糖で甘みをだすのではなく、玉ねぎを使って甘みをだすようにすれば、オリゴ糖も摂れるし、料理そのものも美味しくなると思いますね」
――最後に、サカママのみなさんにメッセージをお願いします。
「ジュニア世代をサポートするお母さんたちにとって一番大事なのは、愛情を込めて料理を作ることだと思います。当たり前って思うかもしれませんが、当たり前のことをやることが何よりも大切ですから。僕も長友選手に食事を作る時、その部分は大事にしています。どれだけいいものを食べても消化吸収できないと意味がないので、咀嚼回数を増やすことや、食事時間を5分でも長くとることも意識してもらえれば。長友選手も食事時間をなるべく長く設けて、ゆっくり噛んで食べることを意識していますからね。人は食べたものでできていて、コンディションがいい状態は、その前に食べたものの積み重ねでよくなっているものです。だからこそ、1日1回、会話をしながら愛情あるものを食べる―それを継続していくことが食事の原点として大切だと思います。」
加藤シェフからサカママへ!3つのアドバイス
Advice1.良質な脂を摂ることを習慣にしよう
良質な油脂とはオリーブオイル、ゴマ油、エゴマ油、アマニ油など。青魚やマグロ、サーモン、アボカドなどにも含まれているので1週間に1~2度摂るように。
Advice2.食材に含まれるオリゴ糖に注目
にんにく、玉ねぎ、ごぼう、アスパラガスなどにオリゴ糖が含まれているので、これらの食材を使った料理を摂り入れよう。
Advice3.試合の後は“五感”を刺激する料理を
試合後、食欲がない時は、スパイスを使った料理で五感を刺激するといいでしょう。中でも辛み、香り、旨みが詰まったカレーはオススメですよ!