メインコンテンツに移動

「子どもの試合が見られることに感謝すべき」風間八宏さんの育成論とは?(後編)

現役時代はサッカー日本代表として活躍し、引退後は指導者として様々なチームを率いた「育成のプロフェッショナル」である風間八宏さん。後編では、サカママオンラインフェスタのトークショーで語っていただいた、子どもへの期待やコミュニケーション、サッカーというスポーツについてなどをお届けします。

前編はこちら

自分を信じて、自分に期待してほしい。僕らが期待したところで伝わらない

-子どもがサッカーを辞めたいと言ってきたときに、親はどうすればいいでしょうか?

「サッカーに向いている子も向いていない子もいますから、辞めるなとは言わない方がいいと思いますね。そこから子どもの自由と判断を奪ってしまうと、好きなことも嫌いになってしまいます。色々なケースや事情があるでしょうけど、僕は子どもに自分で決めさせるべきだと思います。

なぜ辞めたいのか話は聞いて、親の意見を言ったとしても、最終的に決めるのは本人でなくてはいけないと思います。子どもも意思を持った1人の人間ですから。サッカーでなくても、例えば勉強をするために塾に行くとかでもいいですけど、子どもが他にやりたいことがあるのなら、それをできるだけサポートしてあげるのが親のもっとも大切な役目だと思います」

-風間さんは「子どもの才能に期待し過ぎないことが大切」とよく言われていますよね。

「僕は子どもたちに投げかけているのです。『俺は期待しないから、自分に期待しろ』と選手たちには言っています。自分はもっとできる、まだまだやっていないことがたくさんある、そんな風に自分を信じて、自分に期待してほしい。そういつも言っているのです。

そうしたら、自分で何をするべきか考えるようになる。そうなったら最高です。僕らが期待したところで伝わらないですよね。過度のプレッシャーになってしまうかもしれないですし」

-親も指導者も同じかもしれないですけど、子どもたちに後悔させたくないと思うあまり、先回りして、思わず口出しをしてしまうってことがあるような気がします。

「そうですね。サッカーというのは、そういう意味では難しいスポーツかもしれません。自由度が高くて、答えがないスポーツですから。監督が何を言っても、最終的には選手たちが自分で判断をしないといけません。こちらからは助けようがないのですよ。

それにこうしたら必ず上手くいくって答えはありませんし。その点がある程度シチュエーションが決まったスポーツと大きく違う部分でしょうね。決まった動きを数多くトレーニングすれば結果が出るスポーツもありますけど、サッカーの場合は自由に動き続けているわけですから。だからこそ、ある程度自由にさせないといけない。そして、いつもやる気がみなぎっているような環境にしてあげなきゃいけないと思います」

子どもが上手くやることを考えるより、試合を見させてもらえることに感謝すべき

-サッカーは人生のトレーニングに近いという話をよく聞くことがあります。何が起きるかわからないし、本当に答えがない。だから、親は子どもと同じ目線で一緒に考えてあげると、双方が成長できるのでしょうか。

「親として見るには、サッカーって難しいスポーツです。例えば野球なら1試合に3打席か4打席か必ず回ってくるじゃないですか。でもサッカーは、悪くすると試合中1度もボールに触れないなんてこともある。それでも親はしっかり見てあげなくてはいけないのですから。

だから、子どもが上手くやってくれることを考えるよりも、試合を見させてもらえることに感謝したらいいと思うのです。だって、子どものサッカーの試合を見るときほど、興奮するようなことって日常生活にないじゃないですか。成功してくれたら嬉しくて仕方がないですし、失敗したらすごく悲しいし。それを親子で一緒に楽しめるわけですから、 全部ひっくるめて今日は楽しみに来たと考えるのが一番だと思います」

-子どもとのコミュニケーションについて、何かアドバイスはありますか?

「伝えることも、あえて伝えないこともコミュニケーションだと思いますね。こちらから何か喋ることだけではなくて、向こうが喋ってくれるのが一番良いと思いますから。普通に力関係で言ったら、親の方が強いわけじゃないですか。それでも子どもたちの方から話を持ってきてくれたら、それが多分一番のコミュニケーションなのだと思います。そういうものを引き出せるような、雰囲気作りであったり、食事であったり、何か共通のものを持てばよいのではないでしょうか」

-あれこれ口出しをするより、子どもに任せるってことなのでしょうか?

「親も子どもも、お互い自分自身のことしかできませんから。自分が楽しくないと、周りも楽しくない。それは大人も子どもも同じだと思います。僕も自分のペースでやらせてもらって、家族にはそれを見てもらうって感じです」

-最後にメッセージをお願いします

「いろいろなことを自分たちの中で規制して、大変にならないようにして欲しいと思います。スポーツというものはすべて楽しいことが基本なので。僕自身、失敗したことはたくさんありますけど、 失敗したと言うことは楽しいことを知っているから。だから、もっと楽しもうと思っていつもやっています。皆さんもサッカーを通じて全員が楽しんで欲しいと思います」

Pick Up

走りが変われば、プレーが変わる!走力を伸ばすトレーニング

走力はトレーニングによって変わっていくもの。ここでは、サッカーの走りにつながるトレーニングをご紹介。回数をこなすより、一回でも“上手くできる”ことを意識して!

知っておきたい!サッカーで求められる走力とは?

サッカーにとって欠かせない「走る」という運動。実は、サッカーと一般的な走りには違いがあるって、知っていますか? サッカー選手に必要な走力について、アビスパ福岡でフィジカルコーチを務める野田直司さんにうかがいました。

【レポート】佐藤龍之介選手の母・希代子さんのパフォーマンスがアップする食事サポート

ファジアーノ岡山で活躍する佐藤龍之介選手の母・佐藤希代子さんを迎えて行ったサーモスpresentsのイベント。ここでは佐藤さんが心がけていた、食事にまつわるサポートをご紹介!

【サカママのキニナル】三笘薫選手の著書 世界NO.1選手になるための『VISION 夢を叶える逆算思考』って?

日本代表、そして世界最高峰のプレミアリーグで活躍する三笘薫選手の著書『VISION 夢を叶える逆算思考』。一見むずかしそうなタイトルながら、分かりやすく文庫化になり、実はサッカージュニアやサカママに響く120の「技術」と「理論」が綴られています。ここでは、その一部をご紹介!

【レポート】サイエンスxデジタルを使ったサッカー脳の鍛え方Vol.4

7月19日に開催した4回目となるSTEAM サカママイベント。ここでは、サッカープログラムを活用した講義やグループワーク、映像を活用したトレーニングの模様をお届けします!