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指導者の言霊「乾 良祐 ディアブロッサ高田FC U-12監督」

指導者の言霊「乾 良祐 ディアブロッサ高田FC U-12監督」

「自分で考えて判断する力」を養い、個性を尊重し「お互いを認め合う」

ディアブロッサ高田FC でジュニアの選手たちと向き合って約20年。伝統を受け継ぐ卒業生のひとりとして、ディアブロッサらしい「個の力の育成」にこだわった指導を続けています。長年チームが大切にしているのは「自分で考えて判断する力」を養うこと。子どもたちにああしろ、こうしろと要求するのではなく、「こういうときはどうする?」と問いかけ、彼らから思考を引き出すようにしています。日々のトレーニングではボールの使い方やコーンの置き方ひとつにしても、何のためにそうしているのか、すぐに答えは教えず意図をくみ取ってもらうようにしています。

「どんな練習をしようか?」と相談することも多いですね。試合でも同様で、たとえばハーフタイムには「後半はどうしたらいいだろう?」と質問し、選手たちの意見を尊重するようにしています。もしそれが間違っていたとしても、自分たちで考えて出した結論には責任がともない、失敗したのなら、次に何をすべきかをまた考えるようになるのです。

サッカーのスタイルも自由です。私たちのチームがユニークだと言われるのは、学年ごとに特徴が違うこと。ボールを自由に扱える個々の技術を高め、全員攻撃・全員守備で戦うという共通のコンセプトはベースにありますが、各学年で入団してきたメンバーの特色に合わせてチームの戦い方を決めるので、それぞれ戦術やシステムも異なるのです。

そこで重要になるのが、ディアブロッサのチームワークを表す「お互いを認め合う」という言葉。足が速い子、背が高い子、身体は小さいけど上手い子、ドリブルは下手だけどキックは得意な子…いろんな選手がいますが、みんながそれぞれの武器を活かし、ピッチの上で発揮できるようになってほしいのです。そのためには、自分がどんな選手なのかを仲間にわかってもらい、お互いに「ここが長所なんだ」「あれが苦手なんだ」というのを共有して、それを認め合う。誰かが失敗しても全員でカバーすればいいのです。選手同士、そして選手と指導者が各々を尊重し、そのうえでオープンに意見を言い合える関係性や距離感が、強いチームを作り上げるためには大事な要素ではないかと考えています。

ボールにたくさん触る大切さと喜びが、ディアブロッサで育った選手の強みに

子どもたちにはここでの経験を通じて、言われたことだけをやるのではなく、まず自分で考え、思い切って行動できる選手に成長してほしいですね。たとえば試合では、相手の逆をとる、裏をつくようなプレーを期待しています。それができるのは、ディアブロッサが重視するボールを自由に扱える技術があってこそ。ジュニア年代ではボールにたくさん触ることができる練習を多くしたほうがいいですし、やはり彼らが一番楽しそうなのは、シュートを打ったり、ドリブルで抜いたりというボールを触っている瞬間なのです。

子どもたちの個性やタイミングに応じて、そのときに必要な成長のヒントを提示してあげることが指導者の役目だと思っています。そうしてプレーの引き出しをいっぱい増やし、自分で臨機応変に選択、実行できるような選手になってくれたら、中学生や高校生で別のチームに入っても、どんなサッカーにだって対応できるはず。それがディアブロッサで育った選手の強みと言えるでしょう。

彼らの可能性を広げるために、親御さんは我が子を信じて見守ってあげてほしいと思います。私も子どもがいるので、ついつい指導や応援に熱が入りすぎてしまう気持ちはわかりますが、サッカーをやるのは子どもであって、本人が自発的に気づき、動けるようにならなければいけません。ディアブロッサの選手を見ていると、ある程度は放っておいたほうが、子どもたちから自由な発想が出てきやすいものです。目先のことだけではなく将来を見据えて一歩下がったところからサポートしてあげると、子どもなりに考えて自らサッカーに向き合っていくと思います。私たち指導者と一緒で、一方通行ではないコミュニケーションを心がけてほしいですね。

(2025年10月発行 soccer MAMA vol.55 「指導者の言霊」にて掲載)

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