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「高校サッカー指導者による人生成長論」 帝京安積高校−小田晃監督−

サッカーに夢中で取り組んでいる中学生プレーヤーに向け、高校サッカー指導者の方々に「高校でサッカーを続けること」について語っていただきます。
中学生のうちに何をすべきか? 高校サッカーで必要なことは? 高校卒業後にどんな目標が持てるのか?
高校サッカー進路を考えている中学生プレーヤーはもちろん、高校生にとっても自分を見つめ直すきっかけになるはずです。

追い求めるのは結果ではない。
「成長し続ける」こと

 
09年の監督就任以来、チームを県上位常連の強豪へと導いた小田監督。

高校入学前、中学生に求めること
確かな技術力と、成長する「覚悟」を持つ

―帝京安積高校のサッカーのスタイルについて教えてください。

「しっかりとボールを握り、人数をかけて攻撃を組み立て、相手を押し込むサッカーを目指してトレーニングしています。攻守の切り替え、個人の突破力という強みはもともとあったのですが、昨年からはボールを回し、守るところはしっかり守って、何でもできるチーム=何でもできる選手に育成することを目標としています」

―中学生が高校に入るまで取り組むべきことは?

「どこの高校であっても、どんなサッカーであろうとも、技術力は高い方がいいです。高校サッカーではビルドアップができる、できないの差はすごく大きい。DFなど後方の選手であればボールの配球であるとか、前にパスを差していけるか。中盤から前の選手であれば、後ろからどうパスを引き出して受けられるかが重要になってきます。高校に上がるとボールのスピードが一段階上がりますが、技術がしっかりしていれば対応できるのも早いです。フィジカル、スピードが上がった中で、いかに本来の技術を発揮できるかですから」

―帝京安積高校として選手に求めることは?

「一番大事なのは、いかに成長をしようと『覚悟』を決めているかどうかだと思います。そういう子はブレないです。例え、入学当時は技術力が劣っていたとしても、高校3年間で変わります。プレーも急激に変わるし、人間性もより大人になっていく。覚悟を持っているか否かは技術以上に大事なことかもしれません。心構え、気持ちが大事なことを知っておいてほしいと思います」

 

高校3年間で取り組むこと
自分に向き合い、毎日成長し続けることを意識する

―高校生活で培われるものとは?

「サッカーでは戦術的なことを深く落とし込んでいくことになり、人間として考え方が大人になっていく過程だと思います。そのスタートは、自分がどういう人間であるかを知ることが大事だと思っています。ウチのサッカー部では、年に何回かグループに分かれて仲間の長所、短所を書くようにしています。それが一回りするとメンバー全員の自分に対する見方がまとまって読めるようになるのです。そこで初めて『自分が知らない自分』を知ることになります。そうすることによって、長所を発揮するために何をすればいいか、苦手なプレーを直すには、どう練習するのかを考えるのです。そこがスタートで、将来何になっていくかという大きな目標につなげていくようにしています」

―短所を出し合うことはネガティブ思考を呼び起こし、マイナスに作用してしまうという意見もありますね。

「いえ、僕は短所を克服することで、長所が生きると思っています。僕の指導経験上、短所を克服しようとする子は強くなります。長所しか伸ばそうとしない子は、僕が何かを指摘しても忘れるケースが多いですが、短所を克服しようとする子は『この場面で使えばいいんだ』とすぐ胸にストンと落ちるのが分かります。短所を克服しようとしている選手の方が強いと思います。考えることができない」

―短所を知ることは、自分の弱さに向き合うことでもありますね。

「そうです。うちの指導方針は『成長し続ける』ことにあります。サッカーノートの表紙にもそう書いてあります。その部分を何より大事にしている。試合の結果よりも、選手個人が自分をどう成長させるかを常に考えるように、口酸っぱく言っています

―自分が成長できるかを考えると。それは環境など、進路選びにも通じるところがありますね。

「そうですね。中学生の高校選びも高校生の大学選びと一緒で『どうしたらいいですか?』と聞かれたら、私は『どこに行ったら、自分が成長するかを基準にしろ』と言っています。どこに行けば伸ばしてもらえるか、ではなく、どこに行けば伸びるのかです。違うサッカーのスタイルでも、そこで頑張れたら伸びると考えられるなら行った方がいい。困難に直面したときであっても、自分で決めたら進路はブレないです」

 

高校卒業後、選手に望むこと
自分に向き合い、毎日成長し続けることを意識する

―サッカーノートの提出は?

「毎日させています。大学入試では小論文を書くじゃないですか。箇条書きでなくて、しっかりと文章で提出するようにしています」

―文章に書くことで自分と向き合えるきっかけにもなりますね。

「将来のためにもそこは徹底しています。あと、試合のメンバー選びもそこが基準だと選手には言っています。もちろん、試合で外せない選手はいますが、伸びている子を優先するメンバー選考は公言していています

―それは選手のモチベーションになりますね。

チームの根本理念でもある『成長し続けている』選手を評価するようにしています。結果だけを追い求める勝利至上主義では、高校サッカー選手権で勝ったから『この学校にきて良かった』になり、負けてしまったらすべてが間違いになってしまいます。重要なのはプレーが伸びたか、自分が成長できたか、それを毎日考えることです」

―サッカーと勉強の両立については?

「もちろん、しっかり勉強をやっているかチェックしていますし、上を狙える子は学年1位を狙うように指導しています。練習する時間は決まっていますから、勉強を授業でやるのか、帰宅してやるのか、自分で時間をマネージメントする。勉強ができる選手ほど集中力が高かったり、求められることを表現できる傾向にあります。それは感じとるチカラがあることが大きいと思います。こちらの意図していることを理解し、それを達成するために何をすべきか逆算できる能力がある。勉強と一緒で自分で計画ができるからだと思います」

―帝京安積高校を卒業後、どんな人間になってほしいですか?

「この貴重な高校3年間で、“憧れられる存在”になってほしいです。これは選手たちに常々言っていてることです。サッカーをやめた後も、社会では仕事で成果を残さないといけないですし、上手く行かないとき、周囲にどういう姿勢を見せられるか。自分の将来は、自分で考えないと何も開けてこない。将来のことも考えて過ごしていれば、それは憧れの対象につながります。また、高校卒業後もサッカーを続けて、一生愛してもらいたいです。なるべくサッカーに携わってほしいですね」


帝京安積高等学校サッカー部

 
[分類] 私立
[所在地] 福島県島郡山市
[設立] 1961年(安積商業高等学校→1988年に現名称に変更)
[部員] 70名
[2020年所属リーグ] トップチーム/プリンスリーグ東北
セカンドチーム/県1部リーグ
1年生/東北ルーキーリーグ1部
[高校サッカー選手権] ベスト8(第62回・安積商業)
[サッカー部HP] https://www.footballnavi.jp/teikyoasaka/

「平成20年に帝京高校から穂積良一(第10代校長)が就任し、同校のスポーツ部強化の目的で私が監督として呼ばれて12年になります。人工芝フルピッチのIVY FIELDフットボール場が新設されました。今年の2月からグラウンドを使用できるようになり、6月にクラブハウスができて、ハーフコートはこれから工事が始まります。
部員70名のうち、下宿生は全部で34人。下宿生は年々増えてきているので、もっと増えると思います。学校とグラウンドは自転車で15分の距離で、その中間にサッカー部専用下宿があり、アクセスがすごくいいのでサッカーの練習に時間を割くことができます。クラブハウスはJリーグクラブ並の設備が整っていて、トレーニングルームでウェイトでき、ミーティングルームは70人以上が収容できて、アイスバスがあって、水風呂に入ってアイシングができます。ロッカールームも一人一人座って荷物もかけられるものが105人分あります。
近年は県大会で上位に入っていますが、福島県には同じ郡山市に尚志高校という、乗り越えなくてはいけない壁があります。尚志一強で、『帝京安積が頑張った』ではいけません。毎年、「県の決勝はどちらが勝つのか?」というところまで高め、ハイレベルなサッカーをテレビで見てもらうことが福島県にとっても大事なことだと思っています。
進路に関しては、大学進学が年々増えていて8割を占めます。そのうちの2割が帝京大学に進学しています。帝京グループですから付属校としての大学進路の道がありますので、よりサッカーに集中できる環境が整っていると思います」

 
今年6月に完成したクラブハウス。規模が大きくあらゆる施設が整っている。
 
今年から使用が開始された人工芝フルピッチのIVY FIELDフットボール場。
 
最新の器具が充実するトレーニングルームでウェイトに励む。
 
収容スペースが豊富な105人分ものロッカールーム。
 
アイスバスを使った水風呂でアイシングが可能。

写真提供/帝京安積高校サッカー部