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【全国注目校FILE】一条高校(奈良)新監督の下 変革の時を迎えた奈良の“盟主”

[分類]奈良市立
[所在地]奈良県奈良市
[設立]1969年
[部員]92人(2019年)
[2019年所属リーグ]
Aチーム/奈良県リーグ1部、Bチーム/同2部
[インターハイ最高成績]全国大会ベスト8(2009年度)

監督に聞く!求める選手像と指導理念
澤井匡生監督

澤井監督が求める選手像は、「サッカー小僧です。大好きなサッカーにのめり込み、目標に向かってみんなで頑張れる子」。と同時に、「前田総監督の教えですが、県内でも、校内でも注目されるクラブの一員であることを忘れず、応援される存在になること。人間的に自立しないとサッカーではいいプレーはできないので、自己管理をしっかりできること」を求めているという。

30年間で積み上げてきた実績

一条高校

公立高校の一条のグラウンドは土で、人工芝があるといってもハンドボールコート程度だ。前田久監督(現総監督)は、そんな環境下で30年間にわたり熱いハートと強い指導力で、奈良県内にとどまらず関西有数の強豪校へと育て上げてきた。そして、今年新チーム立ち上げを機に、同校OBで教え子でもあり、外部コーチ時代を含めると15年間ともに指導に当たってきた澤井匡生コーチに監督の椅子を譲った。現在は1年生の指導育成を担当すると同時に澤井新監督の指導ぶりを見守りアドバイスを送る立場だ。前田監督時代の実績は輝かしい。初の全国は2002年度の選手権、続いて2004年度にはインターハイ出場を果たした。以降9回の選手権で最高はベスト16。8回のインターハイでは8強入りの経験を持つ。特にここ3年連続で夏冬の全国大会、奈良県代表の座を独占中だ。そこには総監督だけでなくコーチもJFAのA級ライセンスを取得するなど指導内容の現状に満足せず、また視野を海外にも広げ、最近では2年に一回の欧州遠征(昨年はドイツ)を行うなどサッカーを学ぶ姿勢を忘れない前田総監督の考えが生んだ成果だろう。

生まれ変わる一条サッカー

一条高校

澤井監督が志向するのはボールを大事にして、GKからDFライン含めて全員で攻撃に関わって、しっかり攻撃で厚みを作って相手ゴールに迫るというスタイルだ。「前田先生は、ここ数年勝負に徹して、自陣ではリスクをできるだけ減らし、相手陣内で奪って素早く攻めることで、勝負強さを発揮されました。もちろん、そういう部分も残し両立させていきます」。しかし、2月までは全く勝てなかった。ただ、「3月以降は鹿児島、金沢遠征で徐々に勝ち始めて、形になってきた。今の2年生は私が1年から見ていた選手なので、その主力がしっかりビルドアップからできるようになると、攻撃も噛み合い始めて、3年生も意欲的に吸収しようとしてくれて徐々にうまく行き始めましたね」と今では手ごたえを十分感じている。

攻守のリーダーは「全国」を知る2人

要隆太選手

DF 要 隆太(3年)
要は名前通りのチームの要、キャプテンだ。昨年度の選手権では右サイドバックだったが、今は本職のセンターバック(CB)。自らの役割を「下手なので、声を出すしかない」と控え目。澤井監督は「ひたむきで、誠実。自らを高めようと貪欲で意識が高い。不器用だけど(笑)」と信頼を寄せ、「声を出して盛り上げてくれる。両足で蹴れるので左CBとしても優秀」と高評価だ。

岩本涼太選手

MF 岩本涼太(3年)
澤井監督の、「目立ちたがりで負けず嫌い。気持ちをプレーで表現できて、しんどい時でも仲間を引っ張れる」という評価には満足気。プレー面で監督は、「フットサル経験があり、狭いスペースでもボールを扱える。ポジションは左ワイドだが、攻撃時は中でインサイドハーフの役割」と力を認めている。本人も「キャプテンだけに頼らず、チームを引っ張って、攻撃でしっかりと基点になる」と役割を自覚している。

「巧みに守り、果敢に攻めよ」

一条高校

一条には、受け継がれてきたスローガンがある。「巧みに守り、果敢に攻めよ」。澤井監督は新チーム立ち上げ時に、このスローガンの意味を選手と一緒に考えた。選手が挙げてきたものを整理していくと、「巧みに守る」とは、やはり組織で自分たちより強い相手に対してどう連動して守備をするか、相手より先手を取るための予測と準備で先回りして、プレーエリアや状況に応じて、賢く対応すること。一方、「果敢に攻める」とは、ゴールに向かいアグレッシブに攻める、どこからでもゴールを狙うこと。ただ、それだけでは手詰まりになるので、中央、サイド、後ろからとどれだけ厚みを作って攻めるか、全員で波のように押し寄せるサッカー。この2つが攻めの軸だと言語化していって、選手はこれらを落とし込んだ練習に取り組んでいる。

今年の奈良県について、澤井監督は「ウチと五條、香芝の3つの力がトントン」と県リーグ上位を占める3校が中心になると見ている。もちろん、インターハイ、選手権では4年連続の全国へ、そして県リーグを制した上でプリンスリーグ返り咲きも目標だ。NEW一条の戦いぶりに注目したい。

WRITER PROFILE

貞永 晃二
大阪生まれ大阪育ち。JSL当時から日本サッカーを見続け、崇拝する賀川浩氏を大目標とするサッカーライター。関西サッカーを盛り上げようとあらゆるカテゴリーを取材してきた。「ドーハの悲劇」目撃がトラウマとなり、「ジョホールバルの歓喜」を味わえなかった小心者。会社員当時の1999年にライター業を開始し、サッカーマガジンでセレッソ大阪を担当し、エル・ゴラッソでセレッソ、ガンバ両大阪を担当した。サッカークリニック、ジュニアサッカーを応援しよう、サッカー批評等にも寄稿。