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【全国注目校FILE】秋田商業(秋田)選手権最多出場を誇る秋田の強豪

[分類]公立
[所在地]秋田県秋田市
[設立]1948年
[2019年所属リーグ]
TOP/プリンスリーグ東北、2nd/秋田県リーグ1部
[選手権最高戦績]優勝(1957年、1966年)

監督に聞く!求める選手像と指導理念
小林 克監督

2014年に就任した小林 克監督は同部のOB。県内随一の強豪校の指揮官でありながら、サッカーだけにとどまらない人材の育成という視点を持ち指導に取り組む。
そんな小林監督が求めるのは「自分を律する規律。自ら立ち上がる起立。この2つができる選手」。生徒たちはあくまで一人の高校生であり、一人の人間。その人間力を高めるひとつの競技としてサッカーがある。それを踏まえた上で「サッカーだけという人間になってほしくない。サッカーを離れた場所でも、ひとりのリーダーとして活躍できるような人材を育成したい」と話す小林監督。1年ごとに変わる選手の特長を見極めながら、厳しい練習を経てベストのチーム作りを図る指揮官だ。

昨年度は選手権ベスト8 全国での復権を目指す

秋田商業

全国高校サッカー選手権大会の出場回数は国内最多で、1957年と1966年には優勝を達成。しかし近年は振るわず「古豪」という表現が使われるようになっていた。この流れを断ち切ったのは2018年。
インターハイ出場こそ逃したものの、6年ぶりに参戦したプリンスリーグでは6位に食い込み翌2019年の残留を決める。そして秋田県予選を勝ち抜いて出場した第97回全国高校サッカー選手権で、32大会ぶりにベスト8に進出した。
選手権において秋田県代表は、2018年まで13年連続1回戦敗退という不名誉な記録がついてまわった。秋田商業はその13年の中で県代表として9回出場していただけに、小林監督や選手たちには勝利への思いが強かったはずだ。
こうして臨んだ選手権本戦では、初戦の四日市中央工業高校に競り勝ち勢いに乗ると、富山第一高校と龍谷高校を撃破しベスト8に食い込んだ。これらの試合で見せた粘り強い守備とスピード感あふれる攻撃は、秋田商業の代名詞といえる。

「打倒・秋田商業」を掲げ、各チームが力を付ける

秋田商業

秋田商業が牽引する秋田県の高校サッカーにおいて、新屋や西目、明桜、秋田工業など「打倒・秋田商業」を掲げてしのぎを削る。
小林監督は今年の全県総体について「例年はベスト8でも多少点差が開くゲームがあったが、今年は1点差やPK戦など僅差が多く、内容でも競り合っていた。戦えるチーム、テクニカルなチームなど、それぞれの特色を出していた」と捉えている。
秋田商業のトップチームはプリンスリーグ東北に、2ndチームは秋田県リーグ1部に参加。県リーグでは高体連のチームが大部分を占める中、クラブチームのブラウブリッツ秋田U-18も名を連ねる。ブラウブリッツ秋田U-15の選手が進学時に高体連のチームを選ぶケースもあり、秋田商業のFWとして2018年の選手権で活躍した長谷川悠などがそれに該当する。

チームを引っ張るキャプテンは文武両道の生徒会長

松野真士

DF 松野真士(3年)
チームを引っ張るキャプテンであり、CBとしてディフェンスラインからチームを統率。168cmとサイズはないが、「持ち前の身体能力と勤勉さに加えて、クレバーさも出てきた」と小林監督の信頼は厚い。
1年生の頃から出場機会を得て、2年生になりレギュラーを獲得。第97回全国高校サッカー選手権では全試合に先発フル出場を果たし、「赤い壁」と称された守備陣の一角を担った。
現在の課題は「相手にシュートまで持って行かせない守備と、奪ったボールをしっかりつなぐこと」だと松野。そのためにCBでコンビを組む田近奈生とGK山口雄也(ともに3年)らと連係して「周囲を動かすだけでなく、前の選手からしっかりとはめていく守備を構築したい」という。
勉強にも抜かりはなく、「勉強とサッカー、絶対にどっちも疎かにしないと決めていた」と力を込める松野。生徒会長も務める文武両道ぶりで、全校を代表する存在になっている。

成長スピードに拍車をかけ、県外でも活躍を期待

秋田商業

秋田商業を取材したのは6月6日。その3日前に秋田商業は全県総体を勝ち抜き、2年ぶりのインターハイ出場を達成していた。しかし小林監督と松野は課題を口にした。
2人が指摘するのは今年のプリンスリーグ東北での戦いだ。第8節を終えて1勝1分6敗で10チーム中9位。得失点差は3得点20失点と苦しんでいる。相手に押し込まれて守備の時間が長くなり、必然的に得点のチャンスが極端に少ない現状がある。
小林監督は修正に着手しつつ、「攻められる回数が多い中で、どうやって試合を作るか。サッカーに対する目を養って、ピッチの中の監督として仲間を導いてほしい」と松野のさらなる成長に期待を寄せる。いまは守備を必死に考えて、それを仲間に伝えるだけで終わっている。チーム全体が向上すれば、松野にも余裕が生まれるはずだ。
昨年度は2ndチームが秋田県リーグで経験を積み、トップチーム入りする選手も出てきた。インターハイを経て2つのリーグ戦を戦う過程で、新戦力が台頭する可能性も大いにある。秋田商業が成長スピードに拍車をかけて、1年を戦い抜く。

WRITER PROFILE

竹内松裕

1975年、東京都生まれ。小中学時代に野球を、高校時代に柔道を経験。大学時代にサッカー観戦にハマる。2005年に秋田県秋田市に移住。紙・ウェブ媒体の制作会社を経て、2010年よりフリーランスライターに。2014年から「エル・ゴラッソ」「J'sGOAL」などのサッカー専門媒体でブラウブリッツ秋田を担当。スポーツマガジン「Standard青森・秋田」では広く秋田県内のスポーツを追いかける。写真を独学し、スポーツや人物などの撮影もこなす。