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「一人一人の育成プランIDPとは?」イギリスサッカー便り

みなさん、こんにちは!
イギリスは、朝晩吐く息が白くなるくらい冷える季節になりました。暗くて寒い長い長い冬はすぐそこまできています。

今シーズンが始まる直前に、親向けのミーティングがありました。そこでのコーチからの話の一つに、「チームの勝利のために、選手個人の育成・成長が犠牲になるようなことはあってはいけない。選手一人一人の成長がチームの勝利につながる」という話がありました。そして、クラブとしてどのように選手たちの育成を行なっていくのかの説明を受けました。今月は、私自身とてもおもしろいなと感じたこの「IDP」と呼ばれる取り組みを少しご紹介させていただきたいと思います。

次男のサッカーチームで行われている「IDP」とは?

「IDP」とは、「Individual Development Plan」日本語にすると「個人育成プラン」、つまり選手一人一人のための育成プログラムのことです。

同じサッカー選手でも、ドリブルが得意な選手もいれば、パワー、スピードが持ち味な選手もいますし、それぞれ得意不得意とすることも違います。またポジションによっても特性が異なりますよね。それぞれタイプの違う選手一人一人が、シーズンを通してどんな選手になりたいか、どんなことを成長していきたいかを考えて目標を設定し、ではそのためにどうしていったら良いか……を逆算していくアプローチがIDPで、選手個人の育成に目を向けられています。

 
JFAが発信する「Japan's way」でもIDPが紹介されています。Jユースなどでも用いられているようです。
画像:JFA(日本サッカー協会)公式サイト Japan's way デジタルブックPDFより引用

自己評価→目標設定→トレーニング→フィードバックがIDPのサイクル

IDPは、まずは自分を自分で評価することからスタートします。20項目くらいのポイントがあげられ、それぞれを4段階で自己評価します。各項目は技術的なことからメンタル面に至るまで多岐にわたり、それぞれの項目にはコーチからの評価もつきます。
興味深いのが、自分では強みだと思っていたことがコーチからの評価ではそれほど高くなかったり、逆に自分はあまりできていないと思っていたことがコーチからの評価では最大評価の4がついていたりすることです。自分を様々な角度から客観的に見ることができるので、自分自身のストロングポイントや改善点、成長できる要素が具体的に把握できるのがいいなと思いました。

次に、シーズン通して成長させたいポイント、目標を自分で決め、それに対してどうアプローチするかを考えていきます。例えば、次男の今シーズンのIDPの1つに、「攻撃チャンスをより多く創出し、ゴールにつなげる」というものがあります。では、それを達成するにはどうしたらいいのか、どのようなトレーニングが必要なのか、誰がサポートしてくれるのかなどをコーチと相談しながら決めていきます。

こうしてIDPが決まった後は、日々のトレーニングでその目標に取り組んでいきます。チーム活動では、チームセッションの他にIDPタイムも設けられているので、その時間は各自それぞれ自分に必要なトレーニングを自分で決めて行います。例えば、フィニッシングをやりたい選手、クロスをあげる精度を高めたい選手、ディフェンスを強化したい選手がいれば、3人で練習することもありますし、パワーをつけたい選手ならジムワークを増やしたりしているそうです。このようにIDPタイムのトレーニングに決まりはないので、自分で必要だと思うことをコーチのサポートを受けながら自分で考えてやっていきます。次男はこのIDPタイムがとても有効だと感じているようで、日々自分で設定した課題に取り組んでいるようです。

また、IDPは試合後の映像分析も大事です。自分のプレーを見返して、IDP的にどうだったかも必ずチェックしています。そして定期的にコーチと個別ミーティングを行い、アドバイスをいただいています。そして、そこで出た課題点をまた自主トレーニングに持ち帰る……これを繰り返すことでパフォーマンスの向上に役立てることができるということです。

 

IDPの良さとは?どんな変化があった?

このIDPが素晴らしいなと思うのが、今まで漠然と頭の中にあった自分の改善・成長ポイントをしっかり言葉にして書き出すことで、よりそれを意識できることです。改善・成長ポイントを明確に意識することで、どんなことをやったらいいのかを自分でしっかり考えられるようになりましたし、家で行っている自主練でも、やるべきことがより意識できるようになったそうです。
夢や目標も具体的に書き出すのがいいとよく言われますが、こうやって明確に意識して練習に取り組めているかが次第に大きな差になる気がしますし、意識する回数が増えれば増えるほど、よりその目標に近づくような気がします

また、コーチからは様々なデータを元に定期的なフィードバックをもらっています。これのおかげで現在の自分の立ち位置がどの辺りなのかも知ることができ、しっかり現実を見ながら課題に取り組むことができているようです。

14歳の次男は、もうあまり多くを話してはくれませんが……IDPを意識しながら日々トレーニングに取り組んでいるので、私はそれを引き続きサポートしていきたいなと思います。あくまでも次男のチームで行われている育成プランではありますが、どなたかの参考になれば幸いです!

WRITER PROFILE

クリストファーズ佳世
クリストファーズ佳世

イギリス在住、3兄弟(16歳、14歳、11歳)を育てる現役サカママ。 神戸市在住時は、地元の強豪クラブチームで6年間サカママ生活を満喫。2019年3月にイギリス移住後は、サッカーの本場・イングランドでシーズン1年目の新米サカママとして生活をスタート。 日本とイギリスのサッカー事情の違いなどを、サカママならではの目線で伝えていきます。