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「ないこと」から生まれる子どもの成長とは?スペインでのサッカー経験から学んだこと【Monocular #5】

サカママの皆さん、いかがお過ごしでしょうか?サカママライターのマツユミです。
急に暑くなり、サカママ夏の三種の神器(日焼け止め・日傘・帽子)を慌てて準備しました。皆さんは、もうご準備されましたか?

さて、先月の「ジュニア選手が海外に挑戦すること」をテーマとしたコラムでは、海外への挑戦に必要な憧れに近づくための行動力と失敗しても再チャレンジする粘り強さは、足元にある日々のサッカーライフにおいても大切ですね、とお話しをしました。
そして、今回は、スペインサッカーコラム第2弾として、「スペインでの経験から学んだサッカーキッズの時間の使い方」について綴りたいと思います。「ないこと」で生まれる子どもの成長とは何か、スペインでの経験を共有しながら、皆さんと眺めてみたいと思います。

 

スペインのサッカーキッズに「ないこと」って?

まずは、サカママの皆さんに質問です! お子さんが1週間にサッカーに費やす時間を把握していますか?
周りのサカママ友達に伺ったところ、おおよそ2時間の練習を平日3日と、週末は6時間程度の拘束で試合または練習があるとのこと。さらに、お子さんによっては通常のチーム練習に加えて、テクニックスクールなどのセカンドスクールやサードスクールと掛け持ちしているケースも少なくありませんでした。改めて考えると、なんだか長時間だな……というのが実感です

実は、スペインで学んだ「ないこと」とは、このサッカーに費やす時間です。スペインのサッカーキッズが、指導者のもとでサッカーをやる時間はとっても短いと感じました。息子が練習や試合に参加したプロサッカーチームの下部組織では、1回の練習時間が90分、試合も1試合15分を5本程度でおよそ90分でした。それがおおむね週3回実施され、セカンドスクール等はありません。

また、練習の間、自分がボールを蹴るまでの待ちの時間や休憩時間はほとんどなく、試合の際も他のチームの試合を眺める時間や、お弁当を食べて休憩する時間は設けられていません。ササッと集合し、短い時間で強度の高い練習をし、集中して試合にむかい、ササッと帰るという習慣ができているようです。練習後は料理の手伝いや買い物など家族と過ごしたり、週末は地域の行事に参加したりとサッカーのない時間を楽しんでいるようです。

 

一方で、日本の練習時間がスペインに限らず欧州各国と比較して長時間であることは、これまでにも多くの場所で議論されてきました(参照 https://www.footballista.jp/special/48291)。さらに興味深いことに、日本サッカー協会はジュニア年代の長時間練習を推奨していません(表1)。

表1
JFA キッズハンドブックをもとに筆者作成)

にもかかわらず、なぜ日本のサッカーキッズは多くの時間をサッカーに費やしているのでしょうか。練習環境や指導者の人数はもちろん、ジュニア年代から設定されている全国大会や選抜のシステムなど、ジュニアサッカーをめぐる構造的な課題はあるでしょう。
残念ながら、それらを変えていくのは一筋縄ではいきません。では、私たちサカママが足元の日常でできることはなんでしょう?

まずは大人がサッカーと適切な距離をとること

子どもたちは、大好きなサッカーをもっともっとやりたい、練習をたくさんしてもっともっと上手になりたいという気持ちを持っています。すると、ついつい練習時間が長くなり、サッカー場から帰宅するのも遅くなってしまいます。
だからこそ、サッカーを愛する子どもの気持ちを汲む大切さも理解しつつ、彼ら・彼女らの長い成長を見据え、「これ以上はやらない」という判断を大人ができるようになるといいのかもしれません。私たち大人も、練習や試合のない週末は「サッカーがないと何をしていいかわからない……」なんてことはありませんか(笑)?

「ないこと」から生まれる豊かなサッカーライフがあることを、私たち親子はスペインでの経験を通して学びました。大好きなサッカーだからこそ、少し距離をとって付き合っていく大切さを、まずは大人である私たちが行動に移し、そして、子どもたちに伝えていくことができるといいですね。
子どもたちのより良く楽しいサッカーライフのためにできること、ご一緒に考えていきましょう。引き続きお付き合いください。

WRITER PROFILE

マツユミ
マツユミ

「みんなちがって、みんないい社会とは?」を日々考える社会科学系研究者。2人のボーイズ(12歳・9歳)を育てるサカママ。兄は、サッカー8年目。一方、弟は兄の影響でサッカーを始めるも、現在はアイスホッケーに夢中。スポーツ医の夫と愛犬の5人家族。