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アメリカ少年サッカー記19「誰にも聞けない、ゴールデンエイジの真実」

成長が最も著しい年代

サッカーの育成の場でよく耳にする言葉、「ゴールデンエイジ」。人によってその年齢の定義は違いますが、おおよそ9歳から12歳までの時期を指す言葉です。この年代に、神経細胞が最も速く成長することが、1930年に生物学者Richard E. Scammonによって発表されました。この古典的な発見が、いまだにスポーツの世界で脚光を浴びているのは、その年代に色んな運動をして神経の発達を促すと、これまでできなかった動きが習得できる、と考えられているからです。特に、サッカーは、足を使うためミスが多いスポーツですが、このゴールデンエイジの時期なら、足でボールを扱うスキルも効果的に習得できるのではないか、と注目されています。

息子が10歳の頃、このゴールデンエイジについて考えるきっかけがありました。プロのサッカー選手になるには、この時期にどう過ごすかが大変重要と、世界中のサッカー指導者が唱えますが、実際に親として子供のサッカー活動をどう支えたら良いのか、までは結びつきません。サッカーのチーム練習に喜んで行く息子も、家に帰ればゲームをする時間が多いです。ちょうど10歳頃から、チーム練習や試合が増え、疲れや怪我も出てくるので、身体を休められる点では、コンピューターゲームも悪くありません。それでも、YouTubeの視聴まで、サッカーの試合ではなく、ゲームユーチューバーばかり。この子は、この先、本物のスポーツではなくeスポーツを目指すのか、と心配にもなったので、ゴールデンエイジの意味するところを調べてみました。

子供の成長は段階的

少し古い記事ですが、アメリカユースサッカーのディレクターであった Claudio Reyna氏は、6歳から12歳までを「ゴールデンタイム」と名付け、その時期の育成の重要性を説いています(*1)。ここでのポイントは、この期間を、さらに初期の6歳から8歳と、後期の9歳から12歳に分けて考えることです。初期は、ボールタッチやドリブル、シュートといった基本的なサッカースキルの習得に焦点を当て、後期には、サッカーに対するより高度な理解へと子供を導く、と段階的に育成することを推奨しています。

U8以下の試合を見ていると、子供達のポジションはぐちゃぐちゃで、みんながボールに群がっています。こんなお団子状態をなんとか解消させようと、試合のサイドから声かけする保護者も多いですが、育成の観点では、この状態は全く問題ないとされています。むしろ、この時期には、集団の中でも個人でしっかりボールコントロールができるスキルを身につける事を重視しています。

9歳以降も、この基礎的な技術の習得は重要ですが、さらに、チームとしてのプレーのスタイルの理解や、精神力を鍛えることに指導がシフトしていきます。試合が本格的に始まることで、攻守に関する多彩な動きも覚えていきます。そして、重要なのが、試合を好きになる気持ちを育むこと。そのために、継続的に楽しくトレーニングする重要性も学んでいきます。

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ゴールデンエイジに親が出来ること

この段階的なゴールデンエイジの発達に、親として子供をどうサポートしたら良いかの正解は、未だわかりません。それでも1つ、鍵となりそうなのは、11〜12歳は「Golden year of learning」だと言うこと。この年代から、子供は、練習で習得したスキルを、”自分の意思と判断”で、実際の試合に使えるようになります。

ここで大切なのは、11歳、12歳は、「試合中に子供が自分で試す余地を残すこと、挑戦させること」と言う点です。これは簡単なようで、実は、保護者もコーチにとっても、ものすごく難しいことです。というのも、こういった子供の試みは、成功した時は良く見えますが、失敗した時は、側から見ると、判断の遅さからミスしたように写りますし、本人が何も考えないで適当にプレーしているようにも見えるからです。そうなると、親としては、「何をやってるんだー」と叫びたくなります。ですが、この学習ステップこそが子供の成長に重要で、ミスをしてもいいから、もっと挑戦するよう励ますことが、親としての大切な役割になるようです。

確かに、息子がマインクラフトをしている様子を見ると、わざと敵にやられたり、自ら溶岩に突っ込んで、何か変なことをやっているように見えます。しかし、よくよく話を聞いてみると、実際には、自分でなんらかの情報をインターネットで検索して、新しいテクニックを試し、自分なりに工夫してプレイしているのが分かります。当然、このゲームの世界には、誰からも文句を言われないので、どんどん独創的なトライを続けて、ゲームのスキルを上げています。コンピューターゲームといえど、こういった試みは、学習プロセスとして理にかなっていて、目覚ましい成長が見られるのです。

ですから、親ができることと言えば、この学習プロセスを、肝心のサッカーにも生かせるよう子供を促すことに尽きます。そのためには、たとえ試合中にミスをして、チームが負けたとしても、親として暖かく見守ることができれば、結果的に子供の成長を促すことになるはずです。そうは言っても、親やコーチに囲まれた試合の中では、子供の挑戦的で創造性を持ったプレーは制限されやすく、親の任務を全うすることは、思った以上に難しいのが現実です。

(*1) 引用:Goal.com En Route: The golden age group of player development

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WRITER PROFILE

近本 めぐみ
近本めぐみ

日米で色々な大学、研究所を渡り歩く理系研究者。現在はアメリカ在住、在米歴と息子のサッカー歴が8年のサカママ。サカママWEBでのコラムを通して、アメリカならではのサッカー育成の面白いところ、興味深いところを発信していきます。

★外部ブログ「アメリカ発少年サッカーの育成事情」でも執筆中

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