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「ゴール確率を7%上げる方法とは?」アメリカ少年サッカー記28

決勝トーナメントのある大会。日本の小学生大会を例にとると、フジパンカップや全日本U12サッカー選手権大会の決勝トーナメントが有名でしょうか。こうしたトーナメントの試合がリーグの試合と大きく違うのは、試合に負けた場合、チームの敗退が決定してしまう点です。
こうした勝ち抜き戦は、勝ち進むほど両チームの実力が拮抗するようになり、守備でのプレッシャーや攻撃時のボールの奪い合いなどの強度が増します。その結果、1点に喜び、1点に泣く試合が増え、連戦での肉体的疲労だけでなく、精神的なタフさも求められます。

このような負けられない試合で勝つには、ゴールの確率を上げることも重要な要素となりそうです。果たして、ゴールの確率を上げることは可能なのでしょうか? 今回は、この謎に迫ります。

ゴール確率はこれで上げられる!

実は、ゴール確率を上げる鍵はプレーヤーである子ども達だけでなく、観客席の保護者も握っています。

息子が育成コーチから聞いた話によると、ゴールパフォーマンスをしっかりやると、その次の自分達チームのゴールの確率を7%上げ、逆に相手チームのゴールの確率を7%下げるようです。チームで得点したらしっかり喜んで、相手チームの心を折る、と言うのは、想像以上にチームの勝敗に効果的なようです。

これまでのチームメイトには、得点後にバク転をして喜びを爆発させる選手がいました。こうした派手なパフォーマンスは、選手やコーチ、そして試合を見ている全ての人の目を引きます。さらに、子ども達以上に得点の喜びを爆発させているのは、観客席にいる家族です。
例えば、チームが得点をすると、お父さんたちがチーム名や得点した子どもの名前を大声で叫んでいました。最初はなんだか恥ずかしく見えたのですが、こうした行動はチームのゴールを大いに盛り上げてくれます。つまり、チームに点が入ったら、選手も応援席も大いに喜ぶことが、試合に勝つための大事な要素になるようです。

ただし、この技は試合で得点をしない限り発動できません。先日は得点できずに負けた試合があり、最初から最後まで、選手同士や応援席に漂った悪い雰囲気を一掃できませんでした。従って、この技を発揮するには、惜しいシーンも大いに盛り上げて、まずは1得点を決める必要があります。

やってはいけない観客席の声掛け

 

それでは逆に、子どものパフォーマンスや成長を邪魔してしまう、観客席でやるべきではない声掛けは何でしょうか。

一つ目は、指示を出すことです。例えば、「誰にパスをしろ」は、子どもがどのプレーをするか決める機会を奪うだけでなく、時には自分がやろうとしたプレーとは異なる指示で選手を混乱させるそうです。
保護者からの指示は極力言わない方が良さそうですが、選手にどうしてもパスコースを見つけて欲しい時には、「周りをみろ」と言い方を変えるだけで、子どもにプレーの選択肢を与えることができます。息子のコーチは、子ども達に「check your shoulder(背後をみろ)」と言います。後ろを振り返ることで、自分の死角となっている周囲の選手の位置を確認することを促しています。

二つ目は、ミスを責める声掛けです。シュートを外した、チームメイトへのパスが相手にカットされピンチを招いた、などの場面で、「何てミスをしたんだ!」とか「隣にフリーの選手がいただろう!」と怒っても、プレーは向上しません。むしろ、子ども達はミスを恐れ、消極的なプレーが増える可能性があります。
ミスを残念に思う気持ちは避けられません。それでも、挑戦したプレーには「ナイストライ!」と褒め、気持ちを「次に行こう」と切り替える声掛けをすることで、選手だけでなく応援席の悪い雰囲気も変えることができます。

子どもと一緒にスポーツを楽しむ

 

本来、子どものスポーツは楽しむためのものです。ですが、それと同時に子どものスポーツは時間と費用がかかり、保護者は必然的に子どもたちが短期間で成長し、勝つことを望んでしまいます。そして、子ども自身は、そのプレッシャーを多かれ少なかれ感じながら、プレーをしているようです。まずは、子ども達のプレーを楽しく盛り上げることに集中し、良くない声掛けは改善していきたいなぁと思います。

そして大事なことは、子どもは成長段階にある、ということです。長い成長の中には、決勝トーナメントに出場できず予選リーグで負けたり、決勝戦で大きな得点差で負けりすることも頻繁に起こります。それでも、スポーツを通して子どもと同じ時間を過ごし、子どもの成長を見守り、ドキドキを楽しむことができる。こんな贅沢な機会は、なかなか持てません。その気持ちを子どもに伝え、子どもと一緒にスポーツを楽しんでいきたいなぁ思います。

WRITER PROFILE

近本 めぐみ
近本めぐみ

日米で色々な大学、研究所を渡り歩く理系研究者。現在はアメリカ在住、在米歴と息子のサッカー歴が8年のサカママ。サカママWEBでのコラムを通して、アメリカならではのサッカー育成の面白いところ、興味深いところを発信していきます。

★外部ブログ「アメリカ発少年サッカーの育成事情」でも執筆中