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試合に出られない時でも、人は大きく成長する

「For the team」―。
チームスポーツに関わった人であれば、誰もが聞いたことのあるこの言葉。
今回はチームワークについて考えてみたいと思います。

サッカーは11人でするスポーツ。8人制サッカーであれば8人。
ピッチ上でプレーに関与できる選手の人数は限られています。
ただし、実際の試合になるといかに多くの人間がチームの勝利のために関わることができるかが勝敗を分ける一つの要素になります。
プロの世界ではサポーターもそうでしょう。部活でいえば父兄の皆さんやチアリーダーもそうでしょう。どれだけたくさんの人の強い思いが選手を鼓舞し、力を与えてくれるかは言うまでもありません。

そしてチームを強くするうえで最も大切なのは、ピッチ外の選手の行動や態度です。
日本代表やなでしこジャパンで、ゴールした選手がベンチに向かって走っていき、控え選手と抱き合うシーンがよく見られますね。
サッカーは11人だけでプレーするものでなく、チーム全員で戦うものなのだと感じさせてくれる素晴らしい光景です。
なぜこのような光景が見ることができるのか。選手は誰しも試合に出たいのです。試合に出て活躍して自分の価値を高めたいのです。それでも、自分の感情を抑えてチームの勝利のために今、自分ができることに注力する。それこそがチームワーク、チームプレーだと思います。

強いチームや連勝中のチームなどによくみられる光景ですが、これがとても重要なことなのです。
試合が始まったら控え選手にできることは、しっかりと自分の出番に備えて準備をすることと、チームが勝つために声を出し、情報を伝え、チームを鼓舞することです。
自分が試合に出られないからといって不貞腐れる選手、準備を怠る選手にはチャンスは与えられないし、めぐってきたチャンスがあったとしても掴むことができません。

良い選手は、チームの勝利のことを最優先に考え、自分がどの立場にいようと、チームにとってプラスとなる行動をとることができるのです。
そのプラスの集合でチーム力は高まり、勝利の可能性は高まるのです。

大事なのは、どれだけ多くの選手がチームの勝利に関わることができるかです。それは簡単なことではありません。試合に出られなければ悔しいし、「納得いかない」、「面白くない」といった感情も当然生まれるからです。
結果が出ているチームほど、その感情を押し殺し、「For the team」の精神で試合に臨んでいます。つまり、より多くの人間の思いが勝利のために向けられているのです。

だからこそ、チームの調子が良い時ほど、試合に出られていない選手たちの態度に目を向けてほしいと思います。チームのために我慢し、試合に出られない時にしっかりと役割を果たせている選手がいるということを忘れないでほしいです。
そういった選手には必ずチャンスがやってきます。そしてそのチャンスを掴むための準備を怠っていないことがまた監督やコーチ、チームメイトの信頼を勝ち取ります。

試合に出られない時には、試合に出ている時とはまた違った成長のチャンスが必ずあります。すべての境遇は成長のチャンス。そういった思いで子どもの成長を見守っていきましょう。

WRITER PROFILE

野田恭平
1981年、神奈川県生まれ。サッカー親子講師。東京V、琉球、岐阜などでゴールキーパーとして活躍。現在は、全国のサッカー少年と保護者を対象に親子向けの親子イベントを開催し、「スポーツを通した人間育成」と「子どもの可能性を最大限に引き出す親のサポートの在り方」をテーマに講演活動を展開。また、JFAこころのプロジェクトのメンバーとして、「夢を持つことの大切さ」と「夢に向かって努力することの大切さ」を子どもたちに伝える活動を行なっている。サッカー少年を育てるママの悩みに真剣に向き合い、絶大な信頼を得ている。