負けず嫌いは原動力! 子どもの悔し涙を自己成長につなげるサポート
スポーツには勝敗がつきものですが、お子さんが勝ち負けにこだわりすぎて手を焼いた、という経験はありませんか? お子さんの負けず嫌いが強すぎて対応に困ったり、悔し涙を流す我が子に対してサカママ、サカパパのほうが過剰反応してしまったり、、、
そこで今回のコラムでは、子どもの負けず嫌いの心理や、悔し泣きをする我が子への対応について考えてみました!
強烈な負けず嫌いエピソード
我が家は兄弟そろって負けず嫌いな性格だと思います。とくに次男は強烈な負けず嫌いで、幼稚園の頃は自分が負けた、と思う出来事があると、床を転げまわって30分くらいワンワン泣いていました。「あー、人間って本当に悔しいときに地団駄って踏むんだなぁ」ということも、次男が試合に負けた際に生地団駄を踏んでいる様子を見て学ばせてもらいました。
小学4年生になった今でも、練習の最後のゲームでは、毎回勝った・負けたの大騒ぎです。マイボールかマイボールじゃないか、それだけでも絶対に負けられない一触即発のムードです。負けず嫌いってスポーツをするうえで大切だろうな、とは思うものの、勝ち負けへの過剰反応に、親として戸惑ったり困ったりした時期もありました。
たとえば、低学年の頃は試合中でも悔しくて涙が止まらずプレイがグダグダになったり、スクール終わりにゲームで負けたことが悔しくて、いつまでもグラウンドに座り込んで一向に動かなかったり、、、こちらに余裕がないとイラっとしたり、泣き顔を見ると心がざわざわしたり、結構振り回されていたなと思います。
負けず嫌いの発達心理
ところで、負けず嫌いとはいったいどうやって身につくものなのでしょうか。ある論文によると、本来、児童期にはどんな子も程度の差はあれ、素朴で自然発生的な「負けたくない」気持ちを持っているそうです(※1)。その頃の素朴な負けず嫌いとは、単に誰かに打ち勝てばよい、というものではありません。
積極的に自分を「今よりもっと豊かにしよう、引き上げよう」という、自分の内側から生まれるエネルギー源です。小学校低学年では「他者と比較し、競争して、頑張る」=優位の負けず嫌い。思春期に入ると「自己と比較し、以前の自分と競争して、頑張る」=自己向上の負けず嫌い。小学校高学年は、この2つの移行期であり、どちらも混ざり合って負けず嫌いが成立しているとのことです。
練習中のゲームで毎回「今何点?」「どっちのチームが勝ってる?」ということばかりを気にして、むきになっている小学生たちを見て「勝ち負けの点数より、自分のプレイがどうだったとか、そっちに意識を向けられないもんかねぇ」とママたちで話しているのですが、今回調べたことで、人より勝りたいという「優位の負けず嫌い」から、前の自分を超えたいという「自己向上の負けず嫌い」に向かうのは、発達的にもう少し先なのだなと分かりました。
なので、今しばらく、子どもたちの終わりなき競争を見守ろうと思いました。
「自己向上の負けず嫌い」への移行を促すかかわり方
いずれ発達していくとはいえ、他人との比較である「優位の負けず嫌い」にずっと支配されているのは問題です。長期的にはストレスを抱えやすかったり、結果が伴わないときに自己否定や挫折を感じたりして、サッカーに対して燃え尽き症候群のようになる可能性もあります(※2)。
ここで大事なのは、親の態度です。親が他人と我が子を比較したり、過剰な期待や圧力をかけたり、批判的な言葉を投げかけたりしていると、子どもの素朴な負けず嫌いのエネルギーは減退し、サッカーに対するモチベーションも下がってしまいます。
では、どうしたら子どもの素朴な負けず嫌いを「自己向上の負けず嫌い」の方向に導いてあげられるのでしょうか。それには、次のような親のかかわりが大事だと言われています。
① 失敗に対して肯定的な意味づけをする
プレイがうまくいっていない、試合に負けた、この出来事に対し“失敗”だとレッテルを貼っているのは実は親だと思います。プロのサッカー選手は、失敗に対してポジティブな意味づけの発言をする人が多いですよね。「こういう経験は大事なんだよ」と肯定的に声をかけてあげられると、子どもは失敗を恐れなくなるでしょう。
② プロセスを称賛する
結果ではなく頑張った過程に着目する親の姿勢は、子どもが粘り強く挑戦する力を育てます。たとえ結果が伴わなくても、チャレンジした過程が素晴らしいのだと思うことができれば、子どもは諦めずに何度でも挑戦するでしょう。それは自分との戦いの領域につながっていきます。
シンプルに「悔しさ」に寄り添うだけでも十分
ここまでのお話しから見ると、私がうまく子どもをサポートできているかのような誤解を与えそうですが、実際のところ、私は我が子が悔し泣きをすると動揺しまくっていました(汗)。苛立ち、気まずさ、戸惑い、呆れ、、、たくさんの感情をぐるぐると経験し、ようやくたどり着いた境地はいたってシンプルです。
子どもは悔しかった、勝ちたかった。事実はただそれだけ。だから、親がかける言葉もシンプルで良いのだと思います。
「悔しかったんだね」「勝ちたかったね」
一緒にしみじみと悔しい気持ちを味わえば十分で、そこから何を学び、どう行動するかは子どもが決めることです。泣くことはかっこ悪くて弱いだとか、そんなに悔しいんだったら練習しろとか、我が子だとつい余計なことを言いたくなりますが、そこをグッとこらえて、あれこれ言わずに黙って見守ったときのほうが、結果的に子どもは目覚ましい成長を見せてくれたなと、今ようやく思えるようになりました。
負けず嫌いの気持ちは大切に育てよう
スポーツに勝ち負けがあるのは当然で、勝ったらすごく気持ちがよく嬉しいと思います。でも、負けて悔しい経験からのほうが、学ぶことはむしろ多いかもしれません。子どもに負けず嫌いな様子が見られたら、その感情に寄り添い、大切にしてあげたいですね。
負けず嫌いを否定されず、大切な感情だと扱ってもらった子どもは、きっと悔しい気持ちをエネルギーに転換し、ぐんぐん成長してくれることでしょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考文献
※1 「小学校児童における負けず嫌いの積極的意味を探求する」 心理科学第28巻1号 (2007)
※2 「子どもの負けず嫌いを強みに変えるためにできることとは」 子育てのとびら (2023)