試合中に声が出せない!その原因は?苦手意識を克服するにはどうしたらいい?
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第13回目。
今回のテーマは「声出しに対する苦手意識の克服」。サッカーでは試合中にお互い声を掛け合うことが大切ですよね。でも、いざとなるとなかなか声が出せない…というお子さんも多いのではないでしょうか?そこで今回は、声出しへの苦手意識を克服する方法を教えてくれました。
試合中に声が出せない原因は?
小学生年代の保護者の方から「うちの子は試合中になかなか声が出せないんです…」というご相談をよく受けます。子ども達が声を出せないことには、恥ずかしい、自信がないといった理由が多いようです。また、声出し自体に抵抗はないが、どんな状況で声を出せばいいのか分からないという子もいます。ジュニア年代のサッカーは8人制で試合が行われるため、攻守の切り替えの場面も多く、目まぐるしく展開が変わっていきます。そうなってくると、場面場面で的確な声出しをするのはとても難しいです。プレーをしながら、どんな声出しをすればいいのか?を考えていると頭の処理が追い付かなくなってしまうのでしょう。こうなってくると、子ども達が苦手意識を持つのも無理はないかなと思います。
とはいえ、サッカーは声を出すことがとても重要なスポーツです。私自身も現役時代は大きな声で指示を出し、チームをまとめたりする必要性を常に感じていました。それでは、どうしたら試合や練習の中で声が出せるようになるのでしょうか?今回は、この点についてメンタル面から考えていきましょう。
声出しへの苦手意識を克服するためにはどうすればいい?
最初にあげたように、声を出せない原因には「①声を出すのが恥ずかしい、自信がない」「②声出しに抵抗はないが、どんな状況で声を出せばいいか分からない」といった2つがあるようです。こういった声出しに対する苦手意識を克服し、自信や肯定感をつけていく必要があります。そのために活用していきたいのが、以前にも紹介した「スモールステップ」です。これは、大きな目標に対して小さな目標(ステップ)をいくつか立てていく目標設定の方法のことでしたね。
今回の場合でいうと、「試合中に大きな声で的確な指示を出せるようになること」が大きな目標です。この目標に対して、今の自分ができる小さな目標を設定していきます。この小さな目標は、頑張れば越えられる、プラスの感情を味わうことができるものにすることが大切です。そして、より明確で具体的な行動を目標として設定することを意識しましょう。
例えば、「チームを盛り上げるための声」であれば、ある程度セリフを決めてしまうのも良いと思います。今日の試合では「集中していこう」「気合を入れていこう」といった言葉を3回は必ず発言する、といった感じです。より具体的で意識がしやすいですよね。ちなみに、これが「指示出しのための声」などになると、もっと具体的に、シチュエーションによって言葉のバリエーションを持たなくてはいけません。その時はお子さんと一緒に考えてあげると良いかと思います。
以前、小学6年生の子から「ディフェンスの時に誰のマークについていいのか分からなくなる」といった相談を受けたのですが、その時はどうすれば分かりやすくなりそうかを一緒に考えました。その結果、「何番マーク!」と声出しをすれば分かりやすくなりそうとのことだったので、試合中でディフェンスの場面になったら、この言葉を3回言うと決めてもらいました。一週間後話を聞いてみると、大きな声では言えなかったが誰をマークするのか分かりやすくなってよかったと答えてくれました。
一つ目標をクリアできたので、次のステップを考えてもらったところ、「より大きな声で言えたら周りと連携も取りやすくなる気がする」と言っていました。そこで、次は「大きな声でマークを伝えること」を目標に設定しました。また一週間後に話を聞いてみると、前よりは大きな声が出せて周りにも伝わった気がしたとのこと。声を出すことで周りとの連携も取りやすくなったという実感があったようです。
目標設定では、自分で決めて実行することが大切!
こんな風に一つ目標をクリアしたらまた次のステップと、達成感を味わえるような目標設定をお子さんと一緒に考えてみましょう。ここで大切なのは、一緒に考えはするけれど、あくまでもその内容は自分で決めてもらうということです。今回の声出しで言えば、誰かに言わされている発言ではなく、自ら必要だと思う言葉を決めて、それを発することで「今日は良かったぞ」という気持ちをより感じられるようになるのです。言わされているのではなく、自ら考え発言することでプラスの効果が感じられれば、それが自信にもつながっていくと思います。