「怒り」という感情の仕組みを理解してパフォーマンスを安定!
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第16回目。
今回のテーマは「怒りの感情」についてです。試合中などで思い通りのプレーが出来ず感情的になることはありませんか?怒りの感情が沸く仕組みと予防法を知る事でパフォーマンスの安定にも繋がります。
「怒り」という感情の仕組みを理解しよう
以前、中学3年生の選手からこんな相談がありました。
試合中にうまくいかなくなるとイライラしてしまい、プレーに集中できなくなるということです。自分のプレーがうまくいかない、味方に対してもイライラしてしまうことがあるということです。
私も現役の時、実際にイライラしてしまい、パフォーマンスが落ちてしまうことがありました。しかし、よく思い返してみると必ずパフォーマンスが落ちたかというとそうではありません。イライラが力となり、より試合にのめり込みパフォーマンスが上がる時もありました。
この違いはどこにあるのか、これは怒りが沸き上がる仕組みを理解していくことで予防と対策ができるようになります。
「怒り」という感情の仕組みを理解しよう
そもそも怒りがなぜ出てくるのかというと、「怒りという感情は二次感情」といわれています。どういうことかというと、通常感情とは出来事に対して心が反応することです。
- ご飯を食べる→おいしい
- ゲームをする→楽しい
- 足をぶつける→痛い
このように出来事に対して、すぐに感情が湧き出てきます。しかし、怒りは出来事が起きた後にすぐに変わるのではなく、間にもう一つ感情が挟まれていると言われています。
例えばこのようなことです。
- 相手に蹴られる→痛い→怒り
- シュートを外す→悔しい→怒り
- 怒られる→悲しい→怒り
発生した出来事に対して、すぐに怒りが出てくるのではなく、その前に感じている感情があります。
「怒り」の予防方法を見つけよう
人には防衛本能があります。
自分にとって不快な感情は味わいたくない、自分を守りたいという気持ちから怒りがわいてくるのです。例題でいえば、痛い・悔しい・悲しいと感じさせるなというようなイメージです。
この時に怒りが出てくる前の感情、一次感情を理解しておくと怒りの予防につながります。自分は、この感情が出てくると怒り易いなと気づくきっかけとなり抑制につながります。
お子さんをサポートする際は怒りが出た時に、何に対してイライラしたのか?怒りが出る前の一次感情は何なのか?を一緒に探していくことがおすすめです。
自分なりの対策方法をまとめよう
また怒りが出てくるにはもう一つポイントがあります。もう一つのポイントは自分にとって大切なもの、事柄を守ろうとする時に怒りが沸いてきます。これは自分が大切にしている考え方、価値観を否定や壊されそうになる時におこります。
例えば、私は電車でお年寄りに席を譲らない人に対して怒りがわいてきたことがあります。これは何に対してかの怒りかというと、お年寄りに席を譲ることは当たり前だという自分の考え方、価値観を壊されることに対して怒りが出ています。
サッカーの中ではどんな場面があるかというと、味方選手がボールをとられて追いかけない場合に、なぜ追わないのだと怒りが出てきます。この場合、取られたら取り返す、最後まで責任を持つなどの自分にとって当たり前の考え方を否定されることにより怒りがわいてくるのです。
怒りが出てくる仕組みはこのようなものです。その時どのように怒りを自分の力に変えていくのか。対策は自分が試合の中でやるべき行動リストをまとめておくことです。
感情に左右されずやるべき行動は見失わない
怒りは予防しやすい感情ですが、完全にコントロールすることはできません。感情は出てきて当たり前のことです。怒りの感情の中で、どのような行動をしていくのか明確にしておくことです。
海外のサッカー選手で、よく試合中に怒りをあらわにしている選手がいると思います。しかし、その中で素晴らしいパフォーマンスを出す選手もいます。そういった選手たちは、怒りを感じている中でもやるべき行動に意識を向けられている選手です。
感情がパフォーマンスを左右するわけではありません。パフォーマンスを左右するのは、あくまで自分の行動です。人は様々な感情が出てきて当たり前です。
試合中イライラしないようにしなさいと言ってもこれは不可能です。イライラした中でもしっかりとしたパフォーマンスが出せれば、またそれに対して達成感や楽しいという感情が出てきます。
感情的になった時はやるべき行動を整理しよう
怒りという感情をコントロールするのではなく、あくまで自分の行動を整理し実行していく。お子さんをサポートする際は、怒りが出てくる仕組みを理解した上で、感情を抑える方法探すのではなく、自分がやるべき行動を一緒に整理していきましょう。