メインコンテンツに移動

効率よくパフォーマンスアップできる!試合や練習の振り返り方

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第11回目。
今回のテーマは「パフォーマンスを上げる振り返り」。上手くいかなかった練習や試合も、しっかりと振り返りを行うことがパフォーマンスアップに繋がります。そこで今回は、どんな風に振り返るといいのか、また、保護者がお手伝いすべきポイントはどこなのかを解説!

上手くいかなかった時の振り返りはちゃんとできてる?

練習はしているけどなかなかパフォーマンスが向上せず、何だか自信も無くなってきた……。そんな経験をしたことはありませんか? 私の元にもこういった悩みを相談してきてくれる選手がいます。実はこういった選手は、よく話を聞いてみると、試合などの振り返りをあまりしていないパターンが多いです。そして、なぜ振り返りをしないのか聞いてみると、大体は「自分が上手くいっていない場面を見たくない、考えたくない」といった答えが返ってきます。

確かに以前は私も自分が上手くいかなかったことをわざわざ振り返ることに抵抗を感じていました。「失敗したことは早く忘れて切り替えた方が良い!振り返らずに前に進もう!」といった考えだったかと思います。でも実際はそう考えていた時よりも、考え方を変えて試合や練習を振り返るようになってからの方が、パフォーマンスに大きな違いが出るようになりました。

そこで今回は、日々の練習や試合をどんな風に振り返ればいいのかという点をお伝えしていきます。

 

出来なかったことだけではなく、出来たことも振り返ろう

冒頭の話に戻りますが、「本番の試合で1対1のシュートを外してしまう。1対1の練習を繰り返しても、なかなか改善ができない」という相談をしてきてくれた子がいました。やはりこちらの子も何が原因かを聞いてみても、外した時のことを思い出すとネガティブになるからあまり思い出さないようにしているとのことで、何が原因なのかあまり分からないような状態でした。

失敗してしまった場面を振り返る時は、どうしても出来なかったことばかりに目が行きがちですから、振り返るのが嫌になってしまう気持ちも分かります。とはいえ、実際は出来なかったことだけではなく、出来たこともあるはずです。そこで、本番の試合で「出来たこと」と「出来なかったこと」を振り返ってもらいました。すると次のような結果になりました。

出来たこと
・相手の裏に走る
・声を出す
・ドリブルでかわす
・ファーストタッチ
・前線からのディフェンス
・ヘディングの競り合いに勝つ

出来なかったこと
・1対1のシュート
・パスミスがあった

どうでしょうか? パッと見ても分かるように、実は出来たことのほうが多いんです。どうやら一つのミスが気になり、実際は出来たことも多いのに、試合で全然活躍出来なかったという感覚に変わってしまっているようでした。

失敗したところは思い出したくない……という思いは分かりますが、出来なかったことだけを振り返る必要はないのです。練習や試合全体を振り返って、まずは出来たことをしっかりと認め、自分の自信に変えることを意識してみましょう

 

なぜ出来なかったかを考えて、どんなアプローチが必要かを考えよう

さて、出来たことを振り返って自分の自信に変えることと同時に、出来なかったこともしっかり振り返っていかなければいけません。そのためには、ミスした場面をしっかり分析し、課題を明確にしていくことが必要です。そこで次は、1対1のシュートがうまく出来る時と、うまく出来ない時の比較をしてもらいました。

うまく出来る時
・練習の中で何度もチャンスがある時
・キーパーの位置が分かる時
・思ったところにボールが止められた時
・シュートする際にボールを見れている時

うまく出来ない時
・決めなくてはいけないプレッシャーがある時
・疲れている時
・ファーストタッチがずれてしまった時

このように、出来なかったことに対して、上手く出来る時と出来ない時を整理してみると、その原因が浮かび上がってくるはずです。そうしたら、実際に起きたミスが技術的なものだったのか、メンタル的なものだったのか、それともフィジカル的なものだったのか、どこに原因があったのかを明確にしましょう。今回あがったものでは、「決めなくてはいけないプレッシャーがある時」がメンタル、「疲れている時」がフィジカル、「ファーストタッチがずれてしまった時」が技術ですね。

原因が明確に出来たら、その原因を解決できるようなアプローチをしていきます。例えば、練習では1対1を決めているのに本番ではプレッシャーを感じて決められないということであれば、練習の段階からプレッシャーがかかるシチュエーションを作る必要があります。また、疲れていると外してしまうということであれば、練習の順番を変えたりして、ある程度疲れてきている状態で1対1の練習に取り組んでみるといいでしょう。

こんな風にして、出来なかったことをやみくもに練習するよりも、「なぜ出来なかったか?」の原因を明確にして、それに対して適切にアプローチをすることでレベルアップのスピードが上がっていきます。ですから、振り返りの際には、出来なかったことの原因を明確にして、どんなアプローチが必要かを考えるようにしましょう。そうすれば、効率よくパフォーマンスアップに繋げられるはずです。

 

子どもが振り返りを行う時、保護者が気をつけたいこと

お子さんが振り返りをする時、保護者の方は、出来た・出来なかったの評価をするのではなく、子どもがあげた出来たこと、出来なかったことに対して「なぜ出来なかったのか?」「出来た時との違いは何か?」を考えられるような質問をしてあげるといいでしょう。子ども自身で「なぜだろう?」と考えられるようにしてあげることで、自己分析能力が上がっていきます。考える力がつけば、サッカーはもちろん色んな場面で応用が利くので、自己解決力をついてくるはずです。

ぜひ、子ども達の考える力を伸ばすことで、成長のスピードを上げるお手伝いをしてあげてくださいね!

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

★株式会社43Lab HPInstagramFacebookTwitter