子どものサッカー上達の鍵を握る「日常の遊び」【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】
サカママ読者の皆さま、こんにちは! 大槻です。
ぽかぽかと春の陽気を感じる日が増えてきましたね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
暖かくなるのは嬉しい反面、幼い頃からの「花粉症持ち」である私にとっては、少しばかり戦々恐々とするシーズンの到来でもあります(笑)。早めの薬と対策でコンディションを整えて、本格的な春を迎え撃ちたいと思います! 皆さまもご自愛くださいね。

さて、私はこれまで、下は幼稚園児から上はユース年代まで、幅広いカテゴリーの子どもたちを指導の現場で見守ってきました。
その中で、熱心な親御さんや指導者の方々から、必ずと言っていいほど聞かれる質問があります。
「どんな練習をすれば、サッカーが上手くなりますか?」
お子さんの輝く姿を見たい。その一心での切実な問いかけですよね。そんなとき、私はいつも決まって、こうお答えしています。
「サッカーは、サッカーだけをしていても上達はしませんよ」
えっ? と驚かれたかもしれません。そこで今回は、少しだけサッカーのグラウンドから離れて、お話を展開していきたいと思います。
お子さんが一気に伸びるための「鍵」。実はそれは、サッカースクールの中だけではなく、皆さんのすぐそばにある「公園」や「日常の遊び」の中に隠されていることもあるのです。
1. 時代と共に変わる「子どもたちの身体」
一昔前、子どもたちは放課後になれば公園に集まり、自分たちだけのコミュニティを作っていました。そこには年上の子もいれば年下の子もいる。異年齢が入り混じって、鬼ごっこをしたり、木登りをしたり、時にはちょっとした喧嘩をしたり。そうした「自由な遊び」の中で、子どもたちは無意識のうちに自分の身体を自在に操る術を学んでいたのです。
しかし、今はどうでしょうか。ゲームの普及、習い事の低年齢化、そして何より外遊びができる場所の減少。子どもたちが集団で泥だらけになって遊ぶ光景は、残念ながら日常から消えつつあります。
この環境の変化は、子どもたちの「運動能力の低下」という形で見過ごせない影響を与えています。昔の子どもたちが遊びの中で自然に獲得していた「身体の根っこ」の部分が、現代の子どもたちには抜け落ちてしまいがちなのです。
指導の現場にいると、ボール扱いは非常に器用だけれど、自分の身体を思うように動かせない、あるいは不測の事態(バランスを崩したときなど)に対応できない子が増えていると感じます。だからこそ、今、あらためて「遊びの中に隠れたトレーニング効果」を見直す必要があるのです。

2. 「ボール扱いが上手い」だけでは物足りない
サッカーというスポーツは、常に状況が変化し、相手がいて、走りながら、ぶつかりながら、瞬時に判断を下して身体を動かす競技です。「頭で考えているイメージを、いかに正確に身体で表現できるか」。この橋渡しをする能力こそが、いわゆる「コーディネーション能力」と呼ばれるものです。
「ボールを止める・蹴る」という技術を乗せるための、土台となる「身体操作」がしっかりしていなければ、いくら技術を積み上げても、高いレベルに行ったときに物足りなさを感じてしまいます。中学・高校で差が出るのは、まさにこの「土台の広さと深さ」なのです。
3. 7つの「コーディネーション能力」を知る
では、具体的に「身体の巧さ」とは何を指すのでしょうか。一般的にコーディネーション能力は、次の7つの要素に分類されます。これらはすべて、サッカーのプレーに直結しています。
リズム能力 見た動きを真似したり、タイミングを合わせる力。相手のフェイントに合わせる、あるいは自分のリズムで相手を抜く。走る歩幅を調節してボールに合わせる際にも不可欠です。
バランス能力 崩れた体勢を素早く立て直す力。空中戦の着地、競り合いで押されたとき、ぬかるんだピッチでの踏ん張り。これが高い選手は、どんな状況でも正確なプレーが維持できます。
変換能力 状況の変化に合わせて、動きを切り替える力。パスを出そうとした瞬間に相手がコースに入ってきたからドリブルに変える。攻守が入れ替わった瞬間に守備に走る。サッカーは「変換」の連続です。
反応能力 合図に対して素早く的確に反応する力。いわゆる「反射神経」です。ルーズボールへの反応や、GKのセービング、相手の動き出しへの一歩目。ここが速いだけで大きなアドバンテージになります。
連結能力 複数の動作をスムーズにつなげる力。「走りながら」「ジャンプして」「胸でトラップして」「ボレーを打つ」。こうした一連のバラバラな動きを滑らかにつなぐ能力です。
定位能力 自分と、動いているモノ(ボール)や人(味方・相手)との距離感を把握する力。「あと数歩でぶつかる」「このスピードなら追いつく」。空間認識能力とも言えます。これが低いと、空振りをしたり、相手と衝突したりしやすくなります。
識別能力 手足や用具を視覚と連携させて使いこなす力。サッカーで言えば「目」からの情報を「足」に伝え、ボールを意図通りに扱う力。自転車の運転などもこれにあたります。

4. 最高のトレーニング場は「アスレチック」と「遊び」にある
これら7つの能力を鍛えるために、毎日サッカースクールに通い詰める必要はありません。むしろ、サッカー以外の動きを経験することの方が、ゴールデンエイジ(9〜12歳頃)までの子どもたちには重要なのです。
アスレチック: 不安定な場所を移動することで「バランス能力」や「定位能力」が極限まで鍛えられます。自分の体重をどこに預けるべきか、身体が自然に学習します。
縄跳び: 「リズム能力」と「連結能力」の宝庫です。二重跳びや交差跳びは、上半身と下半身の連動をスムーズにします。
雲梯・のぼり棒: 自分の身体を腕で支え、移動させる感覚。肩甲骨周りの柔軟性や強さは、実はサッカーのダッシュや競り合いでの「腕の使い方」に大きく影響します。
鬼ごっこ: 遊びの中で、状況判断能力、敏捷性、急加速や減速の技術が養われます。
他競技の経験: 水泳、体操、バスケットボール、テニス。違うスポーツに触れることは、脳に新しい刺激を与え、運動の引き出し(回路)を増やしてくれます。
5. サカママの皆さんに伝えたいこと
「うちの子、足元の技術はそこそこなのに、試合になると活躍できない…」もしそう感じているなら、週末はボールを置いて、親子で大きな公園のアスレチックに出かけてみてください。あるいは、広場で鬼ごっこを全力でやってみてください。
「サッカーのためにサッカーだけをやる」一見近道に見えますが、実はそれは「細い根っこの木」を育てているようなものです。幼少期からジュニア年代に必要なのは、太く、深く、広がる根っこを作ること。その根っこさえあれば、後からどんな高度な技術という「枝葉」を乗せても、木は倒れずに大きく成長します。
外遊びの中にこそ、サッカー上達のヒントは無限に転がっています。「今日は何ができるようになった?」「あの雲梯、最後まで行けたね!」そんな親子の会話の中から、未来のサッカー選手が育っていくのかもしれません。子どもたちの「成長のタイミング」を逃さないように。まずは思い切り、自分の身体を操る楽しさを教えてあげてくださいね。