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知っていますか? 燃え尽き症候群【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

知っていますか? 燃え尽き症候群【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
夏休みも終盤に入ってきましたね。夏休み前半のワクワク感に懐かしさと少しの寂しさを感じます。。。子どもたち、まずは残っている宿題を頑張りましょう!笑

サカママ読者の皆さまも、この夏休みはさまざまな活動をされたことと思います。異常な暑さの中での活動となった日も少なくないと思いますが、十分な対策をしていたとしても、危険を感じる暑さの日もありました。夏の活動については、関係各所でも見直しをしているところが増えていると聞きます。子どもたちの安全を守るためにも、サッカー環境を見直す時期にきていると思います。

さて、今回は『知っていますか? 燃え尽き症候群』と題して、燃え尽き症候群について一緒に考えていきたいと思います。バーンアウト症候群とも呼ばれているこの状態は、スポーツを志す子どもたちにも多く見られるようになってきました。子どもたちに対してどのような働き掛けを心掛ければ良いのか、一緒に考えていきましょう。

《参考過去記事》
振り返ってみよう! 子どもたちの見守り方

燃え尽き症候群とは?

まずは『燃え尽き症候群=バーンアウト症候群』について、整理していきましょう。
精神的な症状の特徴としては、これまで熱心に取り組んできたことであっても急にやる気が出なくなってしまう〝モチベーションの低下〟が挙げられます。何のために〇〇をしているのか? 自分の中でわからなくなってしまったり、集中ができない状態に陥ってしまったりすることがあります。また身体的には、疲労感が強くなったり、不眠などの症状が出てしまうことがあると言われています。

その原因として考えられることは…

子どもの燃え尽き症候群の原因の多くは、身体的にかかる過剰な負荷と精神的なプレッシャーにあると言われています。練習のやり過ぎによる怪我、身体にかかる疲労の蓄積によるストレスや幼い頃からの精神的なストレスの蓄積などが挙げられます。

燃え尽き症候群になってしまったら…

では、もしお子さんが燃え尽き症候群になってしまったら、どのような働き掛けが必要になってくるのでしょうか。『頑張れ!』と言いたくなってしまう状態かもしれませんが、ここは心身の休息が必要なタイミングです。競技から離れて好きなことをしながら、リラックスした時間を過ごせると良いでしょう。心の回復を待って、再び気持ちが前に向いてくるのを待ってあげると良いと思います。

気持ちの整理と目標の再設定

競技レベルが上がってくると、競技を続けていくなかで競争も出てきます。精神的にストレスを感じることも多くなってくるでしょう。しかし、好きで始めたサッカーです。もう一度、サッカーが楽しいものであることを再確認してみましょう。そして、目標の再設定が必要です。あまりにも高い目標ではなく、達成可能な身近な目標を設定して一つずつクリアしていくようにすると良いと思います。

結果よりも大切にしてほしいこと

これまでのサカママコラムでも記事にしてきましたが、子どもたちの成長を期待するのであれば、結果を求めるよりも、まずは取り組む姿勢を育てていくことが大切です。

結果が出なかったらダメ、結果が出れば良い。そういった働き掛けを繰り返せば、手抜きをして一生懸命やらなくても結果が出れば良いということになり、一生懸命に頑張っても結果が出なかったら意味がない…ということになってしまいます。

はたして、それは良いことなのでしょうか? 子どもたちは成功と失敗を繰り返して成長していくものです。できないことがあっても、そこに向かっていく姿勢に対する評価をしてあげること。それが結果を引き出す一番の近道なのではないかと思います。

子どもたちのやる気を引き出す働き掛け

皆さん、こんな質問はしていませんか?

『今日はスタメンで試合に出た?』
『今日、得点決めた?』
『今日、試合勝った?』

親になると、子どもの様子がどうしても気になってしまい、ついつい口に出してしまいそうな質問です。しかし、こんな些細な質問でも、子どもたちにとってはプレッシャーに感じてしまうことがあるかもしれません。このような質問をしたとしても〝結果が出なかったらダメ〟という結論にならないようにしなければなりません。

ここで2つの働き掛けについて考えてみたいと思います。

外発的動機付け

親『今日の試合は得点した?』
子『試合には勝ったんだけど、得点ができなかったよ…』
親『シュートは打ったの? 積極的にシュートを打たないと得点できないぞ!』
子『う~ん。。。』
親『これから練習するぞ!』
子『。。。』
親『試合で得点したら〇〇買ってあげるから頑張れ!』
子『うん。。。』

試合の中では積極的なプレーでゴールに向かっていて、試合では活躍していたのにも関わらず、自宅に帰ると得点できなかったことをお父さんに責められてしまいました。試合での取り組みは関係なかったようです。

そして外発的(自分自身からではなく、外側からのご褒美などからもたらされる)動機付けによって、子どもを練習に向かわせて結果を引き出そうとしています。しかし、本来は〝得点をしたいから練習をする〟という気持ちを引き出してあげたいところです。

内発的動機付け

親『今日の試合は楽しかった?』
子『楽しくなかったんだよ…』
親『何が楽しくなかったの?』
子『今日は頑張ったけど、得点が決められなかったんだ』
親『それは残念だったね。でも試合の中で他に頑張れたことはなかったの?』
子『相手のシュートをタックルで守ったよ!』
親『それは凄かったね! チームのために良いプレーができたね! 得点をしたのと同じくらい大事なプレーだと思うよ!』
子『そうだね、でも次は得点できるように頑張る!』

このように子どものプレーを肯定しながら会話をして、内発的な(自分自身の内面から湧き上がる)動機付けにつなげていけると良いと思います。

大切なことは、試合や練習の中で目標に向かってどのような姿勢で取り組んでいたか? を評価してあげることだと思います。〝試合に出ているから良い〟〝得点をしたから良い〟とならないように、導いてあげることが大切です。そして〝サッカーが楽しい!〟という気持ちを大切に育ててあげてください。

※教育の観点から言えば、外発的動機付け、内発的動機付けの両方を使い分けることで子どもたちのやる気を引き出すことができるとされています。ここでは自分から湧き上がる〝向上心〟を育てていきたいということから、内発的動機付けで引き出してあげることを取り上げています。

子どもの心を育てるために

子どものためにと思っていることが、実は子どもの負担になってしまっているのではないか…そんな視点が我々大人には必要なのかもしれません。

〝やらされてやる〟のではなく、自分が〝やりたいからやる〟という状態にならないと、うまくいかなかったときや困難に直面したときに乗り越えることができなくなってしまいます。とにかく幼少期からサッカーが好き、楽しい! という気持ちをしっかりと育ててあげることが大切です。そのベースがあってはじめて〝もっとうまくなりたい〟〝勝ちたい!〟という気持ちが育っていくのだと思います。

《参考過去記事》
サッカーの土台って何だ?

燃え尽き症候群を防ぐためにも、結果だけにとらわれず、まずは子どもたちが楽しんでサッカーと向き合えるようにサポートしていきたいですね。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル

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