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子どものサッカーを「楽しい」ままにするために~保護者にできること~【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

子どものサッカーを「楽しい」ままにするために~保護者にできること~【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者のみなさま、こんにちは。大槻です。
少しずつ暑さを感じる日が増えてきましたね。子どもたちの暑さ対策だけでなく、観戦する保護者のみなさまも暑さへの準備をしておくと良いかもしれません。食事や睡眠、規則正しい生活はもちろんのこと、水分補給や保冷グッズなどの準備も確認してみてくださいね。

さて、今回は私自身がここ最近、心配しているジュニア年代のサッカー環境について取り上げていきたいと思います。私も長いこと育成年代の指導に関わってきましたが、年々ジュニア年代のサッカー環境が加熱してきているように感じています。保護者のみなさんも、「うちの子、ちゃんと上手くなってるかな?」「このまま続けて将来どうなるの?」なんて、期待と不安で頭を抱えることもあると思います。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみませんか?
子どもたちがサッカーを始めたときのキラキラした笑顔。あの「ボールを蹴るのがとにかく楽しい!」という瞬間。幼い頃は、とにかくサッカーを楽しんでほしいという気持ちでいっぱいだったのに、子どもたちが成長していくにつれて少しずつ少しずつ欲張りに...。いつの間にか、保護者の熱い想いが、子どもたちの「楽しい」を少しずつ圧迫してしまっているかもしれません。今回は、加熱するジュニアサッカーの世界で、保護者がどう子どもたちと関われば、サッカーがずっと「楽しい」ものになるのか、一緒に考えていきたいと思います。

1. 「期待」はほどほどに、子どものペースを信じて

現在のジュニア年代のサッカーは、私の時代よりもレベルが高くなっていると思います。Jリーグが開幕して、さまざまな面での知識やサポート、サッカー界としての経験値、見たり聞いたりするものの情報の量も格段に違います。
競争力も高まってきたところで、早いところは小学2年生でスカウトの目が光っていたり、多くの参加者の中でのセレクションが行われているところもあります。それが良いか悪いかは別として、そのような環境の中に身を置いていれば、子どもたちの競争意識が高まるだけでなく保護者の競争意識や期待と夢も膨らんでいくのは当然です。

でも...ちょっと冷静に。子どもたちのサッカー環境について考えてみましょう。

心の成長に目を向ける

あまりにも早期に競争の中に身を置くと、大好きだったはずのサッカーが急に楽しくなくなってしまったり、自分を表現することを恐れるようになったりすることもあります。

ご存じの通り、子どもたちの成長には個人差があります。それは身体の成長だけではなく、心の成長も同様です。
大人であっても、初めての環境や知らない人の中に身を置いた際に、いきなり自分のことを表現したり、積極的に発言していくことは難しいものですよね。結果や成果ばかりを求められて疲れてしまうようなこともあるでしょう。

スポーツだけでなく他の分野においても、あまりにも幼い頃から結果や成果ばかりを追い求めていくような働き掛けは、子どもたちの好奇心、興味や関心といった物事を追求していくベースになるような部分を失わせている側面もあると思っています。

効果的な働き掛けとは

では、どんな働き掛けが良いのか考えてみましょう。
ここでも何度もお話していますが、やはりサッカーが楽しい! と感じられるようなポジティブな働き掛け、フィードバックは大切です。試合観戦をしていると、どうしてもミスや課題にばかり目がいってしまいがちです。そして試合後、ミスや課題ばかりを取り上げて指摘してしまうことも多いのではないでしょうか。
でも言われている方からすると、たとえその指摘が本当の事であっても聞き入れにくいんですよね。心の成長と共に、徐々に受け入れて行動に移していく力が身に付いてきます。気になることを指摘し続けてしまうと、余計に話を聞かなくなってしまいます。大人であってもなかなか聞き入れたくないものですよね。。。

ですから、まずは試合の中で良いプレーを見つけてあげてください。それもできるだけ具体的に。どう考えて、何を狙っていたのかを聞いてあげるだけで、子どもたちは認めてもらえた安心感を得ることができるでしょう。

そして、その後にミスや課題について話をしてみてください。
「なんでこんなプレーしたんだ!」ではなくて「この時はどうだったの?」という聞き方が良いかもしれませんね。子どもたちも考えていることがありますから、頭ごなしに否定するのではなく、話を聞いてみる姿勢は必要かもしれません。強制ではなく共感することで、子どもたちの自主性や思考力を育てることができると思います。
保護者の役割は「結果」を求めることじゃなくて、「どんなときも味方だよ」って背中を押すサポーターなんですから。

2. 不安を子どもに押し付けない~「比べる」より「楽しむ」

ジュニアサッカーの環境は、保護者の不安を煽る要素がいっぱいです。
SNSで他の子の活躍を見て、「うちの子、遅れてる?」とか、チームメイトがトレセンに選ばれて「なんでうちの子は…」とか。比べてしまう気持ち、わかります。

私も、子どもの試合を観て、「あの子のドリブル、うちの子より上手いな…」なんて思ったこと何度もあります。※子どもには言いませんが。。。

しかし、比べられることは実は子どもにとって一番辛いことなんです。
保護者の「〇〇くんみたいになってほしい!」という不安が、「〇〇くんみたいにもっと頑張んなさい!」とか「なんで〇〇くんみたいにできないの?」という言葉になって、子どもに伝わってしまいます。すると、子どもは「自分はダメなんだ...」とサッカーに自信が持てなくなってしまって、楽しくなくなってしまいます。

では、不安はどうすれば良いのか?
まずは、保護者自身が「サッカーの楽しみ方」を思い出してみてください。
我が子が初めてボールを追いかけて、笑顔で仲間と笑い合っている姿にうれしい気持ちになりませんでしたか?

プレーが悪くても、試合に負けても、子どもが「次はこうしよう!」って話しているなら、それだけで十分成長している証拠だと思います。比べるのではなく、子どもの「今」を楽しむ。それが、子どもに「サッカーが楽しい!」という気持ちを維持させてあげる方法なのだと思います。

「今日の試合、楽しかった?」「あのパス良かったね!」など、ポジティブな話題を振ってみる。子どもが「楽しかった!」と話してくれるだけで、保護者の不安も少しは和らぐと思いますよ。

3. サッカーは「子どものもの」~見守る勇気を持つ

ジュニア年代のサッカーの現場でよく見るのが、保護者が「サッカーコーチ」になってしまうこと。試合中に「パスしろ!」「走れ!」など大声で指示を出したり、帰りの車では「今日の試合、こうすればよかったよね」なんて戦術論を語ってしまったり、時にはチームの批判をしてしまうこともあるかもしれません。でも、それは子どもたちにとってストレスになってしまったり、逆効果になってしまうことが多いのです。

コーチの役割はコーチに任せて、保護者は「サポート」に徹するのが一番です。
保護者が細かく指示を出してしまうと、チームのコーチとダブルスタンダードになってしまい、子どもたちはどうすれば良いのかわからなくなってしまいます。

過去にグラウンド上から怯えたように保護者の顔色を窺いながらプレーする子を見掛けたことがあります。保護者の方からの指摘が恐いのかもしれません。やらされているサッカーは短期的には結果が出ることがありますが、長期的に見るとバーンアウトになってしまったり、自分の思い通りにならなかったときにどうすれば良いのか? わからなくなってしまうことがあります。

ジュニア年代はまだ保護者の言うことを従順に聞いてくれますが、思春期が訪れるジュニアユース年代になると、保護者の言うことを聞かなくなるようなこともあります。ですから、自分で考えて行動できるように、ジュニア年代からの働き掛けが重要になってきます。

ですから、保護者のみなさまにできることはシンプルに、「見守る」こと。
試合中は、子どもがどんなプレーをしていても楽しくプレーできるように見守ってあげてください。そして困難に直面するようなことがあったら、どのように立ち向かえば良いのか? 教えてあげてください。子どもは、保護者の「見守ってくれてる」という安心感があれば、のびのびプレーできるものです。

4. 「サッカー以外」の時間も大切に

ジュニア年代に限らず、サッカーのスケジュールは本当にハードですよね。
週末は朝から試合に遠征、平日も練習やスクール...保護者も「サッカーに全力!」って気持ちになりがちです。毎日、サッカー通ってます! みたいな子も多くなってきましたが、活動量はコントロールしてあげないと、身体や心にかかる負担が大きくなってしまいます。
ぜひ、怪我やバーンアウトのリスクも考えて、子どもたちに無理のないスケジュールを組んであげてください。これは各クラブでも考えなければならないことだと思います。

そして、子どもたちにとってはサッカーだけが人生ではありません。
友達とゲームしたり、家族で旅行したり、映画を見たり、そういう「サッカー以外」の時間が、実はサッカーの「楽しい」を支えているんです。

サッカーは人生を豊かなものにしてくれます。しかし、それは充実した生活があってこそなんです。親子で一緒に練習することも大切ですが、たまにはサッカーから離れて「釣り」や「カラオケ」にでも行ってみて、お父さん、お母さんの違った一面を見せてあげてください笑そして、子どもの「サッカー以外の顔」も見てあげてください。
学校の話や友達とのバカ話。そういったちょっとした日常が子どもの心をリフレッシュさせて、サッカーをより「楽しい」ものにしてくれるのだと思います。

5. 保護者自身が「楽しむ」姿勢を

最後にもう一つ。保護者がサッカーを楽しんでください。
子どもたちは、親の感情に敏感なものです。保護者が「サッカー、めんどくさいな…」とか「負けてイライラ」なんて雰囲気だと、子どもたちもサッカーを楽しめなくなってしまいます。逆に、保護者が試合観戦を楽しみ、子どもが成長していく姿を楽しんでいると、子どもたちもポジティブな気持ちになっていくものです。

我が子が試合で活躍したり、大会で優勝したり、何かに選ばれたり...誇らしい気持ちになるかもしれません。しかし、そうではないからといってダメではないんです。子どもたちがサッカーに夢中になって、楽しんで、頑張っていること自体が本当に素晴らしいことなんです。
ですから、保護者のみなさまもぜひ子どもたちのサッカーを楽しんであげてください。

6. おわりに~子どもの「楽しい」を守るために~

ジュニア年代に限らず、育成年代のサッカーは年々加熱してきています。しかし、その熱量が子どもたちの「サッカーが大好き!」という気持ちを奪ってしまったら本末転倒ですよね。保護者の期待や不安は、子どもを応援したいという愛情の裏返しです。その愛情を、子どもがのびのびサッカーを楽しめる形に変えていくのが、私たち保護者の役目なのだと思います。

子どもたちが、10年後、20年後に、「サッカーやっててよかった!」って笑顔で言えるように。あれこれ言うのではなく、子どもたちに「楽しかった?」と聞いてみませんか?
その繰り返しが、きっとサッカーの未来を輝かせてくれるのだと思います。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル

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