サッカー中の避難体験から学ぶ、災害への心構え
みなさんこんにちは! スポーツ看護師の金子会里です。この夏は過去にない暑さが各地で更新され、試合時間を午前中や夕方の涼しい時間帯へずらしたり、安全対策を一生懸命に考えてくださるスポーツ関係者の方々には本当に頭が下がる思いです。この夏は全国に津波警報が発令されたりするなど、試合中に想定外の事態が起きることもありました。私自身もスポーツと安全についてあらためて考えさせられることが多かったので、今回はこの夏に体験した、東日本大震災の被災地である宮城県の石巻と女川町で行われた大会での学びをお伝えしたいと思います。
全国から小学生が集まる大会での津波警報発令
この夏、宮城県で開催された女川町を舞台とする大会に参加するため、長男は4日間の日程で7月末からチームで遠征を行っていました。初日は予定通りに石巻のグラウンドで予選が行われており、ちょうどアップをしていた頃です。突然の津波警報が発令されました。
私は2日目から現地入りする予定だったので初日は神奈川で仕事をしていましたが、長男のチームがいた石巻のグラウンドは海からも近く、川がすぐ横にあるという場所でしたので、「みんな大丈夫かな」と仕事そっちのけで不安が頭によぎりました。
後に聞いたところ、「ウーウー」とサイレンが鳴りはじめ、津波警報が発令されたとのアナウンスが町の全体に流れたそうです。「怖かった」とのことでしたが、笛の合図で試合を中断した審判の指示のもと、すぐに荷物をもって全チームが高台へ避難したとのことでした。審判は現地の方で、震災を経験した方であり、避難行動に慣れていたとのことです。本当にありがたいと感じました。
暑さもあり、その後に涼しい避難所へ移動できたことを知ったときはとても安心したことを覚えています。現地から情報を提供してくれる方々がいたことも安心につながりました。このようなとき、「情報」というのはとても大事だとあらためて感じることができました。
そして、昼に届くはずだったお弁当は届かず、かわりにコンビニで調達した食料を避難所でみんなで分け合ったそうです。アルファ米の非常食を食べて過ごしたチームもあったそうで、夜までには何とか全チームが宿に戻れたようでした。
大会2日目に現地入り、無事に試合も再開
私は子どもたちを追うようにして大会2日目には宮城県へ無事に入ることができました。ところ所に「津波浸水区間」「津波到達地点」の看板が目につき、初日に行っていた石巻の試合会場は津波の到達地点となっていたことを知ったときは、みんな無事で本当によかったと思いました。災害はいつどこで起きるかわからないですし、いのちを守る行動を身をもって体験した全国の子どもたちは、この大会から学ぶものも大きかったのではないかと思います。長男は「みんながいたから心強かった!」と後に言っていたのが印象的でした。
子どもたちは震災遺構を見学し震災学習プログラムを体験
リアルな避難体験をした子どもたちは、その後に女川町で震災学習の一環として、震災で犠牲になった遺族の方の話しを聞いたり、津波によって倒れてしまった震災遺構の見学などを行いました。涙を流しながら聞いている子もいたそうです。サッカーをするときも、いま自分のいる場所はどんな地域なのか? 危険な箇所はどこなのか? 過去の出来事をもとに正しい判断を行い、自分の身は自分で守る行動をとることはとても大切なことだとたくさんの子どもたちが学んだことと思います。
東日本大震災で多くの小学生が犠牲になった大川小学校へも立ち寄りました。当時を想うと胸が痛みましたが、大切なことを後世に伝えてくれているように感じました。当時、震災前は避難所として指定されていた場所だそうで、だれもが津波がここまで来るとは思っていなかったそうです。異変に気が付き自らの判断で裏山へ避難した数名のみが助かったそうです。時に思い込みや集団心理は、誤った判断となることがありますが、残されたこの遺構から考えさせられることは多くありました。子どもたちが過ごす場での安全安心は、一人ひとりがもっと「想像力」を働かせながら考えていかなければならないことだと感じました。
災害時の対応で大切な「自助・共助・公助」とは
・自助とは、一人ひとりが自ら取り組むこと。自分の力で自分の身を守ること
・共助とは、地域や身近にいる人どうしが助け合い一緒に取り組むこと
・公助とは、国や地方の公共団体などが取り組むこと
このうち災害時で大切な割合は自助が70%、共助が20%、公助が10%と言われています。
日頃どう備えるのか、住んでいる地域のハザードマップを確認したり避難経路を確認したり、水や食料を備蓄したり、仲間と連携したり、サッカーを通して学んだ今回の経験は、災害の多い日本でどう考え、どう行動するかをあらためて考える機会となりました。
この宮城で経験した学びを全国の子どもたちがホームタウンに持ち帰り、「災害」についての心構えを考えるきっかけになればいいなと心から思います。