増量はただ食べれば良いだけではない! 「鶏肉と野菜の串焼き」で美味しく体重を増やそう
小さなイタリア料理店を東京・渋谷にて営むサカママとして、「食トレ×イタリア料理」をテーマに日々実践していることを発信していきます。
すでに初夏の陽気の日が増え、暑さと紫外線対策が求められる5月。4月のバタバタが落ち着いて少しホッとするこの時期は、親も少し気が抜けて体調を崩しやすい時期でもありますね。私自身も原因のわからない胃腸の調子の悪さに悩まされ、トマトソースにパルミジャーノ・レッジャーノをふりかけたパスタに救われたばかりです。
ところで、我が家の子どもたちは体格が面白いほどに異なり、同じように育ててきても、小6の長男は痩せ型で小柄、筋肉が付きにくく、なかなか体重も増えません。一方、小1の次男は体格がガッチリしていて筋肉質、背も高く、体重も比較的重いほうです。
今回は「増量」をテーマに、食トレとして何ができるか考えてみたいと思います。
ジュニアアスリートの増量は絶対的なエネルギー量の確保を最優先にすべし
「アスリートのための食トレ」の著者:海老久美子さんは、使ったエネルギーよりも多くのエネルギーを摂れば体重は増加に振れるので、増量のシステム自体はシンプルと言います。
体重を構成しているのは大きく分けて体脂肪量と徐脂肪量。ジュニアアスリートの場合は、内臓や骨も成長している最中なので筋肉量以外の徐脂肪量も変動します。身体が成長過程にあるとともに、日常的に強度の高い運動をしているので、絶対的なエネルギー量が足りなくなりがちです。
だから、一生懸命に食べても成長や運動に必要なエネルギー量に追いつかないので、体脂肪も増えない代わりに、徐脂肪量も増えず、体重も増えにくい。と記されていて、長男の状況と重なり納得します。
しかも、成長期は内臓も成長している最中なので、必要なエネルギー量を摂ろうとしてたくさん食べても、内臓の消化吸収能力が処理しきれないという問題もあるそうです。
基礎代謝量は高校生の年代がピークになるため、成長期のアスリートはもともと基礎代謝も高まってくる年代にあります。生きるために必要なエネルギー量がただでさえ多くなるので、なかなか増量のための必要な摂取エネルギー量を摂りきれない悩ましさがあります。
糖質とタンパク質の掛け合わせで栄養素の高密度化を
そんな難しい条件の中にいるジュニアアスリートを増量させるだけのエネルギー源をどう確保したら良いか、私も日々考えています。
まず、糖質をしっかり摂ることがポイントです。身体の材料となるタンパク質を多くすることを優先しがちですが、糖質量が少ないとタンパク質を燃やしてエネルギー源にしてしまいます。
だからと言って糖質だけ摂れば良いわけでもなく、摂った糖質を効率よくエネルギー源にするビタミンB1の必要量も糖質量が増えるに従って増えますし、脂質も体脂肪が増えるからと嫌いすぎては、エネルギー量としてとても重要な役割なので欠かせません。やはりどれかを極端に取り込んだり減らしたりするのではなく、バランスが重要ということになりそうです。
我が家の兄弟は魚や肉よりも野菜が好きで、驚くほど日常的に野菜を食べるので、逆に肉や魚をたくさん食べてもらうにはどうしたら良いかシェフである夫ともよく食事について話をします。
これまでのコラムでも、試合やハードな練習で酷使した身体をリカバリするために、できる限り速やかにタンパク質を摂り、ミネラルやビタミンで身体をメンテナンスすべしとお伝えしてきましたが、そこに加えて増量を意識できる、それでいて手軽なメニューは何か。
たどり着いた答えは、見た目にも負担にならず、疲れたときでも手で気軽に食べることができる「鶏肉と野菜の串焼き」です。
今回は「鶏肉」にスポットを当てていきます。
アウトドアでも自宅でも。子どもと一緒に楽しめる「鶏肉と夏野菜の串焼き“スピエディーノ”」
やはり、アスリートにとって高タンパク質・低脂肪の食べ物を活用しない手はありません。肉では鶏ささみ、豚もも肉脂身なし、牛ヒレ肉が高タンパク質・低脂肪のトップ3。魚はマグロの赤身、秋カツオ、べにざけがトップ3。
今回の串焼きには美味しい皮付きの鶏もも肉、できれば国産のものを使用して作っていただきたいです。鶏もも肉皮付きは高タンパク質・低脂肪のトップ5に入ります。
野菜のおすすめは、ピーマンなどのパプリカ、ジャガイモやサツマイモの芋類、ナスやズッキーニなどです。
ジャガイモやサツマイモは糖質が高く、芋からしか得られない栄養素もたくさんあるので、遅く帰ってきてご飯などの炭水化物をたくさん摂りこみにくい時間帯にも最適です。
ピーマンやパプリカのジューシーさが、疲れた体にビタミンと食感の楽しさを補い、これから夏にかけて美味しいナスやズッキーニが紫外線で疲れた肌を補修し、水分補給をしてくれるでしょう。
串焼き料理をイタリアでは「スピエディーノ」と呼び、イタリアでは鶏もも肉より豚レバーや羊、車海老などが串焼き料理としては主流です。これからの季節、外でバーベキューなどされる方にもぜひいろいろな組み合わせバリエーションを試して、楽しみながら美味しく親子でジュニアアスリートの増量にチャレンジいただけたらと思います。
私たちのレストランでも時々メニューで登場しますので、国立競技場でのサッカー観戦の前後などにぜひ召し上がりにいらしてくださいね。
美味しく食べる権利は誰よりもジュニアアスリートが持っている
「増量」と一言に言うと「とにかく食え!」となりがちです。しかし、味わいや楽しみ、会話のない食事は意味がないと私は思っています。もちろん、ただひたすら流し込むようなドカ食いにも私は疑問を抱きます。
私たちのレストランでも、せっかく家族で食事をしにきているのに、子どもにスマホを見せ続けていたり、夫婦やカップルで食事をしていても互いにスマホばかりを見ていたり、そんな光景はよく目にして物悲しくなります。
厳しい環境で人一倍頑張っているジュニアアスリートこそ、本来「美味しく楽しく食べる権利」を誰よりも持っているはずなのです。
だからこそ、本人の好きなものを取り込みつつ、新たな食材も組み合わせて、私たち親が日々食卓に工夫を凝らしていくことが求められるのではないでしょうか。
そんな難しいことと頭を抱える必要はなく、スープやお味噌汁ならできる限り具沢山にしてみる、サンドイッチに卵や野菜やチーズを目一杯に挟んでみるなど、できる限り多くの品目を一度に楽しみながら食べてもらうためにできること、私たちも楽しんで追求していきたいですね。