SPECIAL INTERVIEW サッカー日本女子代表 長谷川 唯 「オリンピックの延期がよかったと思えるように」
日テレ・東京ヴェルディベレーザ、サッカー日本女子代表の中心として活躍する長谷川唯選手。新型コロナウイルスの影響により、なでしこリーグの開幕は延期となり、2020年東京オリンピックも翌年へ。そんな中、今、抱いている想い、夢やその先の目標についてお聞きしました。
文/編集部 写真提供/東京ヴェルディ
セレクションはメニーナ1本 ひたすらキックの練習をした日々
―まずは、サッカーを始めたきっかけを教えてください。
「お兄ちゃんがサッカーをやっていたので、ついて行ったり、公園でボールを一緒に蹴ったりと、自然とやっていたという感じです。最初は地元の少年団に入って、小3からは女子チームにも所属しました。ただ、男子と一緒の少年団のほうがレベルも高くて楽しかったですね」
―日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織である日テレ・東京ヴェルディメニーナ(以下、メニーナ)を目指すようになったのはいつ頃ですか?
「小学5年生の頃からです。セレクションにむけて、毎晩公園でひたすら練習をしてました。身体が小さかったので、何か武器が必要だと思い、とくにキックの練習をしていたのを覚えています。当時は、いくら練習してもケガをしなかったので、今よりも練習量は多かったかもしれないですね。セレクションはメニーナ1本に絞って、目標が明確だったからこそ、懸命に努力できたんだと思います」
―当時、ご両親はどんなサポートをしてくれていました?
「両親は何も言わず、好きなようにさせてくれてました。駄目ってことは言わず、いいプレーを褒めてくれるので、それが嬉しくて。伸び伸びとやりたいことをさせてもらえたことが、成長できた理由だと思いますね」
どんな時も落ち込まず上手くいかないことを楽しめる
―サッカー日本女子代表として、今の想いは?
「初めてなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)に入った時、もう少し早く入りたかったっていう気持ちが大きかった分、若いから頑張ってついていこうというよりは、先頭に立ち中心になってやろう、大きな舞台でどれだけのことができるかを試したいと思ってました。その気持ちや目指すところは、今でも変わってないですね」
― 今、試合ができない中、どういったことを目標に取り組まれていますか?
「私自身、フィジカルの部分、とくに海外選手と比べると劣っていると感じるので、最低限のパワーをつけないといけないと思っています。日本の選手は、一瞬のスピードや距離が長くなると厳しいって言われてますけど、それでも、できるだけ自分のスピードを上げたいと思ってウェイトトレーニングなども取り入れたりしてますね。得意としている判断・技術のところは今まで通り変わらず成長していければいいかなと。すべてのレベルを一段階上げたいと思っています」
―今回の状況のように逆境に立たされた時、どんなふうに乗り越えてきました?
「上手くいかないことがあっても、落ち込むことはなくて、どうしたら上手くいくかを考えながらやるのがすごく好きなタイプなんです。しっかり考えて行動すれば必ず解決策がみつかるから、楽しめるというか。小さい頃からそうですし、とくにプレーは“できなくても楽しい”という感覚がありますね」
「世界との差を縮める時間が増えた」とオリンピックの延期もポジティブに
―2020年東京オリンピックも延期になりました。今の心境は?
「オリンピックが延期になったことをよかったと思えるようにしなければいけないと感じています。女子サッカーの場合、日本は今、絶対的な王者ではないので、世界の先頭に立っている国(現アメリカ)との差を縮めるのには時間が必要だと思うんです。オリンピックが延期になったことで、その時間が増えたと考えればすごくポジティブですし、その差を絶対に縮めなければいけないと思っています。小さい頃からワールドカップやオリンピックを夢見ていたので、結果を残したいという気持ちもありますし、個人としてどれだけプレーできるかも楽しみではありますね」
―夢の、その先の目標は?
「自分の中で常に“サッカーを楽しむこと”という想いがあって、だからこそ、負けたことも次にどう活かすかを考えながら楽しく前進している感じなんです。サッカー日本女子代表にいるということは、責任を持って結果を出しにいかなければいけないし、女子サッカー界のためにも大事だと思っています。ただ個人としては、最後までサッカーを楽しんで、やりたいだけ続けて、やりきって終わりたいなと思ってますね」
― 最後に、女子選手、サカママにメッセージを。
「私たちが小中学生の頃は、女子サッカー選手が少なくて続けていくのが大変な選手も多かったと思うんです。でも今は、女子サッカー選手や女子チームも増え、たくさんの方が支えてくれて、環境もだいぶ整ってきていますし、私たちもプロを目指せる状況を作っていきたいと思うので、上を目指して楽しくサッカーを続けてほしいと思います。親御さんには、私が言う立場ではないんですけど、子どもはやらされていると何事も上手くいかないと思うんです。やりたいことを自由に伸び伸びとさせてあげたら、本当に好きなことは頑張ると思うので、楽しくサッカーをさせてあげてほしいと思います」
Q1.プロ選手を目指したのはいつ頃?
A.小学生の時、男子のワールドカップをテレビで観て
当時、女子選手の環境を知らず、男子と同じだと思っていたので、ワールドカップをテレビで観て、プロサッカー選手になりたいと思うようになりました。
Q2.子どもの頃の性格は?
A.今もずっと負けず嫌いです(笑)
兄弟の中でも負けず嫌いで、何事もできるまでやってましたね(笑)。課題があったらクリアするまで、夜帰らずに練習していたことも。
Q3.サッカーを通して育まれたことは?
A.誰とでも仲よくなれるように
正直、とても人見知りなのですが、サッカーを通して関わると、すぐ友達になれるというのが小さい頃からありました。中高生時代には、上下関係があったからこそ、上の人を敬う気持ちの大切さを知れたと思っています。そういう気持ちは社会に出てからも大事ですから。