【思春期×睡眠】思春期の気難しさと睡眠の関係
みなさんこんにちは! 【スポーツ×睡眠】をコンセプトにアスリートの睡眠サポートを行っている、スリープトレーナーのヒラノマリです。「#スリトレ」はスリープトレーニングの略で、プロ選手も実践している私の睡眠メソッドの略になります。今回もサッカージュニアとママのための#スリトレをお伝えします。
夏休み期間で、ついお子さんにガミガミ怒ってしまう、衝突してしまうとお悩みのサカママも多いのではないでしょうか? とくにお子さんが思春期の場合はより気を遣いますよね。そこで今回は、思春期の気難しさの原因を、睡眠の視点からお話ししたいと思います。
子どもの睡眠と大人の睡眠の違い
睡眠はノンレム睡眠(脳も体も眠っている状態)とレム睡眠(脳は起きていて体は眠っている状態)を交互に繰り返していますが、その割合は脳の成長と密接に関係しています。
人間の脳は、生まれたときには未発達ですが、その後さまざまな刺激を受けて発達し、12歳くらいまでに大人の脳へと成長します。神経細胞が外部からの刺激を受けて、互いにコネクトしながら、複雑な回路を形成していきます。もっと簡単にいえば、脳内を走る神経のハイウェイを大量に建設しながら脳が成長しているのです。
そして、この脳内のハイウェイの建設をしてくれるのが、レム睡眠になります。とくに新生児は、この脳内のハイウェイを大量に建設しなくてはいけないため、レム睡眠が全体の約半分を占めています。小児期ではレム睡眠が20%程度に減少するかわりにノンレム睡眠が増え、大人とあまり変わらなくなってきます。これは、小児期の後半で脳内に建設しすぎたハイウェイを整理する役割をノンレム睡眠が担っているためです。
このように、成長過程に応じて睡眠の内容も変化するのですが、思春期になるとさらに睡眠が複雑に変化することがわかっています。
思春期の気難しさの原因は、脳が半分大人で半分子どもだから
脳の成長と睡眠の関係に興味を持った、カリフォルニア大学デービス校のアーウィン・ファインバーグ氏は、子どもの睡眠中の脳波の記録を10年以上集め、32万時間の睡眠データを分析しました。
その結果、脳内に建設しすぎたハイウェイを整理するために、小児期の中期から後半は深いノンレム睡眠の強度が急激に高くなりましたが、思春期の後半になってくるとこの脳内のハイウェイの整理がほぼ完了し、深いノンレム睡眠の強度が落ちて元に戻るということがわかりました。
思春期の間の深いノンレム睡眠は、脳の最後の総仕上げを行っており、この総仕上げの時間で認知スキル、合理的思考、客観的思考が成長をはじめて、それにつれてノンレム睡眠の割合も変化していました。この思春期に起こる深いノンレム睡眠の強度の変化が、思春期の気難しさにつながっているというのです。
さらに、深いノンレム睡眠と脳の関係性を調べるために、深いノンレム睡眠の強度が変化するタイミングを頭部につないだ電極ごとに測定したところ、脳の中でも成長の速度に違いがあることがわかりました。視覚と空間認識を司る後頭部から成長がはじまり、合理的な思考や客観的な意思決定を司る前頭葉が最後に成熟するのです。
この発見によって「お子さんに何回言ってもわかってくれない…」という事態が起きるのも、お子さんが悪いわけではなく、客観的に物事を判断する、前頭葉の成熟が最後のため大人と同じように理解できなかったからだと言うことができます。つまり、思春期の脳は「後頭部は大人、前頭葉は子どものまま」ということが証明されたのです。
大人がなかなか理解できない思春期の気難しさや「なかなか言うことを聞いてくれない」ということは、深いノンレム睡眠の変化と、脳の中の成長速度の違いが原因だったのです。
いかがでしたでしょうか? 思春期の気難しさの原因が、脳の成長や睡眠が影響しているということを頭に入れておくことで、少しでも気が楽になれば幸いです。