【睡眠×熱中症対策】首よりも効果大!? 手のひらを冷やして熱中症を防ぐ方法とは?
みなさんこんにちは!【スポーツ×睡眠】をコンセプトにアスリートの睡眠サポートを行っている、スリープトレーナーのヒラノマリです。
「#スリトレ」はスリープトレーニングの略で、プロ選手も実践している私の睡眠メソッドの略になります。今回もサッカージュニアとママのための#スリトレをお伝えします。
夏休みにも入り、炎天下での練習や試合をする機会が増えていると思います。そこで気になってくるのが、熱中症対策と身体の火照り。実は熱中症は、塩分補給だけでなく睡眠のメカニズムとも関係深い深部体温からのアプローチが大切になってきます。そこで今回は、私がサポートさせていただいているプロ選手にも実践していただいている深部体温からの熱中症対策をご紹介します。
深部体温が熱中症にも睡眠にも関係している?!
みなさんは「深部体温」という言葉を聞いたことはありますか?私たち人間の体温には、皮膚表面の温度と深部体温の2種類があります。深部体温とは、手足などの皮膚の温度ではなく、脳や内臓など身体の内部の温度のことで、皮膚の温度よりプラス1度高いと言われています。実は、この深部体温は熱中症と深い関係があるのです。
普段私たちは、体温が上昇しても、かいた汗が蒸発することで表面の温度を下げて、熱を放出することで深部体温をコントロールしています。しかし、湿気が多い環境下などでは汗の蒸発が不十分な状態になって、体内の熱がうまく放出されず、深部体温が下がらない状態になってしまうこともあります。
そのため、深部体温(脳や内臓の温度)の上昇によって、熱中症の症状を引き起こしてしまうのです。とくに深部体温が40度まで上がると全身けいれん、42度で多臓器不全になる可能性が高まると言われていて、深部体温の上昇は命の危険を及ぼすほど怖いものなのです。
そしてこの深部体温は、睡眠にも深い関係があります。人間は深部体温が下がることで入眠するメカニズムになっていますが、炎天下の中で過ごした日は夜になってもこの深部体温がなかなか下がらず、睡眠の質が下がるだけではなく、夜間や翌日に熱中症を引き起こす可能性が高くなります。熱中症対策にも、質の良い睡眠をとるためにも、この深部体温をスムーズに下げてあげることがポイントとなるのです。
首よりも手のひらを冷却して熱中症対策!
では、夏場でもしっかり深部体温を下げるためには、どうすればいいのでしょうか?そのポイントは手のひらとほっぺ、足の裏を冷やすことです。
手のひら・ほっぺ・足の裏の3か所には、AVA血管(動静脈吻合/どうじょうみゃくふんごう:Arteriovenous Anastomosesの略)という、栄養や酸素は運んでいない、体温調整が専門の特殊な血管があります。AVA血管は太さが毛細血管の10倍もあり、快適な温度よりも暑い場合は血管を開き、寒い場合は血管を閉じることで、私たちの体温をコントロールしています。このAVA血管のある場所の「手のひら・ほっぺ・足の裏」を冷やすことで、効率よく深部体温を下げることができます。専用の冷却グッズも販売されていますが、薄手のハンカチで巻いた保冷剤で手のひらや足の裏を冷やすと、炎天下で運動をしている時も熱が逃げやすくなり、熱中症の予防に繋がります。
AVA血管と深部体温の関係は、スタンフォード大学の研究などでも明らかになっており、とくに運動中は首や鼠径部、脇の下を冷却するよりもAVA血管がある手のひら・ほっぺ・足の裏を冷やす事で深部体温が上昇しにくく、熱中症対策の効果が高いということがわかっています。私もサポートさせていただいているメジャーリーガーやサッカー選手にも必ず手のひらを試合の合間や、練習前に冷やしてもらっています。就寝時にもこのAVA血管を冷やして深部体温を下げることで、質の良い睡眠をとりやすくなります。
試合観戦中でも手のひらなどを冷やして体温調整
また、AVA血管は非常に繊細で冷やしすぎてしまうと血管が閉じてしまい逆効果になってしまうので、12~15℃で冷やすのが大切です。キンキンに冷えた保冷剤などではなく「ハンカチを1枚巻く」「凍らせたペットボトルではなく、少し溶けたペットボトルを握る」「冷たい水を張ってそこに手のひらを浸ける」など工夫をしてみてくださいね。
私も炎天下で選手の試合を観戦する際は、コンビニでキャップ付きの飲むアイスを買い、それを手に持って手のひらを冷やしつつ、アイスを飲んでアイススラリーの代用品として深部体温を冷やすようにしています。
お昼寝も効果なし?!睡眠不足時は深部体温が下がりにくくなる
睡眠と熱中症の関係については、「睡眠不足になると深部体温のコントロール機能が低下し、深部体温が下がりにくくなる」(2014年独立行政法人労働安全衛生総合研究所)と発表されています。この研究は、健康な方を対象に7〜8時間眠った翌日と、4時間しか眠らなかった翌日に暑い環境下(室温35℃、湿度40%)でウォーキングをしてもらい、深部体温の変化を見るというものでした。【出典:体力科学 一般社団法人日本体力医学会/2014年63巻1号「睡眠不足による暑熱負担の増悪と予防対策」】
すると、午前中のウォーキングでは差が見られなかったものの、午後のウォーキングでは4時間睡眠の方が休憩時間中の体温の戻りが悪く、その後、さらに深部体温が上昇してしまうという結果になっています。つまり、睡眠不足の時は暑さによって上昇してしまった深部体温が下がりにくくなってしまうため、熱中症にかかるリスクが上がってしまうというわけです。
その睡眠不足をお昼寝でカバーできるかどうかの研究もあるのですが、残念ながら眠気やパフォーマンスの改善は見られたものの、お昼寝は睡眠不足による深部体温の上昇を抑える効果は認められませんでした。お昼寝では、熱中症の予防にはならないため、夜にまとまった睡眠をとることが重要ということになります。
いかがでしたでしょうか?
首や足の付け根を冷やすというのは聞いたことがあっても、手のひらやほっぺというのは意外だったのではないでしょうか。ぜひお子さんと一緒に試してみてくださいね。それでは、次回もお楽しみに!
【参考資料】
・「睡眠不足になると深部体温のコントロール機能が低下し、深部体温が下がりにくくなる」(2014年独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
・体力科学 一般社団法人日本体力医学会/2014年63巻1号「睡眠不足による暑熱負担の増悪と予防対策」