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セレクションに向けたクラブの考え方【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは! 大槻です。

今回のテーマは、昨年も一度取り扱いましたが、進路の考え方とセレクションについてです。
憧れるクラブ、強豪とされるクラブへの入団を目指している子ども達も多いかと思いますが、クラブの名前だけで選択しても、本当にその子に合っているかどうかは分かりません。そこで進路選択の上で考えておきたいポイントを整理していきたいと思います。
これからセレクションが本格化していくシーズンに入っていきます。ぜひ本番を迎える前に考えてみてくださいね。

自宅、学校、クラブの『進路選択の三角形』

 

進路選択の三角形』とは、自宅、学校、クラブのそれぞれの距離のことを指しています。
中学生になると行動範囲が広がり、小学生の頃よりも忙しくなります。忙しい中でもサッカーと勉強を両立すること、そして、休息時間もしっかりと確保することが成長の鍵を握っています。中学年代は心身共に大きく成長する重要な時期ですから、次のステップに向けてどのように過ごすかがとても大切なのです。

そのためにも、『進路選択の三角形』は重要視すべきポイントです。三角形の頂点からそれぞれの移動に時間がかかってしまうと、身体に疲労が蓄積されてしまうことはもちろんですが、勉強時間や休憩時間の確保も難しくなってくるでしょう。

理想通りの三角形が難しい!どの程度なら許容できる?

やはり、自宅、学校、クラブ、全てが近くにあり、三角形が小さくなることが理想かと思いますが、そのような環境を見つけるのはなかなか難しいのが現実ですよね。

自宅と学校は近いが、クラブが遠い。
自宅とクラブは近いが、学校が遠い。
自宅からは学校もクラブも近いが、学校からクラブが遠い。

などなど…。いろいろなパターンが考えられます。

きれいな三角形になることはなくても、自宅と学校の距離が近かかったり、学校とクラブの距離が近いなど、三角形の一辺が短くなるようであれば、ある程度負担は軽減されるかと思います。また、遠い場合でも、移動距離が1時間以内であれば問題ないかと感じています。一度、三角形を図に書き出してみて、整理してみるといいですね。

 

『鯛の尾より鰯の頭』という視点

鯛の尾より鰯の頭』という言葉を聞いたことはありますか?
<華やかで大きな集団の末端にいるよりも、例え小さな集団でもその先頭に立つほうが良い>という意味の言葉です。様々な考え方があるかと思いますが、個人的には非常に好きな言葉です。

サッカーのクラブを選ぶときも、実績のある有名なクラブに入りたい!と思う選手は多いと思います。憧れのクラブや目標とするクラブがあることは、やる気とモチベーションに繋がりますからとても大切なことです。
ですが、強豪クラブに入ったはいいが、自分を表現できずに力が発揮できないまま過ごしている…という選手も少なくないと思います。(もちろん、強豪クラブ内での競争の中で自信を付けていく選手もいます。)

逆に、強豪とはいえないクラブであっても、その中でトップに立ち、周囲からの期待や信頼を得ることで、選手としても人間的にも成長していく選手がいます。特に育成年代の子ども達にとっては、自己肯定感を育むことが大切です。このような環境でプレーすることが、物事に意欲的に取り組む力や、ミスを恐れずにチャレンジする姿勢にも繋がっていくと思います。

競争の激しい強豪クラブがいいか、出場機会が得られるクラブがいいか、これに関しては様々な考え方があると思いますが、どちらを選ぶにしても、自分を表現することに恐れず取り組めるようになってほしいと思うのです。

セレクションで見られるのはプレーの『結果』だけではない

 

さて、セレクションを受けるクラブが決まったら、いざ本番です。

セレクションですから、参加者みんなが「合格したい」と思っていると思います。そして、セレクションだからと力を入れすぎてしまう...そんな子ども達も多いのではないでしょうか。

そんな時、得意なプレーで自分を大きく見せようとすることもあると思います。ですが、状況に合わないプレーは逆に評価を下げてしまうことも。自分の思い描いた最高のプレーでも、試合の状況に合っていないとミスに繋がる可能性も高いですし、何よりチームにとって不利益になってしまいます。

評価されるのは、自分の得意なプレーだけではないと言うことを忘れてはいけません。ミスした後のプレー、チームがピンチの時のプレー、仲間のミスをカバーする姿勢や言葉掛けなど、指導者はプレーの『結果』だけではなく、『姿勢』や『態度』を見ているものです。なぜなら、そういった『姿勢』や『態度』こそが今後の成長に繋がっていくからです。

評価する人の目を気にしてプレーをするよりも、目の前の試合、相手に対して全力で向かっていく姿勢こそが大切なのです。

中学年代を長い目で捉えて、クラブを選ぼう

夏から秋にかけて、少しずつ各クラブのセレクションの情報が発表されてくるかと思います。全国大会の結果や、有名だからという理由だけでクラブの選択をするのではなく、長い目で中学生年代を捉えてください。強い、弱いとか、勝ち負けだけではない、クラブの価値を探してみるのも良いと思います。

ちなみに…オリンピック代表に選出された相馬勇紀選手(三菱養和調布JY・三菱養和SCユース出身)は、小中高と自宅、学校、クラブの距離が抜群でした。彼の成長の要因の一つは、心と身体のバランスを育んだこの三角形にもあるような気がします。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル